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好きなことで食べていくために必要なプランB

◉Twitterで、とても興味深い漫画が流れてきたので、ご紹介&自分なりの雑感を。大学や専門学校で教えていた立場として、共感できるというか。こういう質問ができる子は、実際はそれほど心配では人ですよね。若さゆえ知識はないですが、未来に色んな障害があることに気づいていて、それを解決しようと自分から動いているのですから。問題は、自分から動こうとしない人。

ヘッダーはMANZEMIのフォトギャラリーより、平田弘史先生揮毫のタイトルロゴです。

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■実態を知る第一歩は■

自分は漫画家志望だけでなく、アニメーターやイラストレーター志望の学生も、たくさん教えてきました。そこで漫画家ではなく、イラストレーターを目指しているという学生に志望理由を聞くと。「漫画家は難しそうだから……」と答える人が多いですね。そこで「イラストレーターは簡単だと思っているの?」と聞くと、「いや、あの、そういうわけではないですが……」と口ごもります。ほとんどが。

イラストレーターの総数は分かりませんが、イラストレーター協会の登録数からの推測で、たぶん数百人から多くても2000人弱ぐらいでしょうか? そしてそういう学生の多くは、プロのイラストレーターの年収は100万円以下の割合が53%、20〜30代が80%とか、そういう経済状況はほとんど知りません。これが漫画家だと、70代や80代でも連載を抱えている人がいる世界ですし。収入的にも恵まれていますね。

総数や収入から見ても、イラストレーターは漫画家よりも厳しい世界に思えます。でも学生はよく分かっていないのに、漠然としたイメージで漫画家やイラストレーターという職業を、捉えてるに過ぎないのです。ここら辺に興味がある人は、こちらのnoteも参照してください。絵で食べていきたいのならば、まだしもアニメーターの方が、需要がある世界です。喧伝されるブラック体質も、20代以下の話ですから。

■消去法は運任せで危険■

さらに学生に、イラストレーターとしてどういう仕事をしたいかと聞くと、ゲームソフトなどのパッケージの仕事や、ライトノベルなどの表紙のイラストを書きたいと言います。では、どういう筋道でプロのイラストレーターになるつもりかと聞くと、「pixivにイラストをあげて、出版社やゲーム会社から声がかかるのを待つ」という学生が多いですね。

そこで「pixivにイラストをあげている、プロではない人で、あなたより上手い人はどれぐらいいますか?」と聞くと、きょとんとした顔で「数えたことないです」と言います。こちらの質問の意図が分からず、ムッとする学生もいます。しかし現実を知るためには、数えてみた方がいいでしょうね。 その数が500人を超えるぐらいの辺りで、もう一度真剣に人生を考えるきっかけになるかもしれません。宝くじに当たる並みの強運を、自身に期待しているのなら必要ないですが。

いずれにしても、消去法で仕事を選ぶタイプの人間は、その職業に対して本気でなりたいかどうか疑わしい場合が多いですね。この件をTwitterで軽く触れたら、他の業界でもそういうタイプが多いようで、リプライや引用ツイートが多数。特に新興のゲーム業界だと、「自分は絵も描けないし話も作れないが、素晴らしいアイデアを持っているので企画担当者になれる」と誤解する人間が多いとか。いや、あの…そのアイデアが素晴らしいと、主観以外の根拠があるんですかね?

■職業の本質を見極める■

背景講座の受講生の中から何人か、イラストレーターとして仕事をもらえている人間は出ています。でもそういう人はやはり、最初からキラリと光るものがありました。斉藤むねお先生などは自分がいまいち才能を測りかねた受講生でも、この子は伸びていくよと最初から見抜いておられましたしね。漫画家が本業ですが、そのようなイラストの仕事がくる受講生もそこそこいます。

そもそも漫画家とイラストレーターという仕事は、技術的にはかなり重なるのですが、その実態はかなり違います。タクシードライバーがサービス業であり、F1ドライバーがスポーツ選手であるように。同じ車を運転するといっても、その内実はずいぶん違います。そのような漫画家とイラストレーターの仕事の本質の違いが分かっていない人間が、イラストレーターという仕事を深く理解できているかといえば……。

・小説家→文字を使って、物語を紡ぐ人
・漫画家→文字と絵を使って、物語を紡ぐ人
・アニメ監督→動画とセリフと音で、物語を紡ぐ人
・映画監督→役者とセリフと音で、物語を紡ぐ人

この分類で行けば画家やイラストレーターは、彫塑家や音楽家や詩人やダンサーに近い、表現者と自分は思っています。

■プランBを用意する■

職業を選ぶにあたって、運の要素はものすごく大きいです。鍋島雅治先生は70%が運だと指摘されておられましたが、自分は90%ではないかと思っています。マイケルサンデル教授も、経済的な成功者はほぼ運によると、明言されていらっしゃいました。だからといって、努力をしなくてもいいわけではなく。努力するにあたって、運を期待したプランニングも、排除しておくべきでしょうね。宝くじは当たったらラッキーぐらいに思うのが吉。

呉智英夫子が、著書で紹介されていた事例ですが。ある母親が子供の進路について、ある識者に相談してきたそうです。子供が絵の世界で食べていきたいと言ってる、夢は応援してやりたいが、厳しい世界だということは分かる。自分は絵画の世界には疎いので、どうしたらいいかわからない、と。相談された方は、絵画の修復の勉強をしてみては……と勧めたそうです。

子供に才能があれば、絵画の修復技術は本人の作品の表現に、役に立つはずだ。もし才能がなくても、修復家として食べていけるかもしれないと。これは素晴らしいアドバイスだと思います。修復家といっても、自分の作品を描いていけないわけでもありませんからね。無意味に背水の陣を敷くよりも、プラン B を用意しながら人生を長いスパンで考えるのも、有効な戦略に思えます。

■デザイナーの需要はある■

全国に医師免許を持つ人は、約33万人もいるそうです。 しかし漫画家はCLIP STUDIOのセルシス社の推計で、3000人から6000人とされますから、医者の50分の1から100分の1ぐらいしかいません。 親類縁者に医者がいる人は、そんなに多くはないでしょう。漫画家はさらに少なく。イラストレーターや画家は、もっともっと少ないでしょうから、そもそも職業の具体的なイメージを、親の世代は持っていないでしょうね。

でも、経済産業省の『IT人材需給に関する調査(2019)によると、Webデザイナーを含むIT人材の需給ギャップは2030年には少なくとも16.4万人、最大で約79万人に拡大する可能性があると試算されています。デザイン系を並用して勉強しておくと良いからと、大学や専門学校でデザインの基礎理論を含めて、AdobeのPhotoshop・Illustrator・InDesignの、DTP用プロアプリ三種の神器の操作を、教えていた理由です。

これらのアプリに習熟しておくと、Webデザイナーの仕事にも応用が利きます。さらにWebデザインを学ぶと、HTML5やCSSにも詳しくなります。そうすると、電子書籍の制作もできるようになります。電子書籍ファイルの公式フォーマット規格であるEPUB3は、XHTMLのサブセット的なファイル・フォーマット規格なのです。 なので、AdobeのIllustratorやInDesignでのデザインは、Webデザインとも意外に地続きの部分があります。

これだけのヒントがあれば、目端の利く人ならばあとは自分で試行錯誤して、自分なりのプランBを用意できるでしょう。できればプランCも用意しているとベストかもしれません。

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