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[report]『花・flower・華 2024』山種美術館

※タイトル画像:奥村土牛《醍醐》(部分)


開催情報

『【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―』
場所:山種美術館(東京都渋谷区)
開催日:2024.3.9.sat-5.6.mon
入館料:1400円(一般)
 ぐるっとパスで一般200円割引
 着物で来館で一般200円割引
 [春の学割] 大学生・高校生500円

内容:山種美術館所蔵の花の名画(主に日本画)を一堂に展示
 奥村土牛《醍醐》、福田平八郎《牡丹》、梅原龍三郎《薔薇と蜜柑》など

※奥村土牛《醍醐》のみ写真撮影可(スマホのみ)

主な登場人物(生年順)

  • 山本梅逸ばいいつ(1783-1856)
    文人画家。中林竹洞とコレクター神谷天遊に学ぶ。文人画+南蘋派、円山四条派

  • 橋本雅邦がほう(1835-1908)
    日本画家。狩野雅信に師事。同門に狩野芳崖。
    →岡倉天心、横山大観、下山観山

  • 渡辺省亭せいてい(1851-1918)
    日本画家。

  • 竹内栖鳳せいほう(1864-1942)
    日本画家。幸野楳嶺ばいれいに師事。
    「動物を描けばその体臭までも表す」

  • 田能村たのむら直入ちょくにゅう(1864-1907)
    富岡鉄斎とともに明治期を代表する南画家。

  • 菊池芳文ほうぶん(1864-1942)
    日本画家。

  • 横山大観(1868-1958)
    日本画家。岡倉天心の門下。

  • 荒木十畝じっぽ(1872-1944)
    日本画家。

  • 菱田春草しゅんそう(1874-1911)
    日本画家。岡倉天心の門下。

  • 結城素明そめい(1875-1957)
    日本画家。

  • 木村武山ぶざん(1876-1942)
    日本画家。横山大観、下村観山、菱田春草とともに岡倉天心の元で日本画の近代化に努めた。

  • 松岡映丘えいきゅう(1881-1938)
    日本画家。

  • 小林古径こけい(1883-1957)
    日本画家。

  • 安田靫彦(1884-1978)
    日本画家。「山種美術館」のロゴを揮毫きごう

  • 前田青邨せいそん(1885-1977)
    日本画家。

  • 川端龍子りゅうし(1885-1966)
    日本画家。

  • 梅原龍三郎(1888-1986)
    洋画家。浅井忠の指導を受けたのち、ルノワールに師事。

  • 奥村土牛とぎゅう(1889-1990)
    日本画家。名前は寒山詩「土牛石田を耕す」より。

  • 小茂田おもだ青樹せいじゅ(1891-1993)
    日本画家。「詩情の画家」。速水御舟のライバル。今村紫紅「赤曜会」に参加。

  • 小林古径こけい(1891-1990)
    日本画家。

  • 福田平八郎(1892-1974)
    日本画家。

  • 山崎種二(1893-1983)
    実業家。山種証券(現SMBC日興証券)創業者。山種美術館創立者。
    「絵は人柄である」が信念。奥村土牛を支援。

  • 山口蓬春ほうしゅん(1893-1971)
    日本画家。

  • 中川一政(1893-1991)
    画家。独力で絵を学ぶ。1915岸田劉生に見出される。春陽会客員。

  • 速水御舟ぎょしゅう(1894-1935)
    日本画家。松本楓湖の画塾に入門。今村紫紅の弟弟子。

  • 小倉遊亀ゆき(1895-2000)
    日本画家。安田靫彦に師事。女性初の日本美術院理事長。

  • 伊東深水(1898-1972)
    浮世絵師。日本画家。

  • 森田沙伊さい(1898-1993)
    日本画家。川合玉堂、結城素明に師事。小林古径に影響を受ける。

  • 上村松篁しょうこう(1902-2001)
    日本画家。母は上村松園。

  • 杉山やすし(1909-1993)
    日本画家。

  • 守屋多々志(1912-2003)
    日本画家。

  • 稗田一穂(1920-2021)
    日本画家。

  • 山崎富治(1925-2014)
    山種美術館二代目館長。旧安宅コレクションの御舟作品を一括購入。

  • 千住博(1958-)
    日本画家。

  • 長谷川雅也(1974-)
    画家。《唯(ただ)》「Seed 山種美術館 日本画アワード 2016」優秀賞受賞

  • 重政周平(1987-)
    画家。《素心蠟梅》「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024」優秀賞受賞

