見出し画像

【読書感想】「たった1分で相手をやる気にさせる話術 PEP TALK」  浦上大輔

読了日:2017/10/12

Amazonで購入する

受容(事実の受け入れ)、承認(とらえかた変換)、行動(してほしい変換)、激励(背中のひと押し)。4つの要素を組み立てるだけ!アメリカで生まれた「不安や緊張」を消し、やる気に変えさせる話し方。相手の心の状態を論理的に分析したトーク術。
「BOOK」データベースより

この本の概要

PEP TALK(ペップトーク)というワード、この本で初めて知りました。
洋画の緊迫した場面で、リーダーや監督やコーチが、メンバーの士気をあげるセリフをいうことがよくありますが、PEP TALKってのはまさにソレです。
「ここ大事!!」という場面で、相手のパフォーマンスを最大限に引き出すための言葉かけにはルールがあり、スポーツ大国アメリカでは、そういうルールもちゃんと分析してるんですって。
さすがだね、アメリカ。

息子のミニバスチーム

上の子がミニバスを始めたんですが、チームがあまり強くないんですよね。高学年たちもいまいち弱気。。。
個々のポテンシャルは悪くないと思うんだけど、負け癖がついていて、マインドの時点で負けている…。

私も運動神経抜群というわけでもなかったし、部活で強豪チームにいたこともないので、彼らが弱気になる気持ちはとてもよくわかります。「実際相手が強いし勝てないじゃん、どうせ…」みたいな。。。

でも、やっぱりそこでヒヨってたらずっと勝てないし、試合で負けてばっかりだとモチベーションも下がるので、なんとかこう勝てるようにしたいな~と思って、この本を手にとってみました。

ペップトークの基本

まず基本事項として、ペップトークには5つのルールがあります。

ペップトークのルール
1.ポジティブな言葉を使う
2.短い言葉を使う
3.わかりやすい言葉を使う
4.相手が一番言ってほしい言葉を使う
5.相手の心に火をつける本気の関わり

さらに、ペップトークには4つのステップがあります。基本、この4つのステップに沿って、話す内容を考えればOK!
(箇条書きは、細かい種類の違いです。状況に応じて使い分けます)

〈ペップトーク 4つのステップ〉
1.受容(事実の受け入れ)
 ・感情受容
   相手の感情を受け入れる
 ・状況受容
   相手の置かれている状況を受け入れる

2.承認(とらえ方変換)
 ・逆転の発想承認
   コインに裏表があるように言葉を換える
 ・あるもの承認
   持ってるものに目をむけさせる

3.行動(してほしい変換)
 ・ネガポジ変換
   ネガティブな単語は使わない
 ・アクション変換
   「結果」ではなく「行動」を
   イメージさせる表現を使う

4.激励(背中のひと押し)
   ・激励系
     気合いを与える
   ・見守り系
     安心感を与える

例文を考えてみました。
「今日の相手は強い。今まで勝ったことがない相手だし、不安になる気持ちもあると思う。(受容)
でも思い出してほしい、今日までの練習を。私たちは心技体、すべてにおいてできる限りのトレーニングをしてきた。(承認)
特別なことはしなくていい。いつも通り、大きな声を出して、全力で走って、高く飛ぶだけでいい。(行動)
今日は思い切り楽しんでこいっ!(激励)」
みたいな感じ。

「受容」と「行動」を意識する

ペップトークは、スポーツだけじゃなく仕事でも子育てでもどこでも活用できるものだと思います。
仕事のリーダーも親も、ペップトークの技術は持っておいて損はないです。

自分のなかで、特に意識づけたいのは、「受容」と「行動」だな、と読んで思いました。
やる気を削ぐ言い方とか、相手に届かない言い方には共通点があって、たぶん先を急ぐあまり一番最初の「受容」がないんだと思います。
特に日本人は全体的に、高倉健文化(「自分、不器用ですから…」を美徳とする文化)なので、相手を受け止めたり、共感をしめす部分を端折って黙ってしまってることが多いと思うんです。

でも、それだと、「共感してもらえてない相手に何言われても…」という状態になってしまい、伝えたいことが相手の脳に入らなくなってしまいます。
自分の言葉を相手に確実に届けるためのステップとして、「受容」は絶対に外しちゃいけないし、一番大事なんじゃないかな、と思いました。

