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【読書感想】「会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。 」青野慶久

読了日:2018/3/15

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この本の概要

サイボウズ株式会社の社長・青野さんが、働き方改革をすすめていくなかで発見した「カイシャ」というモンスターの存在。
カイシャというモンスターってなに?
カイシャに支配されずにいきていくにはどうしたらいいの?
これからの生き方のヒントになる考え方がたくさんつまっている、とっても読みやすい本です。

サイボウズは今、私がつとめているカイシャです。
ですので、著者の青野さんは、私のカイシャの上司です。
(社長のことも上司っていうのかな?)

忖度するわけでも、たいこもちするわけでもなく、素直に感想を述べますが、書籍としてとても読みやすいし、内容もすごく面白かったです。
さすがに8歳の息子にはまだ早すぎだけど、中学生くらいになったらこどもら全員に読ませたい。

「会社」「社会」「国」ということばの気持ち悪さ

青野さんの本を読むずっと前から、私のなかにも「会社」とか「社会」とか「国」ということばに気持ち悪さを感じてました。

きっかけになったのは、たぶん小野不由美さんの小説。

中国っぽい架空の世界を舞台にしたファンタジー小説なのですが、そのなかにこんなセリフがありました。

「俺には、国土に王が必要だと言う者が理解できないからだ。なぜ昇山してまで王を欲しがるのかわからない」
「王と麒麟と、実はそんなものは、人には必要ないんだ。国の施しを受けずに生きていく覚悟さえできればな。」

この小説は、「図南の翼」という小野不由美さんの十二国記シリーズのひとつです。
私は、この小説を読むまで「国」という存在や、その必要性について、深く考えたことなんかありませんでした。

でも、
「国」もざっくり言えば、同じルールをもつ人の集合体の名前でしかない。
「国」ってじつは、実体があるようでないような、ぐにゃぐにゃした可変のもの。
国ってそもそも本当にいる?
人類を生物として見た場合、「国」なんていうよくわからないものに頼らず生きていく方がじつはまっとうなのでは?

など、
当たり前と思っていたものも、実は当たり前じゃないのかも、という気付きをこの小説は与えてくれました。

そんな気付きが過去にあったので、青野さんの本にある「カイシャというモンスター」のうさんくささ、ものすごく共感でした。
「国」と同じで、必要以上にありがたがったり奴隷的な思考になるのは良くないね。

とかいいつつ、じゃあ今、実際の自分はどうかというと、結局、会社勤めしてるし、独立するほどの勢いもスキルも人脈ももてていない。
会社に依存してる部分は正直ものすごくたくさんあります…(笑)。

ただ、せめて、その自分の依存心には自覚的でありたい。
自覚したうえで、フットワーク軽く、必要なときにためらわずに「辞めます」と言える自分でありたいし、そう言える何かが自分に欲しい。
最悪、そう言える何かがなんもなかったとしても、そう言える気概だけはもっておきたい。

サイボウズというカイシャ

私は入社するずうっと前から、サイボウズファンでした。
発信する情報を逐一チェックしては、前職での仕事の仕方の参考にしていたし、サイボウズが発信する情報にいちいち共感していました。
初期のころは軽いテイストの記事も多くて、それも好きだった。

なので、今、この会社で、たのしく前向きな人たちと、いろんな仕事を楽しくできているのはそれ自体が大きなよろこびだし、報酬だなぁと思っています。
(まぁ、いまは育休中なんだけど。)

もちろん、入社してみて
「思ってたんとちがーう!💢」
というのもめちゃくちゃたくさんあったし、
「あ、そこは実はそんなにできてなかったりするのね…」
みたいな発展途上のところもけっこうありました。

それでも、そういう「思ってたんとちがう」部分を差し引いても、やっぱりこのカイシャはすごい。

サイボウズの風土をかたち作っているいくつかのキーワードがあります。

「多様性」
「質問責任・説明責任」
「公明正大」
「自立」

などがそれですが、これらのキーワードには、ものすごく「チームの本質」が宿っているなぁと最近あらためて思うんです。

勤め人でもありますが、こどもの親でもあるので、小学校や保育園など会社外の世界と接する機会も多々あります。
そういう場所でみる集団の動き方・考え方と、自分の会社の文化の違いは「国が違うのか?」というレベルで違う。

その差を肌で感じれば感じるほど、「公明正大」とか「質問責任」ということばを選択して、文化として定着させてきた経営層の人たちはすごいなぁと思います。

差がありすぎて、ため息がでちゃう…

でも同時に、その文化のギャップがすごすぎて、「差がありすぎて、ため息がでちゃう…」みたいな気持ちにもなるんですよね。

サイボウズはほんとうにおもしろい。
考え方もチームワークも最先端をいっている。
いいサイクルでまわる仕組みが会社に出来上がってるので、どんどん進化するし、変化できる風土がある。
ロジカル一辺倒でもなく、感情面のフォローをする感動課まである。
経営層は、文化を体現していて、言い訳できない環境下に自らを置いて、タフに、誠実にあり続けようとしている。
人として素直に尊敬できる人たちばかり。

そういう、サイボウズみたいな会社やチームが増えれば社会はかなり変わる。

でもさ。
正直、サイボウズはもう先を行きすぎてるなーっても思うんです。
「その頂上も、頂上に続く足元の階段も、こっちの世界からは見えないよ…」っていう…。
自分も以前は外にいた身なので、「遠すぎて諦めしかない」みたいな気持ちも同時にあるんですよね。

なんていうか、サイボウズって、一般企業からすれば、もはや桃源郷なレベル
旧来の組織やチームを変えていくには、もう違いすぎて、変化のきっかけにするには遠すぎるのかもしれないなぁと。 

