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潮崎豪の300分6秒 第五章.8.10「正真正銘1番強いやつを決めようぜ!」 VS拳王〜60分00秒

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※トップ画像はTwitterのフォローをさせて頂いている@TACK59089236さんの描いた絵です。

序章〜ノアはお前だよ〜

第一章.1.4「新しい景色は俺にしか創れない」 VS清宮海斗〜27分42秒

第二章.3.29「潮崎選手は漢です」 VS藤田和之〜57分47秒

第三章.6.14「これで負けたけどさ、俺次に進むよ」 VS齋藤彰俊〜29分22秒

第四章.8.5「 I am real noah」 VS丸藤正道〜30分56秒

第五章.8.10「正真正銘1番強いやつを決めようぜ!」 VS拳王〜60分00秒

第六章.11.22「出戻りチャンピオン!」VS中嶋勝彦〜42分35秒


第七章.12.6「I am noahは俺に勝ってから言え!」VS杉浦貴51分44秒


終章.すべてを受け止めて〜I am noah

第五章.8.10「正真正銘1番強いやつを決めようぜ!」 VS拳王〜60分00秒



2017年の11月。拳王は確かにノアの中心にいた。ヘビー級転向直後にグローバルリーグを制覇。この年のグローバルリーグはGHCヘビー級王者のエディ・エドワーズが不参加ということもあり、リーグを制した拳王は「ノアで最も強い選手」に近づいた。さらに優勝インタビューで「俺がお前らクソヤローどもを武道館に連れてってやるよ!」と叫び、ノアのエースの座に王手をかけた。そして一ヶ月後のエディ・エドワーズ戦に勝利し、GHCヘビー級王座も獲得。拳王時代を築くかに思われた。


しかし、翌年杉浦にベルトを奪われると、王座戦線からはしばらく距離を置くことになる。2019年はグローバルリーグ改めN-1を制覇するも、清宮の持つGHCヘビーのベルトを獲得するには至らなかった。そして翌年2020年。1月からノアの中心は潮崎豪が君臨していた。その潮崎を2017年に下した男。それは拳王だった。かつて自分が引導を渡したかに思えた潮崎がノアの頂点に立つ。拳王がそれを黙って見過ごすことはできなかっただろう。


潮崎が丸藤正道からベルトを守った前日。拳王は潮崎のタッグパートナー中嶋の持つ「もう一つのベルト」GHCナショナル王座に挑戦し、これを奪取した。誕生して間もない新しいベルト。そのベルトをどのように輝かせるか。その命題の答えとして拳王が選んだのが「GHCヘビー級とのダブルタイトルマッチ」である。これはもちろんとても重い選択だ。誕生間もないベルトがGHCヘビーに飲み込まれる可能性もはらんでいた。しかし拳王は言った「ノアに一番強いやつは2人もいらない」「どっちが強いか決めるぞ!」と。お互い前回の防衛戦から数日しか経過していない。さらにベルトの統合といった危険。様々な要素が渦巻く「前代未聞の試合」はノアの数々の名勝負の舞台となった横浜文化体育館のノアでの最終戦として実現した。


いつしかノアの試合は「華麗な技」や「流れるような攻防」といった部分がフォーカスされるようになっていた。あの三沢小橋戦を始めとして「完成度の高さ」に主眼が置かれる試合。「どちらが強いか」よりも「どちらが凄いか」にフォーカスする。そうした流れが悪だとは思わない。しかしこの試合が訴えたのは「凄さ」よりも「勝利への執念」であった。序盤は相手の武器である腕を脚を攻める。中盤以降は打撃。拳王のトップロープから場外へのPFS(パーフェクト・フット・スタンプ)もあったが、これも見栄えよりは威力を重視したものである。更には中嶋をKOした戦慄のハイキック。いずれもとてつもなく「エグい」技だ。これらをすべて受け止め、反撃に出る潮崎。スポーツライクな「試合」に、原始的な「戦い」の要素を組み合わせた試合。これまでの潮崎の防衛戦にあった「かつてのノアの匂い」ではなく「新しいのノアの匂い」を感じさせる試合である。そして試合時間終了間際で、潮崎が選んだのは渾身のムーンサルトプレス。完璧に決まったかに見えたが、フォールに至らずフルタイムドローとなった。潮崎が最後まで勝利を渇望したからこそ、この技を選択したのかもしれない。


かつての幻想であった三沢小橋戦。そして丸藤KENTA戦。幻想となりつつあったそれらの試合を、拳王の持つ「勝利への渇望」を受け止め、乗り越えた潮崎。過去のノアを知らない拳王が相手だったからこそ、GHCの防衛戦の中に新しい流れが生まれた。過去を超えて現在を進む潮崎だったが、次なる挑戦者は「誰もが予想だにしなかった形」で彼に牙を向いたのだった。


続く

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