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執行役員は、会議でネガティブな情報をあげた方が良い

 引き続き執行役員の役割についてです。今回は、一歩踏み込んで、僕が普段考えている執行役員としての行動と、取締役との関係性についてまとめてみます。

決められた山に、決められた時間にいる

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 取締役は、「登る山を決める」のが仕事です。それに対して、執行役員は、取締役が決めた山に「決められた時間にたどりつくこと」が仕事です。執行役員は、取締役が決めた内容に、全力でコミットメントする。
 逆にいうと、決められた山に決められた時間にいればいいのだから、登るルート、チーム編成、休憩の取り方、ビバークポイントなど、、、道中で必要なもろもろの意思決定は執行役員の役割です。

 ただ実際のところ、ベンチャーの規模だと、道中の意思決定も取締役に判断を仰ぎながら行うことになります。メンバーが少ない分、執行役員の影響力が大きく、経営に大きな影響力があるためです。
 僕は今の会社でしか執行役員を経験していないので推測ですが、温泉道場の執行役員の影響力は大きい気がします。権限は、人事・採用権、10M規模の投資、営業情報の変更などなので、10M単位の利益は左右できてしまいます。

 会社経営に影響力を持っているからこそ、取締役への情報共有と、意思決定の相談は大事です。「道中の意思決定は自分に責任がある」と自覚したうえで、重要なことは相談をする。そんな風にしています。


ネガティブな情報をあげる

 取締役への情報共有で大事なのは、ネガティブな情報です。

 取締役はバカではありません!!(って怒られそう(笑))。執行役員以上に会社経営を理解している経営のプロです。そして、会社経営に法的責任を持っている立場です。なので、ポジティブな情報は、報告が上がろうが上がるまいが把握できると思うんですよね。数字に反映されますし、ポジティブな情報というのはみんなが話したがるので、自然と耳に入ります

 これはキャリアアップして役員になると、特に勘違いしやすいポイントです。
 というのも、社会人人生のなかで経験する会議である、営業会議や事業部会議は、ポジティブな報告をすると褒められる文化です。僕も営業をやっていた時期は、ポジティブな成果をどうやってあげたかを報告し、会議の時間を使い切ることばかり考えていました(笑)

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 みなさんもこれまで、他社さんからの営業を受けたことってありますよね。その時、こちらが知っている一般常識や業界知識を時間をかけて説明されて、ストレスが溜まった経験ってありませんか? 僕、めっちゃあります(笑)「いやいや、そんなこと知ってるから、本題は何?」って思っちゃいます(笑)

 執行役員が役員会議の場で、長時間ポジティブな報告をするのって、それに似てます。

 「それは見りゃわかる。ところで、向こう3ヶ月の準備や、心配事の相談や、チーム内の問題は起きてないの?」と取締役に言わせてしまうと負けです(笑)。そうならないように、これでもかとネガティブな報告を自分からする。僕はそうしています。

 じゃあ会議が常にネガティブなオーラになるのかというと、そうはなりません。執行役員クラスが今取り組んでいる業務が高い成果を出している状態というのは、近い将来に問題が起きやすい状態です。なので、経営目線で考えると、今がポジティブだと少し先のネガティブな話をしないといけないし、今がネガティブなら今のネガティブな話をしないといけない、だから話題は常にネガティブになるからです。
 例えば、売上が予算より大幅に超過すればチームが疲弊しますし、採用が予想以上に順調であれば受け入れ態勢整備が急務になります。何かがポジティブに進んでいるときは、必ずどこかにしわ寄せが出ます。仮に今が順調なら、先に訪れるしわ寄せを議論する時間を会議でとった方が良い。よって、どのみちネガティブな情報があがったほうが良いという事になります。

 会議は、みんなでネガティブな現在の事象・未来の事象を乗り越える為に行なっているものだと思っています。そもそもポジティブなことしか報告されない会社が、長続きするイメージがわきません。「我が社は順調だなー!わははは!!」って役員がそろって言ってる会社で働きたいですか?(笑)僕はこの会社の役員大丈夫かって思っちゃいます(笑)


取締役と執行役員が、一緒に考えるのはいい会社?

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 「仲が良い会社」はいい会社です。ただ「取締役と執行役員の仲がいい会社」はいい会社と呼べるのかは難しいって最近思います。

 というのも、数年先の経営を見据えて考えている取締役の視野や考え方と、目の前の成果に取り組んでいる執行役員の視野や考え方は異なっていて当たり前だと思うからです。
 「取締役と執行役員が同じ視野に立ち、常に話し合っている」。それは綺麗に聞こえるかもしれませんが、そういう状態はひょっとすると、山頂から見守るはずの取締役が登山チームに一緒に入り、一見わいわい楽しく登山をしているが気づいたらみんなで仲良く遭難していた、なんてことになりかねない。もしくは、現場を統括するべき執行役員が取締役と一緒に山頂から眺めていたら登山チームが全滅したなんてことにも・・・。
 だから、「取締役の言うことを即座に理解できないのが執行役員」「執行役員の言うことを即座に理解できないのが取締役」というのが正常な状態。こう考えるようにしています。こう考えると、会議でもストレスが溜まりませんよね(笑)

 執行役員の立場から見ると「もっと共感してほしい」「もっと現場を見てほしい」というのは、僕も痛いほどわかります。会議中に「じゃあこっちの立場をやってみてよ!」と言いたくなった回数は数え切れません(笑)
 ただこう考えてみてください。

 「取締役と執行役員が、互いの立場をわかって尊重し合う」そんな会社が成長するのでしょうか?

 僕は成長しないと思いますし、僕自身がそうなってしまったら、少なくとも部下に指導をしたり指摘をする権利もない。そう思います。自分は取締役となぁなぁな関係性を築いておいて、部下には厳しい指導をするのは筋違い。
 だから、道中で起きているネガティブな情報をどんどんあげる、それはひょっとすると取締役の過去の意思決定の結果起きていることかもしれません。批判心を前面に出して攻撃的に報告する必要はないと思いますが、今起きていることを報告することは大事です。ちょっとギスギスしちゃうかなーと思ってネガティブな報告をあげない方が、結果的に会社全体への迷惑になってしまいます。


執行役員としての行動まとめ

 まとめます。

●執行役員のミッションは、取締役に決められた時間に、決められた場所にいること。
●その場所に到達するまでの意思決定は全て任されているので、自分で決めて良い。ただし会社規模に応じて、経営に重要な影響がある事項は随時相談した方が良い。
●役員会議ではネガティブな情報をあげる。ポジティブな報告で時間を使っていると、会社の成長が鈍化する。
●取締役と執行役員は意見が食い違って当たり前。それを前提に捉えて一緒に議論することが会社の成長に繋がる。

 こうやってまとめてみると、取締役にネガティブな情報をあげ続けるという、初めての人からすると「ちょっとそれ本当にやっていいの?」って感じるまとめなのですが(笑)もし迷う人がいれば、このnoteを見せながら議論してもらえばいいと思います。
 取締役と執行役員というのは、上司部下の関係ではなく、役割が違います。僕は執行役員は、部隊長や傭兵長のイメージで、成果を出せなければ入れ替わることもあるし、今の会社の規模や成長フェーズにマッチしなくなったら他社で力を発揮できる人材だと思っています。取締役が経営のプロであれば、執行役員は執行のプロであるべきです。迷った場合は取締役と互いの守備範囲を確認する。その癖付けができるようになればいいですね。

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