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Good luck with your phone

職場が変わった。住処も変わった。同居人もいなくなって、ここ2ヶ月で私の周りは大きく転換したといって良いだろう。ついでにmacbookの画面も壊れたし、iphoneも壊れてしまった。Apple Store渋谷に来る必要があった。昨日引越しした私には、渋谷の街はモニターが明るくてうるさくて人がいっぱいで、ストレスにしかならない。目を瞑って信号待ちをすることしかできない。自分はいつも笑顔で、声色を高くしているつもりなのに、ミスをしないように舐められないように化粧をして努力しているのに、いやむしろ、そうしているからか、愛想が悪い駅員や、Appleの店員がミスをするという些細なことにも苛ついていた。MUJIcafeの文字詰めが汚いところが気になったり(MUJIcafeなのに!という期待があったのか)

iphoneが帰ってくるまで、3時間かかるらしい。20時まで待たなくてはいけない。向かいのMUJIcafeでご飯を食べるか。今日は何も食べていない。そんな日が続いていた。生きるので精一杯だった。ただ、bgmがうるさくなくて、スマホもないし、黙々と1時間ほどかけてご飯を食べていた。正確には、ご飯を食べながら、「Fight Club」のことを考えて、時折他者に映る自分がとても疲れて見えた。私も、タイラー・ダーデン(映画「Fight Club」の主人公の一人)のようにイケメンで刹那的で魅力的で、「come on!」とか言っちゃってビール飲みながらファイトしながら仕事も楽しくやっちゃって・・・そんな妄想で頭をいっぱいにしていた。買い物も仕事の予習も早寝も全部放り出して彼(僕)のように生きてみたい・・・。

突然、隣の人物に肩(正確には二の腕あたり?)をつつかれた。ハッとして振り向くと、半袖にタトゥの入った30代半ば程の外国人だった。彼は日本語はあまり得意ではないらしく、私は英会話の記憶を辿るように、拙い英語と、google翻訳でなんとか会話をした。Jack(Jakeかも)というニックネームで、ネバダ出身のプログラマー。日本にはよく観光に来るらしい。元々はプロの写真家で、レッドロック、ラスベガスのショー、京都の写真を見せてくれた。とても面白かった。instagramを交換した。40分ほど会話をした後、「もしよければ、一緒に渋谷観光をしよう。」と言われた。私は、迷ったが、「仕事の準備をしなくてはいけないから。」と断った。
会話が終わって、私は、I have to…(私は〜しなくてはならない。)という事ばかりを述べている自分に気づいた。

もし、彼の誘いに乗って、渋谷観光をしていたら、「Fight Club」のような展開が待っていたか? そんな妄想が頭をよぎるが、まずは、映画にならって、こだわりの家具で揃えた自宅が爆発しないと、タイラーとは出会えないと思って自分をなだめた。

こんなことを考えているうちに、もうiphoneを取りに行く時間になった。彼からのDMを確認すると、Good luck with your phone というメッセージが残されていた。

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