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セキュリティ技術者の総合格闘イベント・Hardening Project@沖縄に行ってきた

市原えつこです。今週末は、コンセプトロゴのデザイン周りでお手伝いしたセキュリティエンジニアの競技イベント「Hardening Projectの現地視察(要は物見遊山)に沖縄まで飛んできました。梅雨の沖縄のはずが、ギンッギンに晴れ渡っておりました。6月頭で気温30℃って・・・。空港に降り立った瞬間に衝撃でした。溶ける。

セキュリティエンジニアの地獄であり楽園

競技会場は沖縄コンベンションセンター。沖縄でも有数の巨大イベントホールで、様々なアーティストの公演などもやっているようです。「トロピカルビーチ」まで徒歩1分ほどで行ける好立地。

外に出るとこのような美しいビーチが広がっておりますが、

会場の中は圧倒的にそれどころじゃない感じが伝わってきます。

というのも、彼らは今まさにハッカー集団「Kuromame6」によるハッキング攻撃から自分たちが構築したECサイトを守り、サイトの売上を担保しないといけないという非常事態にさらされているから。イベントのハッシュタグ(#h100vv)を追っていると、技術者たちの悲鳴(もしくはヤバすぎてTweetすらできる状態じゃない無言の悲鳴)が漏れておりました。Hardening Projectではハッカーからの数々の攻撃と困難をくぐり抜け、気象データなどの外部要因も考慮し、チームで協力しながら最も高い売上を挙げたチームに栄冠が輝きます。現在巷で大流行のハッカソンなどの開発イベントとはまた違ったタイプの熱狂がありました。攻撃側と防御側に分かれて行うバトル。ラッパーによるMCバトル並みの(静かな)迫力を感じます。

ご参考:戦国MCバトル

会場の奥にあやしい小部屋があったので覗いてみると、そこは仁義なきハッキング集団「Kuromame6」のアジト。技術者のスキルのレベルを具体的に判定できない自分でも、雰囲気からこの方々のヤバみをギンギンに感じました。「このイベントはすでに数回開催してますが、毎回攻撃の仕方を変えてますね・・・。今回はイキの良いランサムウェア(マルウェア)を仕込んでます」と爽やかな笑顔で語るハッカーさん。怖いわ。

瘴気のただようハッカー部屋

ちなみに今回はIoTやビッグデータも競技の要素として取り込んでいるらしいです。天候、気温、風速などの因子により売るべき商品が変わってくるという仕組み。気温が高い時はビールがよく売れる、とか、風が吹くと桶が売れるとか(マジらしい)。そういった法則は競技中には明かされず、自分たちで法則性を推定していかねばならんそうです。

実際、IT系のサービスは天気によってPVが変わったりするので、非常にリアリティがある競技設計でした。実践性が高い。運営の岡田社長いわく「これは競技イベントに見せかけたビジネススクールですからね(ニヤリ)」とのこと・・・。

不敵な笑みを浮かべるボス(ARC岡田良太郎社長)


懇親会がやたらとガチだった

そんなストイックな競技イベントですが、楽園としての機能が顕著に出ていたのが懇親会でした。オリオンビールじゃんじゃん出ます。沖縄料理もじゃんじゃん出ます。寿司もじゃんじゃん出ましたが一瞬で貪り尽くされました。「ビールサーバーの消費が遅いとスタッフさんからクレームが出ております!みなさん、もっと飲んでくださーい!」って狂った運営アナウンスが入るIT系イベントはじめて見た。

ビール片手に海辺まで行けるという最高な流れもありました。これは完全に最高の夏だ(梅雨だけど)。沖縄の妙齢ビーチギャルにセキュリティエンジニアのみなさんがモテてました。「みなさん何しにきたんですか??IT系のイベント?独身の人いたらバーベキューきません?え、みんな既婚なの!??」あなや・・・。

夜にはLT大会も開催。10代の沖縄高専の学生さん、弱冠20歳の鬼才ハッカー、セキュリティ界隈の大御所の方まで幅広い方々が登壇。どのプレゼンもすごく面白かったのですが、個人的に大好きだったのが「システムのネーミングプロセス」についてのLTでした。前々からエンジニアさんがつけるシステム名のセンスがポエムっぽくて大好きだったんですが、なるほどこうやって決めていたのか〜〜、と。ギリシア神話の神々の名前からインスパイアされるのはよくやる手法のようです。

ググッて検討してる名前と同じの見つけると、絶望するそうです。

私はさくっと宿に帰還しましたが、このあと二次会、三次会、四次会・・・が各自あったとの噂です。みなさん、沖縄県にバッチリお金落とされてますね。

気になる競技結果

二日目のSoftning Day最後の表彰式にはチームの成績が順番に公開されていきます。販売力、技術力、協調力、様々な側面からの点数付けが。

全然関係ないですが、こちらの「千と千尋の脆弱性」というチーム名が秀逸すぎて個人的にネーミング賞贈与したい気持ち。

そして栄えあるグランプリはTeam#8 No.Bee!高い販売力で郡を抜いていたチームでした。おめでとうございます!豪華商品が色々あったのですが、副賞に「SPAM缶」と「あやしい白い粉(サーターアンダギーミックス?)」が入っていたのがポイントですね。いいなあ!

