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20代でやりながら学んだ、ベンチャー執行役員の役割

2015年7月、入社2年目、29歳、僕は会社初の執行役員になりました。
それから3年半、今は32才です。同じ執行役員という役職でも、続けるうちに視点・考え方、自分の習慣も成長したように思います。

 <当初29歳>事業数3、正社員13名、パートスタッフ100名
 <現在32歳>事業数8+間接部門、正社員70名、パートスタッフ350名

改めて振り返ってみると、当初から現在に到るまで、"何も整っていなかった創業期"から、"走りながらルールを作る成長期"で、色々なことをやってきたように思います。こういう成長フェイズの中で、執行役員目線で気づいたことをまとめてみました。

執行役員は取締役と違って役員ではない

 執行役員というのは、会社法上の役員ではないが、一般従業員から見ると役員扱いを受ける、曖昧な立ち位置です。僕も最初になった時には戸惑いました。もしあなたが執行役員になりたいと思っているなら、この戸惑いを早く乗り越えるために、まず「取締役」と「執行役員」の違いを抑えておいた方が良いです。
 そもそも、普通に社会人生活をしていると、執行役員になるかならないかという立ち位置になるまで、「社長」とか「取締役」とか「役員」とかの言葉の意味や役割について真面目に考える機会もありません。このあたりを理解するには、会社法について勉強しないといけません。下記書籍がわかりやすくてまとまっててオススメです。


取締役と執行役員の役割を簡単にまとめると下記になります。

<取締役>
 経営に法的責任を負う経営者。役員として取締役会で任命される。労働基準法や就業規則の適応範囲外。年俸制、役員報酬。
 会社の方針を考えたり、意思決定をする頭脳。
<執行役員>
 経営に法的責任を負わない従業員。正社員として会社に雇用される。労働基準法や就業規則の適応範囲内。月給制、給与報酬。
 取締役が決定したことを実行する手足。

 「執行役員=エラい人、役員」という印象をもちがちなのですが、従業員の延長線にいる人です。経営方針を議論する場にいることはありますが、決定責任は負っていません。
 一方、周囲からは役員と見なされ期待されたり重圧がかかるポジションなので、下からの突き上げには「僕決定者じゃないんだけどなー」と思ったり、取締役からくる指示には「また無茶振りだー」と思うことがたくさんあります(というかそんな毎日です)。

「なぜ高くて険しい道を登らなくてはいけないのか」を理解する

 上記のように、執行役員は意思決定の役割をもっていません。こう聞くと「自分なりに考えて動けばいいのか」と思いますが、真逆です。意思決定の役割を持っていないというのは「取締役の決定した方針に基づいて動く」ということであり、勝手に自分の意見を介在させてはいけません。


 よく経営を登山に例えることがあります。「うちの会社は、あの山に登ろう」と。「あの山に登る」ことを決めるのは取締役の役割です。
 この時、執行役員は決して「あの山に登りたくない」とか「こっちの山に登りたい」などと口を挟んではいけません。執行役員がやるべきことは「なぜその山に登りたいのか」「いつまでに登りたいのか」と、取締役の考えを深掘りし、理解しようと務めることです。もし深く理解をした結果、自分は登りたくない、と思うのであれば、執行役員を辞めれば良いだけです。
 執行役員には、取締役の決定事項に口を挟む権利はありませんが、執行役員から降りる権利を持っています。全く賛同できない山に登るのは、互いに不幸です。

 ですが僕の経験上、取締役が決めた目標に「うぉ…」と瞬間的に感じてしまっても、取締役とのコミュニケーションを増やせば解消できます。取締役に時間をとってもらい、深掘りをさせてもらう。そうやってよくよく話を聞くと、理由が分かって「なるほど」と思ったりします。
 執行役員はメンバーを率いて山に登るのが仕事なので、みんなで休憩をとるタイミングを考えたり、役割分担を決めたり、隊列を組んだりするのが仕事で、地上からの視野です。一方取締役は、山々全体を見渡して、天気の流れを読み、隊列全員が遭難しないように指示を出す、山頂からの視野です。
 山に登っている最中、目の前に高く険しい道と、低く舗装された道の2つがあれば、誰だって後者を選びたい。ですが、こういう時、謀ったように取締役は「高くて険しい道を進め」と指示を出してくるわけです(笑) 

状況が変わったら、進むか戻るかを相談すれば良い


 ここで「山頂にいるから地上のことがわからないんだ!」と思うのはグッとこらえて、じっくり話を聞く。すると実は、山頂からの視野だと、低く舗装された道の先には、断崖絶壁があったり、熊がいたり、最終的に目指すべき場所に辿り着けない、ことが分かっている。もしくは、もう少し先にもっと険しい場所があるので、今のうちに体を慣らしておかないと危ない、そんな理由があったりします。 

 僕も執行役員になったころは、自分の方が地上のことはよく分かっているんだ、と思い上がっていたこともあれば、もっとわかりやすく伝えるべきだろう、と取締役の指示内容を批難したこともありました。ですが一つ一つの意思決定を深掘りをしてみると、きちんとそちらの道を選ぶ理由があります。時に、道を選んで進み出したら急に天気が変わってしまい、ひょっとしたらもう1つの道の方がよかったかもしれない、ということも起きます。日々そんな感じです。最初に道を選んだ時とは状況が変わってしまう時は、過去の意思決定を批難するのではなく、このまま進むか戻るかを相談すれば良いのです。そもそもベンチャーは、地図がない山を登っているようなもの。確実な道を求める方が間違っていると思います。

 次回も執行役員の役割の続きを書いていきたいと思います。
 ベンチャーでの代表目線の記事は多くあると思うのですが、執行役員目線の記事ってあまりないように思います。同じような立場にチャレンジする人のお役に立てれば幸いです。

サポートいただけると嬉しいです! これからも地方創生・温泉・サウナ・人事などをコツコツ書いていきますので、書籍の購入費用に充てさせていただきます。