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【読書感想】「八朔の雪」~「夏天の虹」みをつくし料理帖シリーズ 高田郁

読了日:2012/9/7

時は江戸。
主人公はさがり眉が特徴の娘、澪。
生まれは大坂だが、諸々の不幸が続き、訳あって江戸の長屋で 暮らしながら神田お台所町の蕎麦処「つる屋」で奉公人として働いている。
料理が好きで、大坂で奉公していた店の主からも、その腕を期待されていた澪だが、 大坂と江戸の食文化の違いに戸惑い、苦悩する日々。
優しいつる屋の旦那種市や、大坂時代の店の女将であるお芳、 長屋のおりょう家族などなどとふれあいながら、 澪は少しずつその腕を磨いてゆく。

私好み。
超面白い。
出てる分全部買ってソッコーで読んじゃった。

時代物が好きな理由って人それぞれだと思うけど、私がハマる時代物シリーズはだいたい共通している。
・『庶民(長屋の暮らしがベスト)の、貧しいけど、
明るくて近所とワイワイやってる描写がある』
・『うまくいくこともうまくいかないことも両方しっかりある』
・『ご飯の描写がうまそう』
・『主人公は基本的にいい人で、周りもいい人』
・『身分が違う恋愛』

大好きな居眠り磐音シリーズも、みをつくし料理帖シリーズも、御宿かわせみシリーズも、これら要素を満たしている。

みをつくし料理帖シリーズは、時代物に珍しく、捕物もないし、 武士がやりあうことも全然ない。
澪という娘が、困難を乗り越えたり、時にやられたりしながら、 ひたすら料理の道を歩むだけ。
でもすごく面白い。

全部で7冊出ていて、まだシリーズは終わってない。(2012年の時点では未完ですが、2017年現在は完結してます。)
このシリーズ、1冊につき、1回はうるうるする。
特に、同じ長屋のおりょう家族の話、幼なじみの野江ちゃんの話、 又次の話などはヤバい。
また、この感動も、泣きすぎず、ほっこりする感じなのがちょうどよい。

この小説、ワタシ的には小説でありレシピ本であり、料理啓発本にもなっている。
読んでると食べてみたくなるし、作りたくなるし、
ご飯のありがたみをホントにひしひしと感じる。
嬉しいことに巻末に小説にでてきたレシピの一部が紹介されてて、 さらにはレシピ本もでている。

時代物が好きなら是非読んでみてほしいシリーズ。
時代物読んだことない人も読みやすいのでおすすめ。
心が洗われる。

ワタクシ的名言集

「口から摂るものだけが、人の身体を作るのです。」
(「八朔の雪」源斉)
「世の中には、色んな人が居てはる。
他人を傷つけることに躊躇いのない者、身勝手な理由で恨む者・・ 。
お前はんが登龍楼でえらい目ぇに遭わされた末松がそれや。 けれど、大方のひとはそうやない。互いを思い、助け合い、 風通しよう生きたいと願うてる。
それでも、心ならず誰かに憎しみを抱くこともある。
殺めてやりたい、と思うほどの憎しみの裏には、 他人には言えん、はかり知れん苦しみがあるはずなんやで。」
(「小夜しぐれ」お芳 )
「信じて寄り添ってくれる誰かが居れば、
そいつのために幾らでも生き直せる。ひとってのは、そうしたもんだ。」
(「小夜しぐれ」種市)
「天賦の才はなくとも、そうした努力を続ける料理人こそが、 真の料理人だとあたしゃ思いますよ。」
(「想い雲」りう)
「受ける側が聞く耳を持っているのは、忠告した側にとっても幸せなことです。」
(「夏天の虹」坂村堂 )

他にもたくさん名言ありますが書ききれない。

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