千田つむぎ

19歳 早生まれ 俳優志望 岩手▶️東京        架空の町の話を本当みたいに話すの…

千田つむぎ

19歳 早生まれ 俳優志望 岩手▶️東京        架空の町の話を本当みたいに話すのが好きです

最近の記事

短歌 (春のまいご)

春だから それを理由にすることにためらわないからもう春なんだ 風とワンピース 通りすがりの赤ちゃんと不思議な目の合い方をする 口笛を吹きたいようなくちびるを春の空気がすりぬけていく 身ひとつでことばをさがす旅に出る 迷路のなかで今日の春風 春の女の子春のくちぶえ春のうみ「春の」が形容詞になりかける春

    • 春の食卓

      昨日、テディベアがインフルエンザから戻ってきた。見ない間にちょっと痩せていたけれど、すごく背が高くなっていた。「一皮むけたねえ」と言った丘枝先生、あなたやっぱり変わっているよ。でもわかる、正直わたしにもそう見えた。 夫と朝ごはんを食べようとしたら、電話がかかってきたのでわたしが出た。聞き覚えのない声だった。 「春の七草の選択のことなのだけれど、」 「…え?」 「せりなずな、ごきょうはこべらすすきのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草」 「ああ、七草粥、」 「たんぽぽは入

      • 晴れた雨の日

        駅を歩いている。バスターミナルのベンチの前で弾き語りをしている男の人を通りすぎる。和菓子屋の前でおまんじゅうを食べている小さなおじいさんを通りすぎる。駅にはいろんな人がいて、でも彼らのことを理解するには圧倒的に時間が足りないし、今の私は飽和状態だ。1歩進むごとに、体の細胞が1つずつ無に還っていくような感覚があって、私はそれに気づかないふりをして、平気な顔をしてずんずん歩く。歩いているうちに足元がぬかるんできて、あ、違う、ぬかるんでるんじゃない、これは水だ、ここは海だ、 今海

        • 短歌 (生きる)

          生きてたら傷つかないといけないのだけど死んだら傷つけるのよ 通りすがりの猫がわたしを見ています、だからわたしは今日も生きてます かくれんぼ見つけなくてごめんでもわかってたとは言いたくなかった Wi-Fiが自動接続されたから「わたしはこことも繋がっている」 またあした笑いながらなきながら涼しい夜をひとりあるくよ

        短歌 (春のまいご)

          その日

          その日は雨が降っていた。雨と霧の境目みたいなささやかな雨。みずたまりの表面をうるうるとゆらすくらいの。 私はバス停でバスを待っていて、時刻表の上に貼られた、今月末で廃止されるバス停のリストを眺めていた。聞いたこともないようなバス停ばかりで、出会いもしないまま、静かに止まっていくものがたくさんあるのだと思った。 体を伸ばすと、思いきり膝が鳴った。さびついている、油をさしてあげなくては、と思った。鳴った、と、思った、がどこか似ている気がして(今思うとどうしてそう思ったんだろうね)

          プリキュア、あるいは食パンについて

          小さいころ、1度だけプリキュアのDVDを観たことがある。青色のプリキュアの子が朝ごはんを食べるシーンだけなぜか鮮明に覚えていて、それは、ダイエット中だからと言って(「朝は多めに、昼夜は少なめに」)お母さんの分の食パンまで食べてしまうのだ(「ママの分は?」「ない」)。どうしてそのシーンばかり覚えているのかわからないが、おかしなことだが私にとってプリキュアといえばそれなのだった。 幼稚園でのプリキュアごっこでは、青色のクールなあの子に憧れながら(だってみんなが彼女をやりたがった

          プリキュア、あるいは食パンについて

          春の風が吹いた夜

          はじめてサニーデイ・サービスのライブに行った。 ライブに行くこと自体はじめて、熱狂的に盛り上がるのもあまり得意なタイプではなく、もしかして場違いでは、とちょっとどきどきしていたけれど、安心して好きなように居ていいんだと思える素敵な空間だった。客層も幅広く、半分踊っているような人や、完全に踊っている人や、黙ってまっすぐ見ている人や、目をつむっている人や、いろんな人がいて、それを見ているのも面白かった。同じ歌を好きな人たちが、ただただそれを浴びている時間。みんな幸せそうで、すき間

