都市のナマハゲ―ナマハゲ×テクノロジーの融合を試みてみた

お世話になっております、市原えつこです。
会社を辞めて独立してから突然雷に打たれたように祝祭・奇祭にはまり、それが高じて中野の商店街でテクノロジー奇祭を開催したりしたのですが
それとはまた別途、奇祭をモチーフにしたプロジェクトが水面下で進行しておりました。

その名も「都市のナマハゲ - Namahage in Tokyo」。
ISIDイノラボさんと「日本のまつり RE-DESIGNプロジェクト」というプロジェクトを立ち上げ、その第一弾として制作したものです。
独立間もないころにイノラボの阿部元貴さんにお声がけいただき(ソーシャルナンパ)、マネジメント役としてイノラボ川内友紀恵さんが参画し、あれよあれよという間に始動しました。(阿部さんが執筆された電通報での記事はこちら→市原えつこ氏とイノラボがナマハゲをリデザイン

日々テクノロジーが世界を進歩させ、私達の生活を合理的で効率的にしていく流れの中で、最先端のテクノロジーとは真逆の、人類の根源的な部分に回帰するような両義的な取り組みをやりたい、という動機で「奇祭ヤバイ」という旨をイノラボチーフプロデューサーの森田浩史さん、阿部さんにご相談したところ、もともとイノラボさんが色々と施策を行っていた「外国人向けインバウンド」と融合するような形でプロジェクト化いただきました。

第一弾として取り上げたのが、秋田県男鹿市の民間風俗として現在も脈々と続いている行事「ナマハゲ」です。

モチーフとしてナマハゲをチョイスしたのはもはや謎の直感だったのですが、男鹿市の市役所で色々とヒアリングしたり、資料館や寺を回ったり、現地でリサーチを重ねる中で、ナマハゲが持っている合理的な機能というものに気付いていきました。

大晦日にその集落の未婚の若者がナマハゲに扮して一軒一軒家々を回り、「泣く子はいねがー、怠け者はいねがー」「今年もしっかりやってたか」と家主に対して問答する。
それを通じて、ナマハゲというものはその集落の治安を維持したり、住民を励ましたり、子供から大人への通過儀礼を果たしたり、厄災を払ったり・・・という「機能」を担っています。

また、実はナマハゲの姿の規格はなく、その集落ごとに姿がまったく違うようです。例えば、海辺の集落の場合は海藻を利用してナマハゲの髪の毛をつくるなど、その土地おりおりの素材でナマハゲの姿は形作られます。


ナマハゲが潜在的に持っているこういった機能や性質を、村社会ではなく現代の都市に翻訳して「都市のナマハゲ」を産んでみた場合、どんなことが起こるのだろう?という好奇心が湧き、それを実現することにしました。

都市圏のクリエーターが本気出してナマハゲをつくってみた

元来のナマハゲは、その土地(集落)の人々の手で作られます。一緒にナマハゲの面や装束をつくる、そのプロセスによって集落のコミュニティが強化されるという側面もあるのです。
ということは都市のナマハゲも、その土地(都市)の人によって作られなければなりません。
ファッション(面・衣装)、システム、映像と、都市圏のクリエーターの力の結集により都市のナマハゲは生まれました。

都市のファッションブランド + アーティストのコラボで生まれたナマハゲの面と衣装

「都市のナマハゲ」におけるセンターナマハゲとして設定した「秋葉原のナマハゲ」をつくるにあたり、頭に浮かんだのがこともあろうかエッジの立った若者に人気のファッションブランドchlomaさんでした。

自分自身あまりファッションに詳しくない上に、かのchlomaさんにナマハゲの装束をお願いするとか意味不明すぎる、、と尻込んでいたのですが
「あの・・・なまはげの衣装制作をお願いしたいのですが・・・」と謎の仕事依頼をchlomaデザイナーの鈴木淳也さんにご依頼したところ
実は鈴木さんは岡本太郎の本を学生時代に読み耽っており、土着の信仰にも元々興味を持っていたとのことで、快くお引き受けいただくことができました。

鈴木さんには打ち合わせの段階で「都市の土着」という極めて解釈しにくいテーマをご相談したのですが、「都市の土着ってラブライバーっぽいですね。もしくは、都会的なアウトドアウェアの生地を使って呪術的な造形をつくるとか、、、」とすさまじい理解力で都市のナマハゲのルックを提案いただき感動しました。
そして鈴木さんから上がってきたスケッチがこちら。

影も形もなかった「秋葉原のナマハゲ」が具体的な形を帯びた瞬間でした。
アウトドアウェアを用いてガンダムなど機動戦士のような造形をつくり、そして青は幽界の色でありインターネットの色でもある、ということでこのような形状をデザインされたようです。
かっこよすぎてしばらくiPhoneの待ち受け画面にさせていただいていました。

モンクレールではなくナマハゲになった生地が、独自の存在になれて喜んでくれていることを祈っております。

VRヘッドセット、ドローン・・・「秋葉原の土地の幸」で作られたお面

秋葉原のナマハゲのお面はアーティスト・造形作家の池内啓人さんにお願いしました。池内さんはプラモデルを使って自分の空想を具現化するという作品を作っているアーティストで、「秋葉原のナマハゲ」のコンセプトにぴったり過ぎる!!とオファーさせていただきました。

秋葉原の土地の幸で作られたナマハゲは、ドローン、VRゴーグル(ハコスコDXを使用)、ゲーミングヘッドフォン、プラモデル、電子基板・・・といった素材で面が構成されています。