  • 山崎妙子(?)
    山種美術館三代目館長(2007-)

単語

  • 【春陽会】1922年創立。洋画団体の一般社団法人。https://shunyo-kai.or.jp

  • 【Seed 山種美術館 日本画アワード】山種美術館の公募展。2016年第一回。3年毎の実施を目標。第二回2019年。コロナ禍の影響で第三回は2024年。

章構成覚書

  1. 第1章 百花繚乱ー花の絵画ー
    春爛漫(11点)
    …桜(8)、木蓮(1)、チューリップ(1)、山吹(1)
     3.横山大観《春朝》
      山桜×太陽
      本居宣長「しきしまの大和心を人とはば朝日に匂う山桜花」
     5.奥村土牛《醍醐》(写真撮影OK)
     京都・醍醐寺の「太閤しだれ桜」、重ね塗り
     6.小茂田青樹《春庭》
      今村紫紅で南画風→今村紫紅死後、写実的、装飾的となる転換期
     11. 小倉遊亀《憶昔》
      小林古径の徳利 
    夏の香り(23点)
    …バラ(7)、牡丹(5)、アジサイ(2)、燕子花(1)、花菖蒲(1)、百合(1)、ガーベラ(1)、泰山木(1)、芙蓉(1)、アサガオ(1)、蓮(1)、向日葵(1)
     17.速水御舟《牡丹花(墨牡丹)》
     19.川端龍子《八ツ橋》…尾形光琳《八橋図屏風》の影響
     29.長谷川 雅也《唯(ただ)》「Seed 山種美術館 日本画アワード 2016」
     31.奥村土牛《花》…自宅の庭
    秋の彩り(5点)
    …桔梗(1)、ナデシコ(1)、菊(1)、アスター(1)、他(1)
     39.速水御舟《和蘭陀菊図》…アスター。紫にコバルトを使用。裏彩色。
    冬の華、春の訪れ(9点)
    ..梅(4)、椿(3)、水仙(1)、蝋梅(1)、桃(1)
     42.奥村土牛《早春》…庭の低木八重白椿。毎年は咲かない。
     45.竹内栖鳳《梅園》…銀色の砂子を漉き込んだ銀潜紙。画紙の研究。
     47速水御舟《紅梅・白梅》…山崎種二愛蔵の品
    四季の花々(3点)
    ...椿、アサガオ、菊、水仙、藤?、梅、竜胆?、立葵?、他

  2. 第2章 人と花(6点)
    …桜
     58.守屋多々志《聴花(式子内親王)》
    「はかなくて 過ぎにしかたを かぞふれば 花にもの思ふ 春ぞ経にけり」
     過去の桜→薄墨桜、欝金桜

関連ページ

↓山種美術館 公式note

↓美術手帖 レビュー:文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

↓美術展ナビ レビュー:事業局専門委員 田中聡

感想

山種美術館は初めて行ったのですが、作品の保護ガラスに後ろの照明が映り込むのが気になりました。
特に入ってすぐの絵は、後ろのショップが明るくて、ショップが映り込む。
これだけがちょっと不満でした。

今回写真OKなのは奥村土牛《醍醐》のみです。
せっかくなので上げてみる。

奥村土牛《醍醐》山種美術館
これだとモワッとしてるだけに見えますが…
奥村土牛《醍醐》(部分)山種美術館
近づいて見ると無数の白の重なり
奥村土牛《醍醐》(部分)山種美術館
足元の花びら…拾い集めたくなる
紫がかった石積みも美しい

