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【読書感想】千葉ジェッツの奇跡 Bリーグ集客ナンバー1の秘密 島田慎二

読了日:2017/11/23

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経営不振からBリーグ集客ナンバー1のクラブになった千葉ジェッツの秘密 

今、バスケットボールのBリーグが熱い。中でも、初めて年間観客動員数13万5000人を突破し、1試合7327人という最多動員数を誇るのが千葉ジェッツだ。5年半前、経営不振のクラブ立て直しのため社長に就任したのが、コンサルタントの立場でかかわっていた島田慎二。つぶすか、つぶさないかという瀬戸際を、これまでの会社経営のノウハウを活かし切り抜ける。そして、社長に就任するとすぐに経営強化のための再建計画を策定し、稼げる体制づくりに取り組む。スポンサー探しに奔走し、経営基盤を確かなものにしたあと、ブースター(ファン)をさらに獲得するため、地域密着型のクラブづくりに着手。イベントやお祭りなどに選手やスタッフが参加し、年間150~200回もの地域貢献活動で固定ファンを増やしていった。そして、実力も人気も高い富樫勇樹選手や外国人選手を戦略的に補強し、2017年1月の天皇杯で初優勝を飾る。卓越した手腕で経営を刷新し、人気・実力ともにBリーグトップチームに押し上げた島田流マネジメント術と、千葉ジェッツの変革の軌跡がギュッと詰まった1冊。 
(Amazonの作品紹介より引用)

千葉ジェッツと島田社長

千葉には「千葉ジェッツ」というプロバスケットボールチームがあります。
千葉県内では数年前から「千葉ジェッツを応援しています」というポスターや、「千葉JETS」と装飾された駅の階段、自販機を頻繁に目にするようになりました。
今までは
「へ~、そういうバスケットのチームがあるんだー」
程度で、まったく興味なかったんですが、息子がミニバスを始めたことで、自然と千葉ジェッツにも興味が出てきまして、ジェッツの試合を見に行ったワケです。

そしたら、超楽しい!!

体育館スポーツだから2階席でも選手が近いし、
試合前の選手紹介もド派手でかっこいいし、
試合中も応援コールとか音楽とかガンガンでルールをしらない初心者も盛り上がれるし、
プロのすごいプレーも見れる。
「子供たちは退屈するかな?」
と心配してましたが、親子でめちゃくちゃ楽しんで観戦できました。

ジェッツ情報を入手していくと、どうやらBリーグ(プロバスケリーグ)で一番集客が多いチームということがわかりました。
すっかりジェッツファンになった私はその人気の秘密を知りたくなり、ジェッツ人気の立役者である島田さんの本を購入するに至ったワケです。

著者の島田さんは、元々は旅行会社の経営をしていた人で、バスケには縁もゆかりもない人です。
経営難のチームをなんとかしたかった千葉ジェッツのオーナーが、知り合いの島田さんに「ちょっとだけコンサルしてくれない?」と頼んだことがはじまり。
経営についてダメ出しやアドバイスしていくうちに、どんどん抜けられない&なんとかしたくなって、結局、社長になって本格的に経営再建することになる、という流れです。

日本バスケ界の問題

バスケ界はずっと色々問題をかかえていました。
私もこれを読んでやっとちゃんと理解しました。
ざっくりとまとめてみます。

1) bjリーグの発足とクラブ設立ルール問題
「日本のバスケ界にもプロバスケチームを作って盛り上げよう!」という熱いバスケ好きであれば、割と簡単にクラブオーナーになれたので、経営手腕のない人がクラブチームを設立することが多かった。
(入会金2000万円でオーナーになれるので、そこまで簡単でもないけど、他のスポーツと比べるととても安い)
結果、夢はあるけどクラブ経営できないところがほとんどだった。

2) リーグが2つある問題
企業クラブが参加するJBL(日本バスケットボールリーグ)と、プロリーグと称するbjリーグがあったが、両リーグ間で交流はなかった。
bjリーグチームは経営下手ばかりで金がないので、いい選手はアマチュアのJBLに所属。日本バスケのメインはJBLだった。

3) FIBA(国際バスケットボール連盟)からの警告とNBL(ナショナルバスケットボールリーグ)発足→でも失敗
「国内にリーグが2つもあるのはよくないからなんとかしろ」と言われて統一しようとNBLを発足。
JBLチームはそこに組み込まれたけど、bjリーグチームはそこに組せず、結局分裂したままだった。
(「企業下のクラブでは自分たちの描くプロリーグが実現できない」という思いからbjリーグができた経緯があるので、素直に「加入しまーす」とはならなかったらしい。)

4) FIBAからのガチの警告→Bリーグ発足で2015年にやっと統一
「これ以上リーグ2つのままだとオリンピックも国際大会も日本は出場させないよ」と言われ、焦って、Jリーグを作った川渕三郎さんにお願い。
川渕さんがそれぞれのリーグの間に入ってやっと統一!!

