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潮崎豪の300分6秒 第一章.1.4「新しい景色は俺にしか創れない」 VS清宮海斗〜27分42秒


※トップ画像はTwitterのフォローをさせて頂いている@TACK59089236さんの描いた絵です。

序章〜ノアはお前だよ〜

第一章.1.4「新しい景色は俺にしか創れない」 VS清宮海斗〜27分42秒

第二章.3.29「潮崎選手は漢です」 VS藤田和之〜57分47秒

第三章.6.14「これで負けたけどさ、俺次に進むよ」 VS齋藤彰俊〜29分22秒

第四章.8.5「 I am real noah」 VS丸藤正道〜30分56秒

第五章.8.10「正真正銘1番強いやつを決めようぜ!」 VS拳王〜60分00秒

第六章.11.22「出戻りチャンピオン!」VS中嶋勝彦〜42分35秒


第七章.12.6「I am noahは俺に勝ってから言え!」VS杉浦貴51分44秒

終章.すべてを受け止めて〜I am noah


第一章.1.4「新しい景色は俺にしか創れない」 VS清宮海斗〜27分42秒

2019年12月。盟友中嶋勝彦とのシングルマッチを制した潮崎豪は、高らかに「GHCヘビー級王者清宮海斗への挑戦を宣言した。ノアに復帰して以降どこか遠慮が見えた潮崎。その潮崎と反比例するか如く、超新星清宮は輝きを増していた。上り調子の清宮とある意味ラストチャンスであった潮崎。前哨戦から激しいやり取りを見せ、タイトルマッチへの機運が大いに高まり、決戦の1.4を迎えた。

入場時は挑戦者潮崎から。入場テーマであるENFONCERの旋律に乗ってリングに姿を見せた潮崎に、観客からどよめきが起こる。これまでの黒を基調としたショートタイツから緑と白系を基調としたロングタイツへ。更にガウンも緑と白。緑はまさしく三沢光晴の、そしてノアの象徴たる色である。トップへの返り咲きラストチャンスのこの場で。潮崎が纏ったのは「ノアそのもの」だった。

対する清宮。数々の防衛戦を重ね、王者としての風格を備えつつある超新星。ノアが団体として勢いを持ったのは、この若者に未来を託したからだ。単純な図式で言えば「ノアの未来」VS「かつてのノアの未来」。普通なら観客の後押しは「ノアの未来」へ強く寄せられるはずだった。しかし多く声援を受けたのは緑を背負った潮崎だった。

王者清宮としては挑戦者に声援が負けるという珍しい試合。だがその空気であっても堂々たる戦いぶりで潮崎に激しい攻撃を続ける。小川良成仕込の古典的な一点集中攻撃で潮崎の右腕を攻め、豪腕封じを狙う。また打点の高いドロップキックやジャーマンでダメージを与え続ける。しかし潮崎は清宮の攻撃をひたすら耐え続ける。清宮が自身の防衛ロードを支えてきた必殺のタイガースープレックスを繰り出すも、それすらカウント2で跳ね返す。そうして清宮に全てを吐き出させた潮崎は、自慢の豪腕で清宮にダメージを与えると、最後はとっておきのムーンサルトプレスで清宮から3カウントを奪う。

激戦を終えてベルトを持った潮崎が叫んだ言葉。それが「俺がノアだ!」である。寡黙な男が発した言葉、それはノアファンが待ち望んでいたものだ。しかしそれはいつしか諦めかけていた。「ノアを真に背負う王者潮崎」。その夢がようやく叶った瞬間だった。

確かに清宮が敗れたことで「時代が戻ってしまったのでは?」という危惧もあった。ノアでいえば王者丸藤に挑戦者三沢が勝ったような光景。しかしそうした雰囲気は薄かった。

かつての潮崎は「三沢や小橋の劣化コピー」と蔑称されることもあった。それは彼の本質的には異なるのだが、ファンがそれを望んでしたことも影響したのだろう。そこで自分の個性とファンの期待に挟まれていたのかもしれない。

そんな中で迎えたこの試合。潮崎は敢えて三沢の色を身に纏うことで、ファンに三沢を投影させた。ファンの想いを全て受け止めた上で、自分の色をそこに載せるという堂々たる戦いを見せた。「真の潮崎豪」がノアに生まれたのがこの試合だったといえる。

しかし戴冠した潮崎の前に、「規格外の怪物」が迫っていたことを、そしてその試合が「規格外の試合になることを」。このときの我々は知る由もなかった…

続く

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