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N-1 VICTORY2022【DAY4】拳王VS潮崎豪〜横軸の広がりとリーグ戦という背景が繋がった名勝負〜

※トップ画像はWRESTLE UNIVERSEのキャプチャです。

プロレスリング・ノアのN-1 VICTORYも中間地点となる【DAY4】を迎えました。いよいよ9.3大阪への決勝に向けて生き残りが始まる時です。この日の私的名勝負は拳王VS潮崎豪です。この日は他にも中嶋勝彦VS杉浦貴や藤田和之VS鈴木秀樹など注目カードが数多くありました。その中でも私がこのカードを選んだ理由は2つあります。


1つめは立ち位置と試合スタイルの変化です。拳王潮崎戦は直近では2度行われています。22年2月と20年8月。22年2月はお互い無冠で再生を懸けた試合(ともに1月にシングル王座戦で敗北)。20年は潮崎がGHCヘビー、拳王がGHCナショナルと王者同士の試合。不思議なことに両者は似た立ち位置の時期に試合を組まれています。過去の試合はノアの2つの潮流。受け止める強さを持つ潮崎と、シリアスに相手を倒す強さを持つ拳王という形で行われました。受けの凄みを潮崎が。攻撃の凄みを拳王が。といったイメージです。

しかしこの試合はその図式が崩れました。団体のフラッグシップタイトルであるGHCヘビーのベルトを腰に巻く拳王と。再生を目指す潮崎という立ち位置の違い。その違いは試合にも表現されていました。リング中央で王者として相手の攻撃を受け切る拳王。潮崎のラリアットを受けても3カウントを許さない拳王。一方拳王が前の試合で痛めた右足に非情な攻めを繰り出す潮崎。これまでと両者の攻守が逆転していました。それによりこのカードの魅力が別な方向で。縦軸ではなく横軸でそれを増したと言えるでしょう。

もちろん横軸だけの進化ではありません。フィニッシュは拳王が胴締めスリーパーで潮崎を半失神状態にさせてからPFSという流れ。拳王が元来持っていたリアルな攻防を見せつつ。敢えてそれで終わらせなかったこと。これは縦軸の進化でもありました。同一線上だけでの進化ではなく横軸を広げることで。このカードは更に輝きを増したと言えるでしょう。


続いて2つめはリーグ戦という背景を活かした試合という点です。攻めに転じた潮崎は拳王の右足をしつこく攻撃しました。普段は見せない変形のテキサスクローバーホールドや足へのラリアットやチョップなど。これは拳王が前の試合で田中将斗に敗れた際に右足を徹底して攻められたことを反映しています。コロナ禍以前のプロレスではタイトルマッチを競う相手が前哨戦を行う際に、シリーズを通じて相手に一点集中攻撃を行いタイトルマッチに繋げるという流れがありました。シリーズ通してタイトルマッチを盛り上げる。最終戦に繋げるという論理です。コロナ禍によって長期のシリーズが組めなくなり、そうしたスタイルはノアではあまり見られなくなっていました。

しかしこの試合(セミの中嶋VS杉浦もですが)は前の試合と地続きの攻撃を行っていました。それにより「この試合がN-1というリーグ戦の中で行われたと」いう部分をより際立たせることに成功した。私はそう思いました。もちろん拳王も潮崎の場外でのチョップを鉄柱に誤爆させるなどのムーブで前の試合との地続きを演出しています。あとはN-1中に更新された拳王チャンネルで見せた新技(バックチョークから腕ひしぎへの移行)を繰り出したこともですね。

試合は拳王が潮崎を下しましたが「拳王の足へのダメージは?」「次の試合に響くのでは?」といった形で、観客の興味が次の試合へ向かう形となりました。このあたりは潮崎の持つ深みによることかもしれません。古のロジックとリーグ戦という舞台装置。それを両者が巧みに利用して試合の深みを増した。フィジカルだけでない魅力をこのカードに追加したと言えるでしょう。

注目カードの多い【DAY4】でしたが、この2つの理由から拳王VS潮崎を取り上げることにしました!N-1 VICTORYはまだまだ続きますよ!会場で配信で。ぜひぜひご視聴ください!


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