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カレーの極意!~バイト先のマスターから教わったこと~

病気療養中のmominです。カレーが出来上がりました。カレーを作るたびに思い出すこと,それは40年以上も前,学生時代にバイトしていた時のマスターの言葉です。

注文を受け,せっせとプレートに盛り付けする私。その横でフライパンを振りながら調理するマスター。どうやら,調理の合間を使ってカレールーの仕込みをしていたようでした。

「カレーは辛いだけじゃおいしくないんだよ。」
とマスターがポツリ。
「どういうことですか?」
好奇心のかたまりの私。
「カレーの辛さは相応の甘さがないとダメなんだ。」
 
 当時,カレールーの人気は「バーモントカレー」でしたから,リンゴと蜂蜜かなと思いましたが,マスターの答えは違っていました。

「ルーの甘味は玉ねぎで出す。その補助としてチャツネなどの甘味を入れるんだ。」
とのこと。

 実際,玉ねぎを大量にフライパンで炒め,オーブンできつね色になるまでじっくり時間をかけていました。

「では,辛さはどうやって出すんですか?」
と好奇心の私。もちろん香辛料でしょうと浅はかな考えを胸に秘めて。

「辛さはショウガで出す。」
また答えが違っていました。

「もしもコショウやトウガラシで辛味を付けたら,その辛さが舌にいつまでも絡みついて肉や野菜のうまみが台無しになるんだ。当然,子どもたちも食べられなくなる。ショウガであれば多少辛くても辛さが後を引かないので,食べ続けていられるんだ。」

 ショウガのみじん切りをしながら淡々と答えるマスター。
 
 ステーキの注文が入りました。フィレステーキです。この店では必ず焼いた肉の横に脂身を付けています。

「ステーキに,脂身を付けるわけはなんでだと思う?」
答えに窮する私。肉を焼くここちよい音だけが厨房に響いています。

「肉のうまみは脂身にあるんだよ。」
とマスター。

「うちのカレーはビーフカレーだろ?牛バラを使うのは,肉汁と油がルーをおいしくしてくれるからさ。ステーキはその肉のうまさをダイレクトに味わえる料理だから脂身を付けるんだ。わかるお客さんは少ないけどね。」
さりげなく言いながら,フライパンにワインを振りかけてフランベ。

 ここのカレーは人気がありました。注文が日替わりランチの次になるほどの人気です。牛肉が3,4個入ったシンプルなものですが,一口目が甘く感じます。
二口目からだんだん辛味が広がりますが,舌がしびれるほどではなく,水を一口すると辛味が引けてまた食べたくなるんです。具材の味がカレーのうまみを引き立てているようです。

若かった私は,このカレーを3分で食べつくした記憶があります。

この店は,今はもうありません。でも,ここのカレーのおいしさと,お客さんが食べ残したステーキの脂身をマスターと分け合って厨房の隅に隠れて食べた思い出とが残っています。

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目の前のカレーですが,マスターの言葉が今でも生きてこの中に入っています。

辛味はショウガでつけること。
玉ねぎはじっくり炒めること。
辛くしたら,相応の甘味を付けること。
肉はバラ肉を使うこと。
具材のうまみが味わえる辛さにすること。
香辛料はほどほどに。

我が家のカレーはほとんど私が作っています。カレールーだけは安売りになりがちな「バーモントカレー」「熟カレー」「ゴールデンカレー」などをブレンドしています。それでも家族親戚には人気なんですよ。マスターの言葉が入っていますから。
 
療養中で立っているのがつらくなる私にとっては,カレーづくりは休み休みできるリハビリとなっています。

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