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[report]『小さな版画のやり取り』


開催情報

開催日:2023.12.16.sat-2024.2.25.sun
場所:茅ヶ崎市美術館(神奈川県茅ヶ崎市)<展示室1>
観覧料:一般400円

内容:手のひらに乗るほどの小さな版画世界
   斎藤昌三コレクションの蔵書票と榛の会の年賀状

主な登場人物

  • 斎藤昌三(1887-1961)
     書物研究家。茅ヶ崎市立図書館初代館長。「書痴」と呼ばれた。

  • 武井武雄(1894-1983)
    童画家。年賀状交換グループ「榛の会」を主催。

  • 佐藤米次郎(1915-2001)
    蔵書票の作成に情熱を傾けた。

単語

  • 【蔵書票】
    書物の見返しに貼る所蔵者の名を示した紙片。「Ex libris」
    15世紀ドイツに誕生。次第に趣向を凝らしたものが作られ「紙の宝石」と呼ばれる。
    日本では1900年、雑誌「明星」に蔵書票4点が紹介され広まった。

  • はんの会】
    武井武雄が主催する自画、自刻、自摺による年賀状交換グループ。
    集まった年賀状は意匠を凝らした装丁でアルバムにした。
    作品の出来が良くないと、次の年は参加できない。
    貰って嬉しいか嬉しくないか、会員同士で投票が行われた。
    1935-1955まで活動。

章構成…覚書を添えて

  1. 第一部 斎藤昌三の蔵書票コレクション(展示室右側)
    入り口脇にさとうよねじろうの「豆本 EX LIBRIS」が展示
    入ってすぐ正面の展示ケース「日本好色蔵書票史」が展示(中は見えない)
    右側壁に蔵書票コレクション
    会場の奥に斎藤昌三の本が展示
    「書痴の散歩」表紙は番傘(本物)を使用、見返しに銀色で雨の模様
    紙魚しみ供養」使用済の郵便封筒で装丁
    「銀魚部隊」表紙に使用済の染色の型紙を使用
    「當世豆本の本」表紙は乾海苔を使用
    「随筆海相模」装丁に風呂敷を使用
    「日本好色燐票史」エロティックな国産マッチのラベルを紹介した本
    「紙魚地獄」特殊香料印刷で、本を開くと線香の香り
    「相模女好色考」本物の蝶を漉いた紙を表紙に使用

  2. 第二部 年賀状交換グループ「榛の会」の年賀状(展示室左側)
    第十二回 丙戌(1946)
    第十三回 丁亥(1947)
    第十四回 戊子(1948)
    第十六回 庚寅(1950)
    第十七回 辛卯(1951)
    中央に「榛の会」のアルバム
    参加者:著名人は、恩地孝四郎、駒井哲郎、棟方志功、関野凖一郎など。

感想

第一部:蔵書票
入り口脇のさとうよねじろうの「豆本 EX LIBRIS」は、手にとって虫眼鏡で見ることができます!めちゃくちゃかわいいです!!
紙の本や年賀状は減少の方向にある昨今ですが、この、手のひらに収まる小さくてほわほわした紙片の醸し出す"愛おしさ"みたいなものはデジタルにはないように思います。
動物園のふれあいコーナーでちっちゃいハムスターを手に乗せた気持ちに似ているような…

入り口正面にデデーンと展示してある桃色表紙も鮮やかな「日本好色蔵書票史」。
エロティックなデザインの蔵書票を紹介した本だそうなのですが、中が見えません。
小さな木版画だし、そんなに18禁ではないのではないかとは思うのですが、見れないと気になります。
ネット検索してみたところ、中も上下にピンクの飾り枠が入って凝ってます。
250部出版されたようで、3万円くらいで入手できるみたいです。
…か…買えないこともないですが…

奥に展示されている斎藤昌三の本、装丁が攻めてて楽しかった!
斎藤昌三濃いッ!良いです、好きです。
使用済封筒で装丁とかツボです。
海苔で装丁ってカビが生えないのか気になります。
本物の蝶を紙に漉き込むのは、ちょっと怖いですね。人皮装丁本を連想してしまいます。
「日本好色燐票史」は、ちょっとだけよ〜ってカンジにチラッと中身が見えます。
…マッチも見なくなりましたね。

第二部:年賀状
個人的には年賀状って少し文章が入っている方が楽しいです。
さとうよねじろうが好みでした。
月岡忍光が「生死悠々」とか「粒々辛苦」とか年賀状にしては内容が重い気がしますが、時代のせいもあるのでしょうか。でも月岡忍光、常連なんですよね。

茅ヶ崎市立美術館について

茅ヶ崎市立美術館

JR茅ヶ崎駅 南口より徒歩8分。
高砂緑地の中にあります。
高砂緑地は、コンパクトな日本庭園(梅の名所)と茶室・書院「松籟庵」、実業家・原安三郎の別荘「松籟荘」跡(建物は老朽化で取り壊された)、平塚らいてうの碑と、小さいながらも見どころギュギュッと詰まってます。

「松籟荘」跡
これしか残っていません

蛇足

斎藤昌三の本を見て、以前、NHKテキストやノートをハードカバー化しようと思いつつ放置していたのを思い出し、ちょっぴりやる気になりました。
かわいい紙が捨てられないのです。
製本できたらいいなー、と思いつつ、思いつつ…貯まっています。

唯一完成したもの
牛タンの包装紙と、魚屋さんの包装紙
中身はNHKテキスト


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