あと、もうひとつの「行動」について。
「ネガポジ変換」の説明で出てきたんだけど、例えば「ミスするな」という言い方は、「ミス」というキーワード自体に「失敗してる姿」を連想させるので、言葉かけとしては逆効果だそうです。人の脳は、常に文脈を適切に正確にとらえるワケではなく、イメージでとらえてることが多いんだそうです。なので、ワード自体にネガティブなイメージがあるものは表現として避けたほうがいいらしい。

冷静に考えれば「そりゃそうだなー」とは思うけど、実際の場面では、けっこう使っちゃいますよね、こういうネガティブ表現。
ミニバスの試合で、いろんなコーチの表現を見てても、ネガティブワード使う場面は多いです。
「行動」にフォーカスして、動き方をイメージできる具体的かつポジティブな表現、身に着けたい。
そして、どんな時でもそれが出せるようになりたい。

仕事をしていると、相手を巻き込んで一緒に何かを成し遂げる力は絶対に必要なので、巻き込み力を高めて、周囲を盛り上げていくのにとても役立つ本だなぁと思います。
私も息子たちやミニバスの高学年たちを実験台にさっそく色々試してみよう!!

ワタクシ的名文

人のやる気に火がつくのにはメカニズムがあります。
それは「自分には価値がある」と感じた時です。自分に価値を感じるときは大きくわけると2つあります。
・承認欲求(人に認められたいという欲求)が満たされたとき
・貢献欲求(人の役に立ちたいという欲求)が満たされたとき

貢献欲求は、アドラー心理学でも述べられていました。
いろんな本を読んできたけど、人の意志や行動の根本部分はシンプルで、どの本でも共通しているなぁと改めて感じます。

人はある行動を指摘されると、意識がそこにいき、その行動が増えるという特徴があります。
たとえば、「遅刻ばっかりして」「またゲームしている」など、ふえてほしくない行動を指摘するよりも、頻度は少ないかもしれませんが、「早起きできたね」「熱心に勉強してるね」など増えてほしい行動を承認するほうが人のやる気を引き出しやすいのです。
また、増えてほしい行動を承認することで、自分が頑張ってることをちゃんと見てくれている、気にしてくれているという気持ちが相手に生まれるので信頼関係の構築にもつながります

子育て現場で、この言葉がけを意識した場合、「増えてほしい行動の承認7~8割、増えてほしくない行動の指摘2~3割」くらいが現実的な割合なのかなぁ…。

実際、ホントにそのとおりなんですよね。
片付けスキルが低い我が家ですが、下の子が片付けしてくれたときに「わーー、助かるーー!ありがとう!」と言っていたら、意識して片付けをしてくれるようになりました。
「片付けろ」はダメなんですよ。言われてやるだけだから、全然スキルが育たない。
いい状況がくるのをじっと待つことをどこまで親が作れるかがポイントです。(これが実際、難しい。待てないんですよ、そんなに。)

1つは、私たちが親や指導者から言われたきた言葉が否定的な表現が多かったからです。すべての親、指導者がそうであるわけではありませんが、私たちが使う言葉は育った環境に影響を受けやすいからです。
もう1つは、相手を甘やかしたら調子に乗るのではと考えるからです。否定的な表現でビシッとしめることに価値を感じているのもあるかもしれません。
肯定的な表現を使うことと甘やかすことの本質的な違いを知ることが必要になってきます。

応援してるのに表現が否定的になってしまうのは、なぜかという話で。
「私の時代がそうだったから」っていうのがほとんどだと思います。「自分がやられたことを自分もやる」という考え方。

これ、ほんと多い。
ほんっとにほんとに多い。(←2回言う) 

私、「前からこうだったから。」とか「自分のときはこうやって指導されたから」っていう考えが昔からすごく嫌いで…。
私は、経験したことそのまま垂れ流すんじゃなく、一回自分の中で、その指導や表現が合理的なものかを考えなおせる人間でありたいし、そういう人が増えてほしいと切に願っています。

多くの人がこれをできるようになれば、よくわからない謎の慣習や、ムダなマナーを減らして、もうちょっと生きやすい世の中になるんじゃないかしら。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?