近くで見れば見るほど楽しくなる、スルメのような味わい。

他、印象に残った作品…
11.小倉遊亀《憶昔》
写真不可なので、山種美術館SNS過去の書き込みリンクしてみます。
実物は背景がもっと暗い燻銀で、白い徳利がほんのり光って浮かび上がるようで、「ああ、小林古径を偲んだ作品なんだな」と感じました。

小倉遊亀《憶昔》(山種美術館蔵)。徳利に添えれられた山吹の花。銀地に花と器との取り合わせを意識した斬新な構図で、気品に満ちた作品です。かつては小林古径もこの徳利に山吹を入れて作画したことがあるそうですよ。(山崎)

Posted by 山種美術館 Yamatane Museum of Art on Thursday, May 16, 2013

7-8.稗田 一穂《朧春》《惜春》
9.千住博《夜桜》
夜の桜は心乱されます。

16.福田平八郎《牡丹》は良かった!
福田平八郎好きなんですが《漣》のようなデザイン的なイメージが強くて、《牡丹》の精密さに驚きました。裏彩色だそう。
サイズも大きくて迫力があります。
…大阪中之島美術館の「福田平八郎展」行きたいなあ…
山種美術館でも今年の秋に「【特別展】没後50年 福田平八郎×琳派(仮称)」があるみたい。これは行く!

17.速水御舟《牡丹花(墨牡丹)》
 黒い牡丹、淡い緑の葉。おしべの金が効いてます。

19.川端龍子《八ツ橋》
 川端龍子のは、実際に庭園で燕子花を見ている感覚に近く思えました。
 先日、泉屋博古館東京で木島櫻谷《燕子花図》観てきたばかりなので、これを観たら根津美術館の尾形光琳(4/13-5/12)も観に行きたくなってしまう。
…3つに囲まれてみたいですが、それは難しいかな〜

31.奥村土牛《花》
 描かれている花が、ものすごく身近で親近感が湧きます。
 この右下の草って、”雑草”としてそこらにいっぱい生えてるやつですよね?
 この草を絵画作品で見たの初めてです。

42.奥村土牛《早春》
 87歳の土牛が庭の椿を描いた作品。
 開花を楽しみにしている土牛が微笑ましい。
 この椿は今はどうなったのだろう?枯れてしまったのかな。

庭に咲いた椿であるが、背の低い珍種である。
好きな花で毎年楽しみにしているが、毎年は咲かない。
この年は珍しく咲いたので随分写生をした。

奥村土牛 1979「文藝春秋」

48.重政周平《素心蠟梅》
 ふと目を外して、アッ!と思いました。
 この作品だけ、保護ガラスと作品の間に隙間があるんです。
 隙間から直接作品が垣間見える。
 そこから見える作品がとても美しくて、ガラス1枚無いだけでこんなに色の奥行きや表面が違って見えるものなのかと思ってしまいました。
…隙間からチラッと見えるだけですけどね。
 でも、帰りの電車で居眠りをした後に、果たして本当に隙間があったのか、自信がなくなってきています。
 あの作品だけ隙間が開いてるなんてことあるのでしょうか。
 私の白昼夢だったんじゃないかって気もしてきています。

おまけ:山種美術館の「太閤千代しだれ」2024

奥村土牛《醍醐》の桜、京都・総本山 醍醐寺の「太閤しだれ桜」を組織培養した桜が山種美術館玄関横に植っています。
この玄関横の桜と今回の展示をセットで観ようと目論んでいたのですが…
  ↓これは去年の様子

2024年4月4日の様子

…青々としてます。
SNSで4月1日に開花と書き込みがあったのですが…

これかな?

今年はあんまり咲かなかったみたいですね。
土牛のように来年咲くのを心待ちにします。

これは美術館近く 恵比寿プライムスクエアの桜

山種美術館:次回予告「犬派?猫派?」5.12-7.7

…私も断然、猫派です
これは行きたい!

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