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大工、足場屋で働く.5 ゴンちゃん後編

 借金三億五千万を抱えながら、二つの家族を養う男、社長のゴンちゃん。今回もゴンちゃんのムチャクチャぶりをお話しします。


 僕が工務店から初めてゴンちゃんの足場屋に出向した日。ゴンちゃんの運転するトラックに乗って、二人で現場に行ったんです。


 普段のゴンちゃんは『仏のゴンちゃん』と周囲の職人や元請けに呼ばれる通り、温厚で優しい人柄。それに話も上手なので僕もすぐに懐柔されちゃった。


 足場お手伝い初日の僕を気遣ってか、簡単な増築現場の足場をかける現場に僕を連れて行ったゴンちゃん。僕はゴンちゃんの指示通りに単管パイプを運ぶだけの一日でした。


 「なんか飲むか?」


 と、仕事終わりの帰りがけ、コンビニにトラックを停めるゴンちゃん。

 

 「あ、いや・・・じゃあお茶で」


 唐突に何が飲みたいかを問われると、いつも一瞬迷ったあげく「お茶」と言ってしまう保守的な僕。家ではお茶なんて全く飲まないくせによ~。


 「ほいよ。これも食べるか?」


 ゴンちゃんってば、気を遣ってお茶+何か茶菓子でも買ってきてくれたのかしら、なんて気の利く社長なんだ! 好感度、上がってるよ!


 ん? とはいえこれって・・・ロースハムやん。


 「ハム嫌いか?」


 いや、嫌いじゃないけど、ていうかむしろ好きよ。ハム大好きよ。だけど、4枚入りのロースハムって仕事帰りのトラックでそのまま食べるものかい?


 とまどう僕を横目にゴンちゃんは真空パックをひん剥いてロースハムをむしゃむしゃ。トラックの運転をしながらハムをむしゃむしゃ、ハム食べながらのぐびぐび。


 ぐびぐび?


 そういえば、僕にお茶とハムをコンビニのレジ袋から取り出して渡した後、自分のハムと柿の種をダッシュボードに置いて、手伸ばして食べてるけど、ゴンちゃんの飲み物は?


 ってか、柿の種・・・。


 すると、ちょいちょいゴンちゃんが左手で何かを飲んでることに僕、気づいたんです。


 左手でサイドブレーキの辺りから、レジ袋に入れたままの飲み物を持ちあげてぐびぐび、すかさず右手で柿の種を食べて、また左手で飲み物をぐびぐび。


 「え? 社長、その袋で隠しながら飲んでるのって・・・?」


 「ビールだよ(笑)、お前はお茶でいいんだろ?」


 いやいやいやいや、こらこらこらこら・・・コラーッ!!


 トラックでハムくらいで引いてる場合じゃなかった。ゴンちゃんてば、ハムと柿の種で思いっきりやっちまってるYO!! NO!!


 「いやいや、社長、ダメですダメです。停まって下さい。僕が運転します」


 「ダイジョブだよ(笑)、お前カタいな」プシュっ!!


 こらこら、二本目空けんなっ!!


 「いや、ていうか捕まったら免許無くなりますよ? 罰金だってすごいし」


 「免許? 免許はもうないよ(笑)」


 ・・・・・・。


 おまわりさん! こっちです、こっち~っ!!


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