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仮想現実の境目とVtuber

正直、Vtuberというものが、こんなに一般的になるとは思っていなかった。「キャラクターが設定されて、その設定で声優が代わりにしゃべる」ものだと知ったとき、自分が思ったことを列記するとこうなる。

「顔出ししてないゲーム実況者と何が違うんだ」
「キャラクターの絵次第だろ」
「結局声優がしゃべるわけだから声優ラジオと変わらん」
「人気が出るとは思えない」


こういった予想が大ハズレして、現在はみなさんもご存じの通り大人気。そもそもコンビニとかでコラボ商品が出てくるレベルなのだから相当である。もちろん「なんだこのキャラクターは、なんかのアニメか」と思いながら見ている人もいると思うが、そんな層を置いていくほどにファンがいるということだろう。

現在、6月初頭に発売された「ストリートファイター6」が結構な人気を博しているようで、イベントとして「プロゲーマーとVtuberがチームを組んで戦う」というものが予定されている。自分としては格ゲー好きなのでプロゲーマーのほうは知っていたが、Vtuberのほうを知らない状態。ただその動画を少し見て、思った以上にVtuberの人気があることを知った。

配信の中で「おはよう!のツイートだけで2万くらいいいねがつく」みたいな話があり、そのVtuber(葛葉という名前)のアカウントを見に行ってみるとフォロワーが130万人を超えていた。確かにこれだけいればそういうこともあるだろう。
しかもそれだけ有名なVtuberの名前の読み方をプロゲーマーが知らなかったということもネタになっていた。こちらのプロゲーマーは日本で初めてのプロ格闘ゲーマーであり、数々の伝説を持っているウメハラ氏のことであるが、年齢は40台ということもあり、Vtuber業界には詳しくなかったようだ。
しかし、Twitterを見て「人気Vtuberが格闘ゲームをするというだけでこんなに盛り上がるものか」と驚いた。
正直「格闘ゲーム」は覚えることが多いため敷居が高く、一部だけで盛り上がっている印象だったが、思いのほかVtuberとの相性がいいようだ。もともとゲーム配信もやっていて上達が早いというのもあるが。

それにしても、ファンの多さや熱さを見ていると「マジでキャラクターと恋愛しているような感覚の人もいるのでは?」と感じて、思い出したものがある。
それが「コンビニ人間」で芥川賞を受賞した村田沙耶香の「消滅世界」という小説である。
夫婦間での性交渉は近親相姦のように捉えられ、結婚相手のほかに恋人がいるのが普通の世界。しかも、恋愛相手はアニメやゲームなどのキャラクターであることも珍しくないという、いわばディストピア小説ではあるのだが、Vtuberのファンになり、そのキャラクターグッズなどを買い、スパチャを送るのが普通になっているとこれは「キャラクターとの恋愛」に近いのではないだろうか。
もちろん「ちゃんと現実と区別をつけたうえで楽しんでいる」という人が大半なのだろうけど。アイドルに入れ込むのもまあ疑似恋愛を楽しむようなものだろうが、「実在しない」という違いがある。アイドルとファンが交際とか結婚という可能性は微小ながらあったとしても、Vtuberと結婚できる可能性はない。

これまでも、アニメや漫画のキャラクターにもガチのファンというのはいたと思うが、それらと違うのが「コミュニケーションが取れる」という部分だ。配信でみんなに向けて話をして、こちらの質問にも返してくれるので、あくまでその世界の中にしかいないアニメキャラとは一線を画す。そりゃあ金も費やそうというものだ。
ただ、結局は声を担当している「中の人」がいるわけで、そこを同一化して見てしまうのか、中の人は声は同じでもキャラクターとは違うと思われるのか。そのあたりの感覚が気になる。
周囲にVtuberのガチファンでもいれば聞いてみるところなのだが。
しかしキャラクター設定をしてあっても配信したりゲーム実況したりしていると素が出てしまうことはないのだろうか?

自分がVtuberをやるとしたらそのあたりがネックになるだろう……やる予定はないが。

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