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【読書感想】「研ぎ師太吉」山本一力

読了日:2012/12/11

包丁研ぎの太吉は無口で腕の良い職人。
ある日、彼の長屋にかおりと名乗る若い女が訪ねてくる。聞けば殺された父の肩身である包丁を研いでほしいとのこと。太吉はその依頼を受ける。
その数日後、今度は太吉のもとに岡っ引きが現れ、彼を番屋に連れて行く。太吉は番屋で同心の堀部から、かおりが人殺しの疑惑をかけられ捕まったと聞かされる。
かおりの無実を感じた太吉は、7日間という期限のなか彼女の疑惑を晴らすために奔走する。

時代物ならではの空気感とか人柄とか、読んでて気持ちよかった。

研ぎ師太吉は無口で、非常に腕の立つ研ぎ職人。
彼に研ぎを頼む料理屋も多く、さらに一流の刀鍛冶職人にも信頼されている。
彼の知り合いはみな気合いの入った職人で気持ちがよい人々。

彼が「行きがかり」+「縁」を感じてかおりを救うために奔走する際にも、この知り合いたちが協力してくれる。
みな自分のシゴトにプライドを持っていて、さらに人を見る目もあり、太吉の実直かつ誠実な人柄を見抜く。
太吉もまた、相手の様子・しぐさ・言動からその人の人柄を見抜き、それぞれにあった対応をしていく。

太吉さん、無口ではあるけど超空気読むオトコ。
それぞれへの配慮もあってさらにその配慮が適切。
小説のなかでもモテモテなんだけど、現実にいてもモテるだろうな、こういう人は。

私が読む時代物の多くは、犯人捜しで動きまわるのは同心を中心とした武士階級が多いけど、これは珍しく町人が犯人捜しをするっていうタイプ。
なかなか新鮮だった。

山本一力は初めて読んだけど、この人もまた良い。

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