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髪を自分で上手に切るコツは、まず切り始めること。

外出自粛期間が何ヶ月も続いて、ショートヘアであるわたしの襟足は、ヤンママの息子のそれにどんどん近付いていた。

いつかは絶対に切らなきゃいけないのだけど、それでも、「失敗したら?」とか「毛が散らばらないように準備しなきゃで億劫...」とか色々なことを思って、なかなか着手できないでいた。ましてやショートだ。ただ一直線に切れば良いというものでもなく、ハードルはかなり高かった。

でもある日の夜、急に髪を切りたいテンションになったので、ハサミと手鏡を持って洗面所へ向かった。

しかし、遠い。洗面所の鏡を覗いても、手鏡を覗いても、そこに映る鏡の中に映る自分の襟足は、とっても遠いところにあって、細部がよく見えない。

それでも何故か良いテンションを維持し続けていたわたしは、「指の感覚で切ろう」という原始人みたいな結論にたどり着く。襟足を片手で摘んで、もう片方の手でハサミを持って(両手が塞がっているので合わせ鏡はできない)、ひとまずバッサリと行った。

また、「切った髪が散らばらない工夫」は早々に諦めた。一旦は耳にレジ袋を引っ掛けるなどしてみたが、無意味。さらに、耳もとでガサガサと音がするのにもイライラした。その結果、「摘めるものは摘んで捨てて、後は肩と床に全部落とす」という手法(何が手法やねん)を採用した。

指先の感覚と新手(荒手)の手法で、ある程度切り、残りは、手鏡で合わせ鏡をして、後方やサイドを確認しながら切り進めた。

右側は難なくできたが、左が難しかった(右利きなので)。さらに、合わせ鏡をしていると、前後左右感がこんがらがって、どっちに手を移動させれば良いのかがよくわからなくなる。通りすがりの父親に(2月中旬から都内の実家で過ごしている)「耳を切りなさんなよ」と言われたときは軽くあしらったが、とんでもなかった。普通に耳を切りそうになる。

耳がゴッホにならないように細心の注意を払いつつ、前髪から襟足に綺麗に繋がるよう、左右のバランスを確認しつつ、淡々と切り進めた。

最後に、やや剃り込み(?)しなければならない部分があり、難関だった。バリカンは持ってないので、ここからはまた「指の感覚で切る」スタイルに移行し、ハサミを首にぴったりと当て、ひたすらチョキチョキチョキチョキ切り続けた(この間、もちろん全ての毛が肩に落ちている)。

ハサミでも意外とできちゃうもので、この工程を終えた後の襟足下部の触り心地は、前回美容院後の触り心地とそっくりな感じにできた。

これでよし、としたら、後は床に掃除機をかけ、風呂場で服を脱いでバッサバッサと振り回して終了。

あんなに躊躇していた「自分で髪を切る」という行為が、こんなにもスピーディにあっさりと終わるとは驚きだった。振り返ってみると、細かい工夫はいくつかあれど、やっぱり最大のコツは、どう考えても「切り始めたこと」なのだ。

このコツは、すべての物事に言えるなと思った。何か新しいことを始めるとき、色々考えずにまずやってみる。こんなこと、誰もがどこかで耳にしてるような言葉だけど、身をもって体感できたことは自分にとって非常に有意義であった。

人生に「躊躇」という無意味なマージンを生まないように、この感覚を忘れずにこれから過ごしていきたい。

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