【梅園魚品図正】(15) 鱅(このしろ)/鯯(こはだ)/江鰶魚(さつは)
鱅 コノシロ
『本草綱目』曰 鱅 コノシロ
『山海経』曰 鱃魚
溶魚 未詳
日本にて昔、此魚を ヲツナシ と云。昔、或人の子、継母の讒により、其父讒を信じて家僕に命じて其子を殺さしむ。家、其罪なきをあわれみて、ツナシ を焼て其子をころして焼たりと 父につげて、其子をたすけて他所ゑ去しむ。夫より、此魚の名を、子ノシロ と云。子の代りに焼ける故也。
※ 「山海経」は、前漢時代以降に成立したとされる洛陽を中心とする地誌。※ 「讒」は、そしる、よこしまの意。
『日本記』斉明天皇の時、鯯魚と云 臣あり。コノシロとよめり。
『本草綱目』曰、
海上 鱅魚 其 臭 如 尸、海人 食 之。
今 貝原公羽 案 焼 其香臭 如 尸 者別 なしと。
『閔書』曰、鰶 コノシロ
『和名抄』 鯯、鱅 を二つに分ち載す。
鯯鱅は一物二名
『四聲字苑』云 ■ モロ古也 [■は魚+発]
志呂也 皆一物也
※ 「尸」は、訓読みで、かたしろ、かばね、しかばね。死体の意味。
鯯 コハダ
『本朝食鑑』 鯯の下張に曰
鯯 小なる者を コハタ と云。
江鰶魚 『産物志』
鰶の初年を コハダ と云。二年の者を コノシロ と云。
江鰶魚 サツハ
■魚 一種 [■は魚+差]
江鰶魚 『閔書』 サツハ
此者、即 コハダ 也。今、コノシロ の小なる者を コハダ と云非也。
※ 「サツハ」は、サッパ(ママカリ)のことと思われます。
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筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心でのためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。
また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。
この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ
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