池内さんのアトリエでナマハゲ面の土台になる素材(ドローン、VRゴーグル、防毒マスク、ゲーミングヘッドフォン)の組み合わせを試行錯誤し、それに池内さんがものすごい速度でデコレーション・塗装を施して下さりました。

初期の仮組みの様子。はじめに私が調達した防毒マスクがイマイチだったので後から池内さんに別のものに差し替えていただきました・・・

池内さんの完成イメージスケッチ

ものの数日で池内さんがパーツのデコレーションを施した様子。一時期はオリジナルナマハゲに倣って二眼を検討していました

キバなど、攻撃的なパーツが増量されマスクがかなり強そうになった様子

ほぼ完成形に近い組みの様子。最終的にレンズは一眼になり、ツノなども生え、元来のナマハゲっぽさと都市/監視などというキーワードの両立がなされました

下地塗りの様子

衣装の生地と色合わせをしつつ、最終的な色塗装をしていただいている様子。「豊穣」「豊作」など漢字モチーフが入っていたりと細かいディテールがにくい・・・

そして出来上がったのがこちらのマスク。めちゃかっこいい・・・!!

ちなみに本場・秋田でも年の瀬にかけてナマハゲの衣装を集落の人々で制作するのですが、都市のナマハゲも年末にかけて制作佳境でした。20176年はただしい年末の過ごし方をできたと思います。


都市の悪い子を監視するSNS「NAMAHAGE NOTE」

ナマハゲのルックと併せて、都市のナマハゲが監視に用いる架空のSNSとしてイノラボのテクニカルプロデューサーの野崎和久さんと構想したのが、「NAMAHAGE NOTE」。

野崎さんの書いたシステム図

「秋葉原板」「巣鴨板」など駅別にスレッドが立ち、「バイトをさぼって一日中ゲームに明け暮れた疑い」などそのその土地で悪事を働いた人間の情報が投稿(通報)されていきます。

対象者が「良い子」か「悪い子」かどうかはその都市の人間の投票で決まり、「悪い子」ポイントが規定値を超えると、大晦日に人ならざるものが訪れる・・・という代物です。

かっこいいUIビジュアル・モーショングラフィックはflapper3.incさんにお願いさせていただきました。

映像作品「ナマハゲ、東京に現る。」

そして本プロジェクトのアウトプットとして重要なのが、映像作品です。

上記の作品が登場する映像作品は、もともとNHKの中の人でもあったSF作家・浅生鴨氏が脚本を、映像演出・監督は特撮を得意とし、カンヌ受賞歴もある松宏彰氏が手がけました。
浅生氏の企画により「モキュメンタリー」という手法が採用され、前半はナマハゲにまつわる事実のドキュメンタリー、後半は自分の妄想世界、という構造で映像が構成されています。

主にFacebook広告を利用して世界中に発信してみたところ、なぜか東南アジア圏からの反応が多く、民間信仰とテクノロジーの融合という部分でシンパシーが通じる部分があったのかなと思っています(展示現場でもどちらかといえば東南アジア系の方に人気でした)。

秋葉原のナマハゲはメディアアートの美術館、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]で3/12まで展示中

気付けば今週いっぱいで展示が終了なのですが、東京オペラシティにあるメディアアート専門の美術館 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]でこの作品をご覧いただけます。生ナマハゲ、怖いと定評があります(お子さんがたまに泣きますw)

最終の土日である11日、12日は私も現場に13時ごろから在廊予定です。
11日の17時〜閉館までは展示現場の写真撮影を実施予定なので、写真にうつっても大丈夫な方推奨ですw

以下、展示概要です。

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市原えつこ 「デジタル・シャーマニズム - 日本の弔いと祝祭

日本の民間信仰とテクノロジーを融合がテーマになった、アーティスト・市原えつこ氏による一連の作品が紹介される。市原氏は、家庭用ロボットに故人の言葉や身振りといった、身体的特徴を憑依させるプログラムを開発。遺族と死後49日間を過ごし、新たなる弔いの形を提示する「デジタルシャーマン・プロジェクト」だ。さらに、人間の生命力の表出とも言える「祝祭」や「奇祭」への関心から、秋田県男鹿市の「ナマハゲ行事」をモチーフに現在進行中である「都市のナマハゲ - NAMAHAGE in Tokyo(ISIDイノラボとの共同プロジェクト)」のふたつのプロジェクトを紹介する。

http://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2016/emergencies-030-ichihara-etsuko/

◆アーティスト:市原えつこ
◆日時:2016年12月20日(火) ~2017年3月12日(日) まで
◆入場料:オープン・スペース: 無料。企画展はイベントにより異なる
◆開館時間:午前11時─午後6時
◆休館日:月曜日(月曜が祝日の場合翌日)年末年始


文責:市原えつこ

1988年、愛知県生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。学生時代より、日本特有のカルチャーとテクノロジーを掛け合わせたデバイス、インスタレーション、パフォーマンス作品の制作を行う。主な作品に、大根が艶かしく喘ぐデバイス《セクハラインターフェース》、虚構の美女と触れ合えるシステム《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》、脳波で祈祷できる神社《@micoWall》等がある。2014年《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》で文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出。

http://etsukoichihara.tumblr.com/

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市原えつこ(メディアアーティスト)

メディアアーティスト、妄想インベンター。主な作品に喘ぐ大根「セクハラ・インタフェース」「デジタルシャーマンプロジェクト」(文化庁メディア芸術祭優秀賞、アルスエレクトロニカ栄誉賞)など。日経COMEMO KOL【公式web】http://etsuko-ichihara.com/
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