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【読書感想】「去年の冬、きみと別れ」 中村文則

読了日:2018/9/11

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この本の概要

女性2人を焼死させた犯人として逮捕されたカメラマン・木原坂と、この事件の真相を記事にしようと試みる「僕」。
関係者に取材していくなかで、見えてきた真実は…。

私にとっては久しぶりのミステリー小説。

中村文則さんの作品を初めて読みました。
ピースの又吉が「読書芸人」で絶賛していたし、気になってはいたのですが、なんとなくここ数年、ミステリー小説に手がのびず。
今回は、映画で話題になり、表紙カバーのがんちゃんに見つめられて、つい手に取ってしまった次第です。

200ページ以下なので、小説としては短い部類ですが、久しぶりのミステリーで、なおかつ書き手や視点がこまめにかわるので、読むのに時間がかかりました。

特に「きみは誰だ」まで読んでからは、
「?????」状態。
前に戻って読みなおしたり、状況整理で色々メモしてみたりで、ミステリーをしっかり堪能することができました。

私の場合、ミステリーを読んでいても、複雑な描写やトリックを解決しようと試みることは滅多にしません。謎解きは流れにまかせて、ゴールまで突き進むことがほとんど…。
ですので、そんな私に、読み返させたり、メモをとらせたり、ミステリーらしい読み方をさせたということが本当にすごい!!
読み終わったあとも思わず、
「おおおおお」
とうなりましたよ。

殺人事件モノなので、明るい内容ではないですが、そのミステリーや描写のすばらしさもあって、読後感は悪くないです。
映画では、主人公ががんちゃんで、木原坂が斉藤工というのを知っていたので、読んでいるあいだ、脳内は斉藤工とがんちゃん祭り。
脳内イケメンパラダイスでした。

狂気

犯人の木原坂をはじめとして、作中に出てくる人たちの多くが狂気を抱えています。
どこか破綻している。

今のところ、私は自分のなかの「狂気」と呼べるものを見たことはありませんが、そんな私もなにかの拍子に「狂気」に支配されてしまうことがあるのかもしれません。

それは、社会的には間違いなくアウトなのでしょうが、他人の目や社会の呪縛みたいなものから解放された世界でもあって、けっこう気持ちいいのかもしれない、と、ぼんやり思います。

「狂気」は、きっと誰の心の中にもあるのだと思う。
それを一生封印していける場合もあるし、なにかの拍子に封印がはずれちゃうこともある。
こわいな。


振り切ったあちらの世界は、もしかしたら気持ちいいのかもしれないけれども、やっぱり今の私は普通がいちばん。
自分も、自分を取り巻く人たちも、「狂気」に支配されず、普通で当たり前の毎日ができるだけ長く続いてほしいなぁと改めて思いました。

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