#017 ヒグチアイという表現者さん
わたしが彼女の存在を知ったのは、わずか一年足らず前のこと。
もっと前から彼女を応援し続けている方がたくさんいるであろう中で、こんなに愛しく思っていいのかわからないけど、でもスキだから書かせてほしい。
*
初めて聞いたのは、『まっすぐ』という曲だった。
某動画サイトでいつものように自動再生をしていたら、ぽんとピアノの優しい前奏が始まり、そして彼女の声が聞こえてきた。
わたしは自動再生のとき、たいてい聞き流してしまうけれど、彼女の声が聞こえた瞬間、心がきゅうっとした。
強くて、しなやかで、凛としていて、でも弱さや切なさみたいなものが浮かんだ。
おばあちゃん家の箪笥みたいなやさしさがそこにあった。
課題をやっていた途中だったのだが、無性に「ちゃんと聞かなきゃいけない」ように思えてきて、聞き入った。
また、心がきゅうっとした。
綺麗事は嫌いで、信じられるものはどこかに置いてきてしまった、人との距離感なんかわからない、あの子に次会うときどんな顔していればいいんだろう、
そんな始まりも終わりも見えない真っ暗なものがぐるぐるしていたわたしの心は、彼女の声で歌われる彼女の言葉を聞いた瞬間に、きゅうっとした。
無責任に「大丈夫!頑張れ!」と励ましてくれるわけではなく、でも決して突き放すわけでもなく、あたたかく、そして淡々と隣で流れてくれる音楽だった。
*
今もわたしはヒグチアイさんの音楽に救われて生きている。
ずっと喉に突っかかっていて、言葉にならなかったものたちを受け止められるようになったこと。
声をあげていいのだと思えたこと。
否定の渦を止めたいのだと気付けたこと。
怖かったものを両手で抱きしめられたこと。
全部全部、彼女の音楽がいつだって隣にいてくれたから、ゆっくりと少しずつできるようになってきたことだ。
彼女に対して「好きです」という言葉を使ってしまうのもおこがましく思えるくらい、心の底から感謝でいっぱいの表現者さん。
ヒグチアイさん、いつも本当にありがとうございます。
これからもわたしはあなたの音楽に頼ってしまうけれど、いつか自分の足で立ってみせるから、せめてそれまでは、やっぱり頼らせてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?