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《童話集》ちいさなキミのおはなし

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キミに届いてくれるかな
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なにかのたまご

 ぼくの名前はハル、シュンくんの猫。ぼくは知ってる、シュンくんはサッカーがすっごく上手なんだ。ぼくの特等席はお家で一番日当たりのいいこの窓で、ぼくはいつもここでシュンくんのサッカーを見ているよ。  お家の庭はシュンくんの練習場。シュンくんよりも大きい、ママよりもパパよりも大きい、空まで届きそうな大きな木が2本、塀のそばにあって、その大きな木と木のあいだがシュンくんのゴール。シュンくんは大きな木と木のあいだを狙って、思いっきりシュートをするよ。  だけどシュンくんは少しだけ

魔法使いラソラ・ムワサの秘密の手紙

 親愛なるキミへ  やぁ、この手紙を拾ってくれたキミよ、はじめまして。キミの今いるこの公園はとても素敵なところだね。とくにこのベンチがすごく気にいった。だからボクはこのベンチに手紙を置く事にしたんだ。  ボクはキミの住む街から、遠く遠く離れた…とある街に住む高校生ラソラ・ムワサ。ボクの住む街には綺麗な海がある。港から始まる一本道は坂道になっていて、緩やかに孤を描きながらその一本道は丘の上へと続く。丘の上では、透き通るような空の青とそこにふわりと浮かぶ雲の白、綺麗で穏やかな

わたしのすきなばしょ

「いってきまーす!」さぁ歩こう、今日はキミにわたしの好きな場所を教えてあげるね。  はじめはね、ここだよ。たくさんのお友達が集まってきて、たくさんの「おはよう」を聞ける場所。お友達も先生も、いつもみんな「おはよう」を言ってくれるよ、だからもわたしも大きな声で「おはよう」を言いうんだ。今日は日曜日だからお友達にも先生にも会えないけどね、明日にはまたみんなに会えるよ。  ここでいつもたくさんお勉強しているよ。わたしは国語のお勉強が好き、もっと言葉のお勉強してもっともっと言葉を覚

太陽みたいな

パパはね、太陽みたいな子を知っている。 君は、そんな子を知っているかい?  太陽みたいな子はよく笑う。太陽みたいな子がよく笑うから、みんなはつられて笑顔になる。笑顔の子って、とても素敵だなってパパは思うんだ。みんなを笑顔にする子って、とてもとても素敵だなってパパは思うんだ。  さぁ質問、君はよく笑う子かい?  太陽みたいな子は元気いっぱい。太陽みたいな子はかけっこも絵を描くことも、それにお歌だって。元気いっぱいに頑張る子。全速力で走る姿、夢中になって絵を描く姿、大きな声で

トンネル山を登って

トンネル山を登って、僕は振り返る。パパとママが手を振ってくれた。 トンネル山は園庭の隅っこにあるけれど、頂上からは園庭の全部を一辺に見ることができちゃう。僕はトンネル山が大好きだ。パパもママも、お友達も、お友達のパパとママも、先生だって。みんな笑っているのが見えた。さっきまであんなに泣いていたのに、ほら今はこんなにみんな、笑っている。僕もたくさん泣いちゃったけれど、でも今は僕も、笑っているよ。 「降りておいで」ってママが言う。卒園式のための、このピカピカの靴は汚れちゃうかも

ほのか

実る穂のその美しさ そんなふうに生きてほしい 君がそばで笑ってくれれば 僕はそれだけで 幸せなんだ 眠る君のその頬に そっと1つ くちづけた 君の未来を想ってみた 僕は自然と 笑顔になってた 実る穂のその美しさ そんなふうに生きてほしい 君がそばで笑ってくれれば 僕は何だって 何だって出来るんだ 今は小さな君のこの手 ほら これから大きくなって 年老いた僕の手も 今と変わらず 優しく握ってくれるかい 澄みわたる青空の日 願い祈り 授かりし命 君は希望 君は夢 君は真実

エンピツ、走らせ

エンピツ、走らせ テガミを書こう 元気でいますかと キミに送るよ 元気でいるよと ボクは送るよ エンピツ、走らせ エンピツ、走らせ 気持ちを込めて エンピツ、走らせ エンピツ、走らせ オハナシ書こう 勇気が生まれる そんなオハナシ キミが笑顔になる そんなオハナシ エンピツ、走らせ エンピツ、走らせ 気持ちを込めて エンピツ、走らせ エンピツ、走らせ 自由に書こう キミの書きたいことは何かな ボクの書きたいことは何かな エンピツ、走らせ エンピ