ついでに沖縄も堪能できました

やはり海まで1分という立地が最高でした。熾烈な競技イベントの最中に海沿いを歩いたり

会場付近のカフェでカキ氷食いながらリモートで仕事したりもしました。何しに来たんや。でもノマド感あって楽しかったです。フリーランスっぽい。

最後の一日は観光する時間があったので首里城堪能しました。この王座のラスボス感やばないですか・・・。なるほど、こうやって権力と崇拝をデザインするのだなあ、と建築や装飾から色々と参考になりました。作品のヒントになりそう。

あとは出張用にとって頂いたホテルの朝食ビュッフェがめちゃくちゃ美味しかったことをここにご報告いたします。岡田社長ありがとうございます。

さらば沖縄

セキュリティエンジニアの奥深い世界を垣間見た

私は独立する前はIT企業勤務だったのですが、当時の職種はUIデザイナー。いわゆるフロントエンド側のiOS/Androidアプリ開発者やクライアントサイドのWebエンジニアさんとは関わりが多かったのですが、セキュリティをつかさどる技術者の方々が正直何をやっているのか理解しておらず、遠い存在でした。

しかしこんなに面白い人たちだったんだったら在職中もっと関わっておけばよかったwwwと後悔しました。キャラが濃くてハッカーマインドにあふれる方々がわんさか。「攻撃受けてサーバー落としたり情報流出させたら数十億の損益が出るなか、それを阻止する仕事なんて想像しただけで恐怖で胃液が逆流する・・・大変そうだな」と思ってましたが、みなさん予想以上に楽しそうです。そういえば、前職でセキュリティエンジニアさんたちのフロア通る時、意外といつもワイワイ活気があって楽しそうだったな・・・。

ちなみにiOSアプリエンジニアの知人曰く「セキュリティ系は競技プログラミング上がりの人も多く、アプリをつくるエンジニアとはタイプが違うかも。アルゴリズムを考えるのが得意な人が多い。数学コンテストで優勝するような天才肌の人も多く、純粋な知能レベルが反映されやすい世界」とのこと。なるほど、それで競技プログラミングカルチャーが染み付いていたのか。
ITのサービス作りの醍醐味は、つくったものに対してユーザーから反響が来ることだ!と思っていたのですが、そういう価値観とはまた違う尺度での面白さがある世界なんだなと思いました。手に汗握る攻防の接戦。世界に蠢くハッカーの攻撃に対抗できるのは、その手を事前に予測するハッカーマインド溢れる技術者たちだったのだ!とわかりました。イベントもすごく盛り上がっていて、参加者・スポンサーともにリピーターが多いのも頷けます。

IoT時代、さらに高まるテクノロジーの守護神の需要

最近巷を賑わせている「IoT」や「スマートシティ」という概念。希望にあふれた便利な世界が思い浮かびますが、その一方で家や都市、農場etc...がインターネットで制御された世界でのハッキングを想像するとかーなーりえぐいです。やばいです。ディスプレイを飛び越えて物理的な損傷被害が起きたり、ガスの制御をアレコレいじられて火事が起きたり、とか。
そういった危険因子が解決されない限りは、なかなか新しい技術って生活に根付いていかないと思います。安心してIoTが社会に、私達の生活に導入されるよう、「守り」の技術者の文化がより育っていくといいなと思いました。という優等生っぽい締めでおわりますwみなさん、おつかれさまでした!!!

集合写真撮影後、屋外に佇むPepper(エラー吐いてた)

注:競技参加者ではなくピンポイントで遊びにきていた目線レポートなので、正確な競技の全貌は描写できていないですwあしからず。

文:市原えつこ

1988年、愛知県生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。学生時代より、日本特有のカルチャーとテクノロジーを掛け合わせたデバイス、インスタレーション、パフォーマンス作品の制作を行う。主な作品に、大根が艶かしく喘ぐデバイス《セクハラインターフェース》、虚構の美女と触れ合えるシステム《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》、脳波で祈祷できる神社《@micoWall》等がある。2014年《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》で文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出。

http://etsukoichihara.tumblr.com/

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