          春の風が吹いた夜

          ちいさなドラゴンの話

          わたしは絵を描くのがすきな子どもで、絵を描きながらお話をつくるのがすきな子どもだった。絵を描くのとお話をつくるのとそれを口に出すのと、すべて同時進行で、喋りながら絵を描いていた。中でも当時お気に入りだったのが、きのこの家に住む女の子の話だ。彼女は、毒きのこ代表みたいな、赤に白の斑点もようのきのこの家で、ちいさなドラゴンと暮らしている。ドラゴンなんだけど、飛んでるシーンを描いたことは1度もなくて、女の子を乗せて飛んだりもしなくて、むしろ女の子が台車に乗せて散歩に連れていくのだ。

          ちいさなドラゴンの話

          短歌(すきなひと)

          どうしてかわからないけどどうしても会いたいひとのいる日曜日 私には、この一瞬をのがしたらもう会えないってあなた知ってた? 本当は大好きだよと伝えたいキスはありがと「う」の口のまま 冬の日の結露でにじんだその窓に指でハートをいくつも描く 出会うものすべてに君を結びつけ、それができないものを数えた

          短歌(すきなひと)

          短歌(記憶)

          見上げればあの日歩いた橋があるあの夕日あの隣のひとたち 同じおときいて同じ歌うたい一緒にそらをみあげるということ 缶コーヒー飲んでた人のいたあとは白色のそらに薫るコーヒー あの時の瞳の色を忘れないわたしにあなたのなにがわかるの 思い出は忘れた頃にやってくるあなたにわたしのなにがわかるの

          短歌(道すがら)

          国道を挟んで向こうのLAWSONが異世界めいて見えていた夜 もう一度すれ違ったら運がいい何度もこうやってすれ違おうよ 輪郭を共有しながら見失うつららになれずに落ちる雨粒 揺れているビニールテープの向こう側夏のかけらが見えた気がした 夜だって思った光が朝だったつまりこれははじまりだった

          短歌(道すがら)

          短歌(暮らす)

          ぶどうジャム入りの四角いそのパンが想像以上にぶどう味だったこと コンビニのビニール袋をぶらさげてトートバッグのふりをしている 名前だけ知ってた場所で暮らすまでの長いようで短い逡巡 ぼくだけが土の匂いを知っている深くやさしく爪が汚れる ぱっとしない毎日の中を生きているぱっとしないにはっとしながら

          短歌(電車 2)

          駅員の電車遅れの放送が感情的に聞こえたあるひ 不規則にこくこく(刻々)ゆれる夢のたび鉄道沿線かたわらの森 終点に近づくほどに閉じてゆくまぶたの裏に月のでこぼこ ポージングつり革つかむおじさんの破れたビニールからのぞくRed Bul 吐瀉物を浴びて思わず顔しかめ電車の中でむかえる朝日

          短歌(電車)

          家にきて初めてあいつが弾いたのはカンカン鳴ってる踏み切りの音 走り出すダイヤ通りの通学路 線路の向こうに見える霧のまち おにぎりの形にも似たつり革を必死でつかむ少年がいる やさしげに降車ボタンを押している電車の守り神みたいなおじいさん 全員が目を閉じあわくうつむいてお祈りしてるみたいな乗客

          起きて、なんだか口寂しくて、キャラメルを1つ口にいれた。底冷えする朝、節約のためにエアコンを切った部屋はさむく、キャラメルはとても固くなっていた。歯を立てると、かりっと変な感触、なんだろうと思ったら、歯列矯正のブラケットがひとつ外れていた。痛くはないのだけれどやはり気になって仕方なく、食べ物も食べにくいので、歯医者さんでなおしてもらうことにした。空っぽの今日に、歯医者さんに行くという予定が書き込まれた。いらなかったはずの出費だし、全然うれしくないことなのに、ちょっと安心した自

          やりたくないことやりたいこと

          【今年やりたくないこと】 ねぼう。ちこく。安請け合い。言い訳。洗濯物を夜取り込むこと。忙しさを言い訳にすること。人への過度な期待、逆に諦めすぎること。甘いものを食べすぎること。必要以上の営業スマイル。寝落ち。宅配便の不在通知。人を自分勝手に信じすぎること。いろんなことにおいての食わず嫌い。なんでも1人で解決させること。迷惑メールを溜め込むこと。「できなさそう」と思うこと。3日ぼうず。5日ぼうず。 【今年やりたいこと】 体調管理。自分に合ったスキンケアを見つけること。お言葉に

          やりたくないことやりたいこと