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いつもは見えない骨のこと知っていますか?・・・骨が好きになるおすすめ絵本

●意外と知らない骨のこと
子どもの頃、体についての知識は学校で教わったり図鑑を見たり、何となく知った気にはなっていたけれど、体のことについて知りたい思うようになったのは、大人も大人、中年になってから。いろいろ病気を経験してから。

骨もその一つ。数年前、骨の異常が見つかって、がぜん骨のことが知りたくなってきました。というより、骨のこと、実はよく知らなかったことに気づきました。

そんなとき、家族が、上大岡トメさんのコミックエッセイ『老いる自分をゆるしてあげる。』(幻冬舎文庫)に出てくる骨の説明がわかりやすかったよ、と教えてくれました。

読んでみると、骨の役割や新陳代謝の仕組みなどが、コンパクトに、イメージしやすいように描かれていました。

この骨についての章は、解剖学者の桜木晃彦さんのお話を聞いて描かれたそうです。参考文献には、桜木さんが監修された『ながいながい骨の旅』(松田素子文、川上和生絵、桜木晃彦・群馬県立自然史博物館監修、講談社、2017)という絵本が紹介されていました。そこで、芋づる式に手にとってみました。


●地球と、生きものと、骨の始まり

『ながいながい骨の旅』は、骨どころか、地球の始まりのお話からスタートします。

約46億年前、ドロドロに溶けたマグマに覆われた地球が宇宙の中に生まれ、やがて長い長い時間をかけてマグマが冷え、たくさんの雨が降って、地球に海ができました。

海には、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など、生きものが生きていくのに欠かせない栄養素・ミネラルがたっぷり。

そんな海の中に、まず最初にあらわれたのが、一つの細胞でできている小さな生きもの(約43〜38億年前のことと考えられています)。

その後、ゆっくり時間をかけて、たくさんの細胞でできた、大きな体やいろんな形をした生きものが増えていきました。ついには背骨らしきもの(脊索)をもつ生きもの出てきました。

やがて地球は、大陸同士がゆっくり移動し、ぶつかり合って、山脈ができ、川や森、湿地帯ができていきました。

時間をかけて地球の環境が変わっていく中で、生きものたちもゆっくりゆっくり変化していきました。どんどん生きものが増え競争が激しくなった海を出て、川や湿地帯で生きる魚も出てきました。

水の外で呼吸できるように「肺」を、水中と違って浮力がない陸の上でも自分の体重を支えられるしっかりした太い「背骨」を、手足のように4枚のヒレの中に「骨と筋肉」をもつ魚があらわれ、やがて水の中と陸の上の両方で生きる両生類があらわれました。

ところで、栄養たっぷりの海と違って、川にはあまりカルシウムは含まれていません。カルシウムは、心臓や神経の働きを保つために、生きものにとって必要なもの。

そこで、太い背骨は体を支える以外に、体の中にカルシウムを蓄えておく大事な役目を果たすようになりました。

また、骨は、血液を作る工場のような働きもしています。骨の中にはカルシウム・マグネシウム・リンが、血液の中にはナトリウム・塩素・カリウム・鉄が含まれています。なんと、どちらも海の水と同じ成分が入ってるのです。

私たちは体の中に〈海〉を入れて、もちはこんでいるのです。私たちは、体の中に〈海〉をもつことで、地上で生きていることができるのです」というくだりには感動しました。


●不思議な読後感

「私たちの体の中には、骨があります。あなたはそれを、あたりまえだと思っていませんか?いいえ、あらゆることにはすべて、その〈はじまり〉というものがあるのです」という扉のページから始まったこの絵本。

読み終わった後、自分の体の中に、地球と生きものの歴史が流れている、つまっているような不思議な感覚に包まれて、感動してしまいました。これまでほとんど意識していなかった骨のことが愛おしくなりました。

地球と生きものの歴史、骨の始まりとその変化がリンクすることで、魚が両生類に、哺乳類にと変化していった過程が、教科書で頭に入れた知識とは違って、イメージ豊かに入ってきました。

地球と生きものの長きにわたる歴史をわかりやすく、まるで旅した気分になるようにゆったりと語りかけてくれる松田さんの文章。これまたゆったりとしたリズムを感じさせてくれる川上さんの淡い色彩、まろやかなタッチの絵が素敵です。昔の生きものの絵もたくさん登場して、楽しいです。


●骨ってよく出来ている

上大岡さんの本には、桜木さんの『自分の骨のこと知ってますか』(講談社、2001)も参考文献として紹介されていました。さらに骨のことが知ることができそうな香りがプンプン。

予想通り、こちらは「骨のガイドブック」と呼ぶのにぴったりの本。頭の上から手足の指先まで、骨がどんなに優れた働きをしているかがわかりやすく書かれていて、骨って、体って、なんてよくできているんだろうという発見がいっぱい。

たとえば、骨の連結の仕方には、
①ほとんど動かない
②(軟骨をはさんで)多少は動かすことができる
③(関節を使って)スムーズに動ける
の3種類があって、場所によって適材適所に対応できるようになっていること。

①の代表は、頭の骨(頭蓋骨)。一つのゴロリとした骨に見えつつ、実はたくさんの骨がつなぎ合わさってできています。頭に衝撃が加わったとき、一つの骨でできていれば衝撃に対して柔軟な対応ができないけれど、いくつもの骨が縫合されてできていることで、大事な脳を守ることができる……などなど。

骨のことがまたまた愛おしくなりました。気の利いた、わかりやすい表現で書かれていて、こちらもおすすめです。

ようこそ。読んでくださって、ありがとうございます。