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アンティークコーヒーミル  プロローグ

「どうして古いコーヒーミルなんかに興味持つの?
古くて、汚れていて、他の人が使ってた物を。
どこがいいの?新しい方がいいことない?」
とお考えのあなた。

アンティークの意味を一緒に考えませんか?

我が国ではアンティークというと、イコール骨董です。

例えば壺。床の間に鎮座していて、ホコリは払うけど、中にお花をいけたりすることはまずあり得ない。
眺めるだけで、滅多にさわらない。
これが骨董ですね。

私もそう思っていました。

コーヒー屋なんだから、ちょっと雰囲気のある外国のミルを飾ってたらカッコいい。
別に動かなくてもええやん、という考えで、アンティークショップでコーヒーミルを買おうと思いました。

ショップのオーナーさんに、これこれこういう訳でミルを探しているんです、とご相談したところ、「ちょっと待ちなさい」と言われ、アンティークが何たるかの手ほどきを受けました。

飾るだけの古い物はガラクタ。
アンティークは置物ではない。
アンティークは使うもの。
古いほうが良く出来ているものがたくさんある。
というお話でした。

この話には驚きました。

そうか、古い道具と言えども使う物なのだ。
使えるものを買わないといけないんだ。
アンティークに対する考えかたが劇的に変わりました。

その頃、日本ではコーヒーミルの専門書はありませんでしたので、海外の専門書を探して買いました。
驚くほどたくさんの種類と、聞いたことのないメーカー(ほとんどはもうすでにありませんが)があるではありませんか。
えーっ、これ全部使えるのか!?
何十年も前の物なのに!?

俄然興味が湧き、実際に買って構造を調べました。

いや、すごい!
古いほうが精巧にできています。

いろいろな木材を使い分け、細工を施し、挽くことには全く関係ないのに、カーブをつけたり、スマートにしたり。
壁掛け用、旅行用、テーブル据え付けなど、いろんなパターンがあります。
ロゴマークも格好いい。
どれも個性的です。

なんといっても道具ですから、挽くという機能に対しての熱意は相当なものがあります。
いかに均等な粒度で挽くかがミルの使命なのですが、現代の手挽きよりはるかにメカニカルで手の込んだ作りです。

そこから何かに憑りつかれた様に買い集めることになります。

こんなすごいミルならば、きっと売れるに違いない。
売るために、たくさん集めようと。

日本ではあまりに目にしませんが、海外のオークションサイトにはこういったミルの分野が確立されていました。
サイトを覗くとここは宝の山か、と思うばかりのミルの数。
外国では、使っていて飽きれば売りに出し、また違うのを買い求めるというだけあって、現役バリバリのアンティークミルが次々と目の前に出現します。

時差の関係で落札時間は午前3時ごろ。
タイマーをセットし、夜な夜なの落札ゲームでした。

こうして各国から続々と集まったミルは、並べてみると実に壮観です。
初めは、販売目的で買っていたのですが、だんだんとコレクションの域に入ってきました。

1点ものですので手放すともう手に入らないものが多くなり、手放すのが惜しくなってきます。
販売目的で始まったことが、元々の収集癖に火がつき、ついにその数150点以上となります。

集めたミルは、お店の棚にギュウギュウ詰めにして並べていました。
しかし、2019年に創業20周年という節目で、店舗の改装を行った際、新しい内装には、選りすぐりのミルだけを少量を置くのが好ましいとなり、それ以外は倉庫に、収納しました。

片付けながら、改めてその数の多さに驚きました。
この時、これらをほこりの被ったままにしておくのはいかがなものかと思います。
これは、アンティークの本質から外れているのではないか。
当初の目的どおり、素晴らしいミルは、興味ある方にお渡しすべきではないか。
こう考える直すようになりついに全てのコレクションを放出するという運びになりました。

これら多くのコレクションは、道具として使えるものをよく吟味して集めたもので、国内最大級であると自負しています。
いや、世界中でも珍しいほうでしょう。

コーヒーミルとしての性能や構造を熟知する私たちプロが選んでいますので、安心してお使いいただけます。

現代では到底考えられない手間暇とコストと職人の意地をかけてつくられた古い時代のコーヒーミルは、もうこれから作られることはありません。
たくさんの人が手にするアンティークコーヒーミル。
その時間軸の一コマに、あなたも関わってみたいと思いませんか?