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識別問題に入る前に①

識別問題に入る前に、以下、その前提として「接続」を覚えたいという話をしたい。

手始めに2014・1センター試験第3問の文法問題を解いてみよう。

■A~Dの正しい組み合わせを選べ。
A:限りめり
B:驚か給うて
C:のたまひは
D:言ひ知ら奉り給ふ 
選択肢
①A断定・B受身・C完了・D使役
②A形動語尾・B受身・C完了・D尊敬
③A断定・B自発・C完了・D使役
④A形動語尾・B自発・C動詞語尾・D尊敬
⑤A断定助動・B受身・C動詞語尾・D使役
  
A:問われているもの 
「なめり」は「なるめり」が撥音便化し「なんめり」と発音されたが「ん」が表記されない形。問はその「なる」が断定の助動詞形容動詞の活用語尾かを聞いている。
→知っているべきこと
形容動詞は状態を表すことばであり、「いと」をつけて意味が成立する。(断定の助動詞は体言・連体形に接続。「いと」をつけても意味が成立しない→例:いと犬なり)。
 
B:問われているもの  
「れ」が受身の助動詞自発の助動詞かが問われている。「る・らる」の意味の識別問題である。
→知っているべきこと
「る・らる」の自発・可能・受身・尊敬の4つの意味とその判別。ここは文脈判断だろう。
 
C:問われているもの 
「て」が完了の助動詞動詞の活用語尾かが問われている。
→知っているべきこと
一語なのか語の一部なのかを見定めること。「のたまひはつ」の「つ」を一語としてみると「は」が浮いてしまう。「果つ・のたまひ果つ」のまとまりを考える。
 
D:問われているもの
 「せ」が使役の助動詞尊敬の助動詞かが問われている。「す・さす」の意味の識別問題である。
知っているべきこと
「す・さす」の使役・尊敬の意味の判別方法。敬語の重ねられ方は「謙譲・尊敬・丁寧」の順であり、「奉り給ふ」の「せ」が尊敬であれば「尊敬・謙譲・尊敬」となってしまう。

★→ 正解は④である。


このセンター試験の問題から次のような、 識別問題を考える手順や必要な知識が分かるのではないかと思う。

A:一語なのか、語の一部菜なのかを考える
B:識別のための知識を必要とする
1:接続の知識
2:接続以外の知識(例:形容動詞は「いと」をつけて成立)
C:助動詞の意味の判別


例えばもうひとつ、例えば「らむ」の識別を考えてみよう。 
ア:夜半にや君がひとり越ゆらむ
イ:夕べには朝あらむことを思ひ
ウ:なにせむにか命も惜しからむ
エ:あはれ知れらむ人に見せばや

このときイ・ウについては、Aの一語ではない」という判断をまず行い、その上で、B2の接続を考える。すると、は終止形に接続しているので「らむ」、は四段の已然形に接続しているので「り」+「む」と考えていくことになる(詳しくは「らむ」の識別参照)。さらに、Cの助動詞の意味の判別の「らむ」が現在推量・原因推量・伝聞婉曲のいずれであるかを考えるという順番になるだろう。

中でも、B2の接続の考え方を押さえることが識別問題では大切であり、具体的な識別に入る前段階としてこれを押さえたい。


■ そもそも、接続とは?・・・活用する語は自分の好き勝手に変化しているわけではなく、下に付く語の要求に従って自分を変化させている。その語の下の語でその語の活用形が分かり、その語の上の活用形でその語が何か定めることができる。これが接続の考え方である。
例えば、「夏は来ぬ。」を「来」を何と読むか?と聞いた時、高校の最初では「こ」と読んでしまい「夏は来ない」と解釈してしまう人は意外に多い。これは「ぬ」を「ず」だと考えるためである。この「ぬ」は終止しているので「ず」の連体形ではなく完了の「ぬ」の終止形であり、接続は連用形。したがって「来」の連用形、「き(ぬ)」で読み「夏は来た」という意味になる。


■ 少し演習してみよう

 
問①:基本編

次の傍線部の活用形を前後の語によって判断できるか。例えば、ア「肥ゆる」を活用させて「え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ」だから連体形という判断ではなく、続く語が「秋」という体言だから連体形のように考える。
ア 天高く、馬肥ゆる秋。      
イ 天高く、馬肥ゆる秋。      
ウ 海暮れて鴨の声ほのかに白し   
エ 海暮れて鴨の声ほのかに白し   
オ 急がば回れ           
カ 急がば回れ           
キ 河のほとりに群れゐて思ひやれば 
ク 河のほとりに群れゐて思ひやれば 
ケ 言へども言ふかひなくなむある。 
コ 言へども言ふかひなくなむある。 
サ われこそ行け。         
シ 藻しほたれつつわぶとこたへよ
 
問②:助動詞編

では、これが分かるか?次の活用形を下の助動詞によって判断。 
シ:かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにけり 
ス:秋ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かぬる 
セ:難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき 
ソ:みかの原わきて流るるいづみ川いつきとてか恋ひしかるらむ

 問③助詞編

次の傍線部の活用形をるの助詞によって判断。
タ:夕暮れのいとかすみたるにまぎれて
チ:涙落つとも覚えに、  
ツ:いつしか梅咲かなむ   
テ:いかでばや



解答・・問①
ア:連体形:体言に続く
イ:連用形:、で中止する(連用中止法)
ウ:連用形:「て」に続く
エ:終止形:文が終止→終止形・命令形
オ:命令形:エに同じ
カ:未然形:「ば」に続く→未然形・已然形
キ:已然形:カに同じ
ク:連用形:用言が続く
ケ:已然形:「ども」が続く
コ:連体形:係り結び
サ:已然形:係り結び
シ:終止形:引用の「と」が続く

解答・・問②
る=已然形:「る」の基本形は「り」→接続はサ変未然・四段已然・に=連用形:「ぬ」→連用形接続
来=連用形:「ぬ」の接続は連用形・見え=未然形:「ね」の基本形は「ず」→未然形接続・れ=連用形:「ぬる」の基本形は「ぬ」→連用形接続
恋ひわたる=終止形:「べし」→接続は終止形・ラ変には連体形
見=連用形:「き」→連用形接続・恋しかる=連体形:「らむ」→接続は終止形・ラ変には連体形 

解答・・問③
タ=連体形:格助詞「に」→体言・連体形接続
チ=連体形:接続助詞「に」→連体形接続 
ツ・テ=未然形:願望の終助詞→未然形接続
 

問①は大丈夫と思う。問③助詞の接続については問①に示したいくつかと、ここにあげた4つくらいを覚えておきたい。
問題なのは問②の助動詞の接続で、案外わからない人が多い。助動詞の接続は個別に覚えようとしてもなかなか大変で、本来は助動詞を覚え始める時に接続と接続の考え方を一気に覚えてしまいたいものである。
ただ、次に示す羅列を何回か期間を置いて口ずさむだけで案外簡単に定着する。未然形・連用形・終止形接続をまでを覚えてしまうといい。「なり・たり・り」については別に覚えることとして、それをただ棒暗記する。あるいは「どんぐりころころ」の節に乗せて歌う!

(未然形接続)る・らる・る・らる・す・さす・しむ・ず・じ・む・むず・まし・まほし
(連用形接続)き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし
(終止形接続・ラ変には連体形)らむ・らし・めり・べし・まじ・なり
(体言・連体形関係)なり・たり
(その他:サ変未然・四段已然)

この程度の基本の前提を押えつつ、具体的な識別問題に入って行ければと思う。■→ 理解度確認テスト・■→ 演習と解説


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