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家族の見苦しさと美しさと愛おしさが綴られる英ドラマ・Us

海外ドラマというと永遠に続く。。。ってものが多いが(いや、永遠は言い過ぎか。。。でも平気でシーズン3とか4とか5とかに突き進んでいくよね)これは本当に短かった。たった4話。そして見終わったあとの余韻がすごい。単に個人的な思い入れかもしれないけれど。

中年夫婦とその家族の夏休みを描いた作品「Us」はイギリスのベストセラー作家・David Nichollsの小説 Us の映像化だ。

とても残念なのだが日本からこのドラマは見られないらしい(スミマセン)。VPNで北米に繋げることが出来るひとで、アマプラのアカウントがあったら見てほしい。

ダグラスは生物化学分野の科学者だが、妻コニーにある日「出て行きたいの、全部新しく始めたい」と言われる。だが「夏休みの家族旅行には行きましょう」と。ダグラスはその間に家族を取り戻せることを願いOKする。
年齢もあるのか、一人息子のアルビーと父ダグラスの関係はかなり微妙。その微妙さ加減は旅をはじめてすぐに表面に現れ、アルビーは一人で旅をするといって離れてしまう。
ダグラスは息子を「取り戻しに」一人旅を続ける。

父と息子の物語であり、中年夫婦の「すれ違いが埃のように部屋の隅に溜まっていった」後の話であり、若い頃の結婚するまでのロマンスを振り返る旅であり、また家族だからこそ上手く言えないこと、何でもないと思っていたから言わなかったことが積もり積もってどこからも崩していくことが出来なくなった現状を見せている。
この夫婦と近い年齢・立場にあるからか、つい顔をしかめてしまったり頭を抱えたくなるような現状が続く。


なにが悲しいって、この夫婦には決定的な「続けられない理由」がないことだ。確かにダグラスは気難しい理系人間でコニーはアーティスト気質の「羽をひろげて飛ぶ楽しさ」を知る人だ。でも二人ともそれなりに幸せだったと思っているし二人だったから乗り越えたこともあることをお互いに理解している。

息子には息子の「父と上手くやれない」理由がそこかしこにある。そして彼のそれらの小さな理由ひとつひとつは、知らぬうちに積もって固まって彼自身を「逃げる」しかない、という状況に追い込む。


ダグラスの家庭は多分、世の中的には幸せに収まっている家族だったはずだ。恐らくどんな家族にも、家庭の中にはこういうすれ違いというか、おりというか、その時は見過ごしても問題ないと思って降り積もり続ける、というものがある。そして皆がそれらを見なかったことにしたり誰かが(このダグラスの家庭では妻・コニーが)つなぎ合わせることでなんとか過ごしている。


上手く言えないけれど、愛があるからこそ家族が散らばっていくのだ。水の上に落とされた油滴みたいに。繋ぎ止めようとするとさらに散っていく。
花びらが一枚、一枚と落ちていくようにこんな変化をしていく家族もあるんだろうけれど、それはこのドラマをみているこちらも辛くなってしまうような過程だ。

それでも家族が散ったあとで、大学で行われた息子・アルビーの作品発表会で再会した三人の表情の明るさが印象的だった。

映画にして2本分。
多分いろいろ今の自分に響くところが多すぎるのかも。
さて、3周目を見てみようかな。

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