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2022年の潮崎豪の進む道〜抗う強さ

トップ画像は@shun064さんの作品です。

2020年時代を築いた潮崎豪は2022年苦しんでいる。1.1の中嶋勝彦とのGHCヘビーのベルトを賭けた日本武道館決戦に敗戦。直後の1.4清宮海斗戦。さらにそこから1.27杉浦貴戦。2.9田中将斗戦。2.10丸藤正道戦。2.11拳王戦。2.9時点では杉浦と田中に連敗。復帰からここまでの対戦相手はトップクラスのヘビー級戦士であり苦戦は予想された。どの相手も簡単に勝てる相手ではない。しかし2020年にノアの大エースに君臨した潮崎豪である。負傷からの復帰直後とはいえ、わかりやすい形で「エースとして強い潮崎豪」という姿を期待したい気持ちはある。

2.9の田中との試合も「強い潮崎豪」を確かに見ることはできた。会場中に響く逆水平チョップの音。雪崩式の変形ブレーンバスター。そして豪腕ラリアット。12月の復帰直後と比較すれば、潮崎のコンディションはかなり戻ってきた。それだけに「強くそして相手に打ち勝つ潮崎豪」という姿を見たくなる。潮崎が絶対王者として相手を下す強さを見せつけていただけに、私にはそうした気持ちがあった。

しかし。改めて考えれば「潮崎豪の強さ」は「相手に勝つこと」だけではなかった。2020年こそ絶対王者として君臨していた潮崎だが、潮崎の凄みは「抗う強さ」ではないだろうか?ノア時代に若手から脱却する時期は三沢光晴や小橋建太の残像と。エースに近づいたときは森嶋猛のパワーや杉浦貴のエグい攻めと。全日本プロレス時代は怪物諏訪魔と。更にノア復帰後は清宮や拳王が築こうとしていた新たな時代と。

新日本プロレスラのオカダ・カズチカが言うように、プロレスラーは超人的な強さを見せることが必要である。相手を蹂躙する圧倒的なチカラ。華麗な技。受身の凄さ。そうした要素をひっくるめてプロレスラー=超人という図式。いわば自分とは別世界の住人としての存在。まばゆい光に照らされる存在だからこそ多くの人が憧れる。

しかしそうした「上からの輝き」がプロレスラーの魅力の全てではない。相手の攻撃を受けても立ち上がる。強い相手に苦しめられながらもそれに耐える。悩み苦しみ、そこから殻を破り成長する。自分と別世界ではなく自分と同じ世界の住人として。いわば「人に近い存在」としての要素。そうした姿もプロレスラーの魅力である。

私の思う潮崎の魅力は超人的な部分ではなく「悩み苦しみそれに打ち克つ姿」である。普通の人と同じように壁にぶつかりながらも、それを乗り越える。遠い国にいる王者ではなく「俺たちの王者」。かつて小橋建太が纏っていた空気に近いかもしれない。

そうした視点で考えると。2022年の潮崎豪はもがき苦しみ抗う姿を通して、ファンの思い入れを込めていくのかもしれない。最初から輝く道を歩むのではない。辛く険しい道のりをファンと共に歩み。一つ一つ障害を乗り越える。その先にようやく王冠を得る。2020年と異なる道ではあるが、潮崎豪の進み道には必ず輝く何かがあるはずである。困難を乗り越える姿をともに見届ける。そうした楽しみが2022年の潮崎豪を楽しむ視点かもしれない。


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