という流れです。

変化を起こすために必要なこと

千葉ジェッツもそうだし、バスケのリーグ問題もそうだけど、組織の問題を何とかしたいとき、当人たちだけでなんとかするのはかなり難しくて、外部から別の視点をもった人を投入しないと変化を促すことは難しいんだな、と思いました。

エニアグラムの本でも、変化を起こすには自分とは違う思考タイプとの関わりが必要というようなことが書いてたけど、組織も同じ。だからコンサル的な職業が存在してるんでしょう。

コンサルに頼むほどじゃなくても、人が出入りするとそのなかでどんどん化学変化が起きて、組織が変わるっていうのを、今、自分がいる組織のなかで感じてます。
人と仕事は常に流動化させてないといけないんだな、と改めて思いました。
余裕がなくて採用できないなら、組織内、部署内でジョブローテするとかしていけばいいんだと思います。
組織と仕事の固定化は、楽ではあるけど衰退しかうまないと思う。私の実感として。

経営の難しさ

この本を読んで、経営の難しさをすごく感じました。

経営にも状況や企業のフェーズに応じて優先することと切り捨てることがあって、そこを見誤るとうまくいかなくなってしまうんですね。

目標のためには何が何でもお金を集め、その後の活動につなげていかなくてはならない。それを実行するのが経営者の役目であり、夢を語るのはずっとあとでいい。経営者はこのことを自覚すべきなのだ。いくら調子のいいことを言ってみても、それが一銭にもならないのでは意味がない。

夢だけ語っていても資金繰りはできないので現実を見据えることを優先しなければいけない時期はある。
かといってそのままでいいかというとそれも違う。経営のフェーズが変わったことに気付かず金勘定だけに終始し続けると、今度は働いてる人たちが疲弊して楽しくなくってしまう。
そういうのを見極めて、取捨選択して、社員に説明して、納得してもらうのって大変すぎる。
経営者ってすごいなぁ。
熱量がすごい。

組織の経営理念

私が今の会社に転職した理由は、「世界中のチームワークに貢献する」という理念がすごくわかりやすくて、すごく共感できたから。
今の会社の理念もすごく好きだけど、千葉ジェッツの経営理念もすごくいいんです。

ジェッツの理念は
「千葉ジェッツを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」
取り巻く全ての人には、ジェッツで働く人とその家族、選手、観客などすべて含まれます。

いい理念。すごくいい理念。
「みんなをハッピー」っていうのが最高にいい。

また、ジェッツでは、チームが目指すバスケスタイルも「アグレッシブなディフェンスから走る」というように明確に定義されています。
こういう理念のもと、すべてを動かすようにした結果、経営やチーム状況も上向きになってきたそうです。
改めて、経営理念ってすごくすごく大事なものなんだなぁ。

ワタクシ的名言

ジェッツの活動理念のトップにくるのは、「千葉ジェッツを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」というフレーズだ。ここでいう「ハッピー」には、スタッフの労働時間を短くし、その一方で給与水準を上げていき、家族全員が「ハッピーになる」という意味も含まれる。

ムダな時間を極力排除するため、20分以上の会議は禁止、就業時間中は喫煙もダメなんだって!!

厳しい!!

だけど、利益率は確かにうなぎのぼり。
家族の側としてもこういう経営者はありがたい。

経営は本当に難しい。雲をつかむようなものであり、常にままならない。ツイッターなどでもよくつぶやくのだが、「経営」と「子育て」と「部下を持つこと」は、人間を成長させる三大要素だと私はいつも思っている。その理由は、これらがすべて「ままならないもの」だからだ。

もう、この一文は私のなかで一番しびれました。
この前読んだ「仕事と家庭は両立できない」にも、今の社会は「競争」優位で、「ケア(育児、介護、教育)」の地位が低いのが現状、と書かれていました。
でも、この人の語る成長要素のうち、「子育て」と「部下を持つこと」は、「ケア」の領域。
これまでの企業戦士たちは、自身の成長要素である「育児」は女性に丸投げし、「部下の育成」についてもノウハウなく俺流でやり、「経営」にもほとんどの会社員が関与できず、自身の成長要素をおざなりに扱ってしまっていたんですね。
あぁもったいない。

この人の言う通り、育児、教育、人材育成から学べることって、仕事にめちゃくちゃ役立つんですよね。
もちろん、育児や教育だけがずば抜けてすごいと言うつもりはありません。普通に仕事するのもすごいこと。ただ、少なくとも等価値ではあるし、キャリアのハンデになるものとは到底思えない。
だから男も女も、育児してるキャリアと育児しないで働き続けてるキャリアを同等に扱ってほしい。種類が違うけどどっちもすごく大切だし、ムダなことなんて少しもない。
経営者にこういう言葉を言ってもらえるのは救われるなぁ。

バスケ好き、ジェッツ好き、経営本好きにはすごく面白い内容だと思います。
あと、ジェッツはSNSとかYouTubeでの広報活動がすごく上手!
YouTubeのJETSチャンネルというのがすごく面白いです。
ぜひぜひチェックしてみてください!!

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