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魂に触れるみたいに

宗旨変えをしたかもしれない。

ここ最近、どうも書く気が起きなくて、それは子育てによる時間のなさのせいだけではなくて。
体のせいもあるんだけど、それだけでもなくて。

なんだかこう、なにが面白いか分からなくなってしまって、うっすら呆然とした心持ちでずっと過ごしていたら、ちょっと鬱っぽいなと思って、そしたらこの先の人生を思って余計憂鬱になったりして。
情熱がなくなったら終わり、と、そう思って生きているから。

そんなふうに元気なく毎日を過ごしていたら、子育て疲れがどーんと来て、まあこれは今に始まったことではないのですが、さいわい今日は土曜なので家事育児をすべて夫に預けて、近所のスパに行ってきました。

ホルモン剤の影響からか、もうずっと、体が冷えているからね。
こんな冷えた体じゃ、何も書けないもの。何をひねり出したって意味がない。
それで温泉と岩盤浴で体を温めて、休憩所で手に取ったのが、若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」。

これまで、人生で一番好きな本はと聞かれたら、ルイス・サッカーの「穴」だと答えてきた。でもこれからは変えようと思う。

帯には、「これぞ青春小説ならぬ玄冬小説!」みたいなことが書かれてあった。笑いながら読める云々とも書いてあった。
嘘だろ、と思った。
のっけから一文一文、肩が外れるレベルの全力投球で、全てに魂が詰まっている。「老いるのも悪くないと思える」? なんだよ、そんな、薄っぺらな感想文は。

まだ流し読みしかしていないというのに、わたしは岩盤浴の休憩所でひとり嗚咽して、外出中だというのに泣きすぎて左目のコンタクトが外れた。ただでさえ重い瞼が腫れ上がって、なかなか元の場所に戻ってくれなかった。
全然笑えないんですが。

このところ、からきしからっ風が吹いていた私の心に、どしゃ降りの雨が降り注いで、土砂崩れを起こして、帰りみちみち、私は自分がどうやら宗旨変えしたことを認めざるを得なくなった。

触れるべきはこういった小説で、私はもっと、魂の叫びを文字にすべき。
感情が揺さぶられる。涙が出る。顔が腫れる。
やだなあと思って忌避していたものだが、でも情熱が枯れてしまうあの感覚よりはましかもしれない。
それが私のスタイルなのかもしれない。

こういうものを書く人たちは、いったいどれくらいの涙を流しながら書いているのだろう。
ちなみに私はこれを書きながら泣いている。
なぜ。

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