東本願寺ひがしほんがんじは、南みなみ久太郎きうたらう町の西にありて、難波なんば御堂みどうと云。また、東西の本願ほんぐわん寺、大阪にては南北ぼくにあるゆへ、俗ぞくに南の御堂と云。

此 寺内、本堂の所は一面めんの築つき山にして 花はな紅葉もみづを植うえまぜ、山吹ぶきさつきの頃ころはことさらに麗うるはしく、此所の西手に座魔宮ざまぐうへ抜ぬける石門せきもんあり。夏日かじつ 涼風りようふう を通とほして水店みせをいだし、西瓜すいくわを商あきなふなり。是を穴門あなもんの西瓜とて名に高く、往来ゆきゝの人こゝにいこひて、しばらく暑あつさを忘わするゝもまた多かりき。

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