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【対鈴木秀樹戦】中嶋勝彦の幅〜プロレスリングノア

ドロップキックチャンネルで書かれた中嶋勝彦の記事を読んで、改めて2020年2月16日に行われた鈴木秀樹とのシングルマッチについて検証してみました。

試合映像はWRESTLE UNIVERSEではなくAbemaですね。

ちなみに鈴木秀樹本人が語ったこの試合のインタビューはこちらです。

※どちらも有料記事ですがとてもおもしろいので是非読んでほしいです。

この試合はこれまで潮崎をターゲットに動いていた鈴木秀樹が、潮崎を藤田和之に取られた結果「パートナーのお前が責任をとれ!」と中嶋に要求したことが発端として行われました。戦前は「グラウンドに長けた鈴木秀樹と打撃に長けた中嶋の試合」というイメージでしたが、蓋を開けてみればかなり印象が異なる試合になりました。もちろんそうした要素もありましたが、端的に言えば「後楽園ホールという器に最も対応した試合」というのが適した言葉かもしれません。

この試合は30分1本勝負でしたが、大きく分けて3つに区分けできたかと思います。1つ目は「グラウンドの攻防」です。

鈴木秀樹が得意とする「相手にしっかり圧力をかけてポジションを奪い合う」というスタイルのグラウンドの攻防が主に序盤に行われました。リング内で上のポジションを取ろうとする鈴木秀樹に対して、それを制する中嶋というシーンですね。特に中嶋が鈴木秀樹の首を足で締める→鈴木秀樹がポジションをずらしつつ中嶋の足に肘で体重かけてロックを解く→中嶋をヘッドロックに移行、という流れは素晴らしい動きでした。イメージとしては90年代新日本の序盤のグラウンドの攻防ですかね。ドロップキックチャンネルで鈴木秀樹も語っていましたが、武藤の動きに近い印象です。面白かったのはこの鈴木秀樹の動きにしっかり付いていき、コントロールしていた中嶋。元々打撃の印象が強い中嶋でしたが、こうしたグラウンドの攻防にもしっかり対応して鈴木秀樹の良さを出しつつ、やられっぱなしにならないという絶妙な手綱捌きを見せていました。

そうしたグラウンドの攻防に終わりが見えた中盤
。次の注目ポイントは「場外乱闘」です。かつてジャイアント馬場が「客を飽きさせないために、試合中は客の目線を動かせ」と言ったように、試合の中で観客の目線を動かす(コントロールする)というのは非常に重要な部分です。ロープワークや空中殺法も広い意味で言えば「観客の視線を動かす」という目的も含まれています。この試合はここまではロープワークもほとんど無く、リングでの静かなグラウンドの攻防でした。しかし中盤それが一変します。場外を広く使い試合としての横幅を一気に拡大しました。場外での打撃戦もあれば観客の傘やかばんを使おうとするなど後楽園ホールをとにかく広く使っての場外戦。グラウンドの攻防からの場外戦という緩急の付け方はとても興味深かったです。そして場外を広く使える後楽園ホールだからこそという部分も大きかったでしょう。仮にこれがドームだと、場外戦をやっても観客の視線は動きづらく、後楽園ホールをとても上手に活かした展開でした。
※トップロープからの攻防が無かったの、この試合の後がjrの試合なので差別化のためにそうしたのかもしれませんね。

そして終盤戦。3つ目は打撃とフィニッシュホールドです。打撃といっても中嶋は得意のキックを多用するわけではなく、鈴木秀樹とのエルボー合戦の方に注力していた印象でした。ただし要所ではキックを繰り出し、大型の鈴木秀樹の重いエルボーと中嶋の切れのあるキックがうまく対比されて凄みが伝わったと思います。最終盤には鈴木秀樹はダブルアームスープレックス、中嶋はヴァーチカルスパイクとフィニッシュホールドを繰り出しますが、お互いフォールには至らず。試合終了直前まで両者はフォールを狙いますが、無情にも時間切れドローで決着はつかず、試合が終了しました。

最初に伝えたように戦前の予想とは異なる試合ではありました。しかし後楽園ホールという器の特徴(「目の肥えたファンがいる=グラウンドの攻防に理解がある」&「場外戦を広く使いやすい」)を最大限に活かした試合をしてくれました。もちろん鈴木秀樹の万能っぷりもすごかったです。クラシカルな技を説得力を持って使うというのは、中々できるものではありません。ですが、やはり今までとは異なる試合展開で、あっさりと良い試合を作り上げた中嶋のレスラーとしての幅の広さを再発見したのが一番の収穫でした。

「やれない」のではなく「やらない」だけだよと言わんばかりの、中嶋の懐の深さに改めて驚嘆しました。しかしよく考えれば中嶋は、佐々木健介の地獄の練習を耐え抜いたベースの上に、天才北斗晶のレスラー頭脳を受け継いでいるわけです。私が勘違いしていただけで、元々このくらいヘラヘラ笑いながらこなせる素養があったのかもしれませんね。

現在赤いベルトを持って自由奔放に振る舞っている中嶋。彼が次の標的に「誰を」「何を」捉えるのか。ますます目が離せませんね。

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