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友達から30歳DTを紹介されてお茶してみたら終始震えてた(30歳DT前編)

私の男性不信の根源である父親がYoutubeのおすすめに出てきた事件から、半月ほど経った頃のこと。

友人と飲んでいるときに、私はこう言った。

「私、父親が三回結婚してたり、彼女の車で家来るような人だったから、男性を全然信用できなくて。もし付き合うなら、もう恋愛経験全くないです!みたいなピュアな童貞の可愛い人がいいなあ〜」

そう漏らした私に、友人は、おすすめの人がいる!と言って、爆速でLINEを開いて連絡をし始めた。

彼は理系院卒の友人の同期で、生涯彼女がいないとのことだった。家族にも心配されて、避妊具をプレゼントされていたらしい。そして家族が一人暮らしの家に来るタイミングで、全く使っていないことがバレるのが嫌だっため、見栄で開封だけした、という武勇伝があった。

それを聞いて、えー面白そう!と盛り上がっていると、その日に電話をすることとなった。
彼は東京には住んでいなかったにも関わらず、週末新幹線でそっちにいくのでお茶でもしようと言ってくれた。とんでもないフッ軽である。
そして紹介した友人も3年ぶりくらいの連絡だというのにとんでもない行動力であった。
3年間の間に卒業してたらごめんねー!と言われつつも、まあ折角だし会ってみるかと私は軽い気持ちでお茶の誘いを承諾した。

指定されたカフェに行くとバチくそに緊張した彼は既にしっかり奥のソファ席に座っていた。

あ、こいつまだ卒業してないな。

奥の席に座っている姿でそれを察知した私はニコニコと笑いながら挨拶をして、椅子に腰掛けた。

コーヒーを頼み、運ばれてくると彼は、明らかに2人で使う用の銀色の容器に入ったガムシロップを、震える手で自分のカップに全部入れた。

「えっっ、さすがに全部は甘すぎませんか!?」 

思わずつっこんでしまったが、甘党なんで大丈夫です、と回答された。
ガムシロップを全入れしたアイスコーヒーを震える手で飲んだ彼は、

「○○から何て聞いて紹介されましたか?地頭良いとか盛って話されてないか心配で……」

とおそるおそる尋ねてきた。
童貞だと紹介されました、と言えるわけもなく、いや、あんまり前情報なくて……と私は濁した。

彼は絵に書いたような理系院卒!といった感じのチェックシャツを着ており、スーパーの衣料品コーナーで買ったみたいなバッグを持っていた。
ちゃんと肌綺麗にして美容院行ってオシャレすれば、普通にモテそうな容姿ではあったので、なんともったいない・・・と私は上から目線で思いながら、彼の趣味などを聞いた。

彼は絵を描くことが趣味で、
「折角なんで見てもらっていいですか?」と前のめりでスマホの画像を見せてきた。
きちんとフォルダ分けされていた絵フォルダの絵は、普通に上手かった。ただ、あまり、初対面の女性に見せるべきではない、めちゃくちゃ水着の女の子の絵なども混じっていた。
私はそれを見ながら、逆にめちゃくちゃ新鮮な気持ちになっていた。
中学生のとき、涼宮ハルヒやらき☆すたのイラストを描いていた同級生を思い出して、この人はピュアな心をずっと持ち続けているのかもなあとさえ思った。

そこから共通の趣味である芸人さんのラジオの話や、当たり障りのない仕事の話などをした。チェーン店のカフェは、ものすごく混んでいて、1杯で粘るのは申し訳なかったので、

「おかわり頼むか、外でちょっと散歩でもしますか?」

と提案してみた。彼は散歩がしたいとのことだったので、外に出ることにした。お会計をしようと立ち上がると、

「あ、僕払います。もぐさんの方が稼いでるかもしれないけど。」

と言われた。いや、コーヒー1杯に、私のほうが稼いでる情報、要らんくね!?!?!?
私は驚きながら、いや、大丈夫です、払います、と500円玉をお渡しして、レジでのお会計をお任せした。

友人からの紹介でなければ、このまま帰っていたのだが、
私から散歩でもしますか?と言っちゃったし、新幹線でわざわざ来てくれてるからなあ、と後ろめたく思い、とりあえず、もう少し話をしてみようと思った。

クリスマスシーズンの繁華街は、ハイブランドの店に行列ができていた。

彼はハイブランドを1ミリも知らなかったので、それぞれ説明しながら、
「4℃をクリスマスにあげるとTwitterで叩かれるから気をつけて」
と、教えておいた。(将来できる彼の初めての彼女は安心してほしい)

そこからフラフラと歩き、お腹が空いたらしいので、軽くご飯を食べて帰ることにした。ちなみにヨユーで2万歩近く歩いた。

「もぐさんにとっては、普通の光景でも、僕は街並み見ながら歩いてるだけで楽しいんで。」

と彼は言っており、私は少し感動していた。
同じものを見て、同じものを食べて、同じような気持ちになる良さももちろんあるけど、
私がなんとも思っていないことを、大切に思う価値観はそれはそれで良いものだと思った。

もんじゃ屋さんでは、お好み焼きの作り方のマニュアルの「ひっくり返すタイミング」を秒単位で守るため、明らかに安物そうな時計とにらめっこしている彼は面白かった。

お酒を数杯飲んだので、カフェのときよりは、幾分会話もスムーズになったが、彼の手は終始震えていた。

いや、でもこのくらいの人のほうが、男性不信の私にはいいのか……

そう思い始めながら、帰りの電車に乗った。
彼の方が先に降りる駅だったため、別れ際に、

「わざわざ東京まで来て下さりありがとうございました。楽しかったです。」

とお礼を述べると、よかった〜〜〜と彼はほっとしたように言って、
次、鎌倉を案内させてください、などと次のお出かけを提案して、去っていった。

久しぶりにこんなピュアな男とご飯したわ〜〜〜と私は思いながら、数々の違和感を飲み込み、

「ま、もう一回くらいなら会ってもいいかな」

と思いながら電車に揺られていた。

しかし、この「数々の違和感」はのちに巨大化することを、この時の私はまだ知らない・・・

To be continued……


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