たとえば「公明正大」。
シンプルに言えば「ウソをつかない」ですが、これを実現するのだって、実はものすごーーく難しい。
「できるだけオープンに、正直にいることが戦略として重要」と伝えたところで、一部の人だけで進めたがる風潮はなかなか変えられないし、オープンにする事への抵抗もものすごく激しい。
まず、9割のリーダーはたぶん「公明正大」って言いたくない。
自分も公明正大でいるのが難しいんだもん(笑)

結局、生き方にも通じるので、「ウソをつかない」とか「正直でいる」って、人としてめちゃくちゃハードルが高い。
「悪口言うなら本人に言え」っていうことなんだけど、表は笑顔で裏で悪口なんて、外の世界にはザラにある。女だけの社会なんて残念だけど半分はそんな感じ。
その集団で「公明正大」とか叫んでも、
「は?」
とか言われて終わり。
裏でボロクソよ(笑)

チームを機能するように変えるのは超難しい

変化できない組織を観察していると、結局は人(特にリーダーなど権力をもつ人)の心のあり方が根底にあるなぁと感じます。

うまくいかない組織は、「恐怖心」が強い。
それは、メンバーそれぞれがもつ恐怖心もあるし、リーダー自身の恐怖心の場合もある。
リーダーの恐怖心が強いほうが、より強権的で、管理主義的な傾向になることが多い。

「ほんとうのことをいって無能と思われるのか怖い」
「かげでどう思われているのか知るのが怖い」
「質問されてこたえられないのが怖い」
「何かをして失敗するのが怖い」
「責任をとらされるのが怖い」
そういう恐怖心が、高圧的な言い方を生むし、変化を拒む発想につながる。

たぶん、それぞれの人たちの恐怖心を取り除くような、ハートをあっためるような試みをしていかないと、固まってしまったチームを溶かして、機能するように変化していくことは難しいのだと思う。
それには理論で説いていくのではなく、あったかい感情面で寄り添うようなつながりが必要だし、そういう人がチームのメンバーに増えていかないと機能するチームに変えるのはうまくいかないだろうなぁ。

私は、あまり機能していなかったチームが、機能するチームに変わっていくのを、なかの人として見てきたことがある。
どうすればチームが機能するか、うまくいくための正解も、サイボウズにいるおかげでなんとなくわかる。

でも。
正解がわかっていても。
目の前のチームを変えるのって、立場が下だとほんとうにほんとうにほんとうに難しいし、必要になるパワーが尋常じゃない。

強権的な人は、基本的に関係性も思考も縦社会ベースなので、「何を言うか」より「誰が言うか」。
自分が上だとみなしている立場の人の意見じゃないとなかなか聞こうとしない。

残念だけど性別も大事。
「女性には強気だけど、男性には弱い」というのは、ほんとうによくある。
男性が女性の意見を軽視するだけではない。
女性も同じ。
女性が発言したら通らないけど、男性が同じことを言うと受け入れられる、ということはよくある。
女の園のPTA組織も会長は男性、ってのが、もうその事実を物語っている(笑)

そういうなかで、機能するチームに変えるには必要になる熱量がはんぱないんだよね。。。

今のサイボウズは、入社の時点で「公明正大」とか「質問責任」とか「チームワーク」とか、理念に共感した人を集められてる。
だから、スタートの時点で「正直で知的でチームワーク意識の高い人」が圧倒的に多い。
そのぶん、風土も浸透しやすいし、議論もできるし、ウソが少ないという安心感が最初からある。
多様性をうたっているけど「公明正大」「チームワーク」でフィルタリングしてるのは紛れもない事実で、そこが他とは圧倒的に違うアドバンテージになっている。
「人はそもそも多様」だから、フィルタリングしても多様であることに変わりはない。
でも、そのフィルタリングが効果的すぎて、
「ほんとうにここは多様なのかな?」
と思うときも正直ある。

もちろん、その環境は、青野さんや山田さんをはじめとした古くからいる人たちが試行錯誤しながら頑張って作り上げてきた成果なんだけど、ほんとうに難しいのは、今、公明正大さのない環境や、質問できない風土のチームを変えていくほうなんだよね。

そういう意味で、今苦しんでいるチームに寄り添うために、サイボウズがもっともっと可視化していくべきなのは、成功している(ようにみえる)「今」ではなくて、むしろ試行錯誤しているぐっちゃぐっちゃの部分の方なのかもしれない。
いろんなところで、それもアピールしてるけど、やっぱり結局キラキラに見えちゃうもんなぁ…。
ドロドロの部分をこれでもか!というほど見せつけたほうが、共感をよんで心に響きそう。

変わらないチームは淘汰されていくだけだから、それを待つでもいいんだけど、それには時間がかかりすぎるし、やっぱり今いる場所を変えていきたい、という思いは多くの人にあると思う。
少なくとも私は、ジプシーのように渡り歩くのではなく、今いる場所も、できるだけ気持ちよい環境になるようにしてみたい。
(まぁそれに向かう熱量はいつも中途半端ではあるんだけど…。)

みんながみんな、青野さんや山田さんみたいに優れた発信力をもっているリーダーではないし、人格者でもない。
そういう、いわゆる普通のよくあるチームにも効果的に効く、超強力なメソッドみたいなのを作って展開していけたらおもしろいよなぁ…。

読んだ本の話じゃなくなってしまった…(笑)
そして、けっこうセキララに語ってしまったので、大丈夫かどうか若干ドキドキ…。

こういうネタは、考えがとまらなくなりますね。
ちきりんさんが以前
「読んだあと思考がとまらないのが良書」
といっていたので、そういう意味でぐるぐる考えさせてくれたこの本は超良書!!
社長、さすがっす!!!

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