未成年の子宮頸がんワクチン接種

厚労省H25方針

 厚生労働省が、平成25年2013年に小学6年~高校1年の女子を原則無料として接種推奨したものの、副反応などの影響により同年内に積極的勧奨を中止した子宮頸がんワクチン。令和3年2021年11月に、再び接種に対して積極的勧奨に舵を切りました。

成人については自己リスクで接種を判断すればよい話ですが、未成年者については保護者の方針が大きく影響することになります。そこで今回は、国立がんセンターが公表する様々な統計値に基づき、未成年者がワクチンを積極的に打つべきかどうか考えてみたいと思います。頻度をについて考えてみたいと思います。

尚、本検証はあくまで統計に基づく判断ですので、医学的な知見からの判断とは異なる可能性がある点を予めお断りしておきます。

子宮頸がん罹患リスク

 若年世代へのワクチン接種の是非を判断する前提として、まずはどの程度罹患する病気であるか、国立がんセンターが公表する統計値を確認します。

部位別罹患数

そもそも、女性にとって子宮頸がんがどれほど罹りやすい病気なのか全体像を確認すると、国立がん研究センターのがん情報サービスがホームページ上に掲載する上記のグラフから理解できるように、乳がんの概ね1/10、胃がんや肺がんの1/4、すい臓がんの半分で、胆のう・胆管がんと概ね同じ水準、肝臓がんや皮膚がんよりも統計上罹るリスクの少ない病気となります。

この点をもう少し詳しく確認するために、2016年から18年の3年平均の各年代の罹患数をグラフ化すると、以下のような結果が現れます。

女性の年代別がん罹患数

女性特有の乳がんや子宮周辺のがんは、成人病や生活習慣病と呼ばれる内臓や循環器系のがんよりも発症年齢が比較的弱年側に寄っていることが伺えます。その中でも、乳がんの圧倒的な罹患数と比較すると、子宮頸がんは子宮がんよりも少なく、女性のがん全体の2.2%、がん全体の中で15番目に罹りやすいというか逆に10番目に罹りにくいというか、全年代で捉えるとそのような発症リスクのがんとなります。

従って、子宮頸がんは乳がんほど罹るリスクを心配する病気ではないと言えるかもしれませんが、女性にとっては子宮というかけがえのない部位であることが、統計的なリスク以上に強く意識される要因になっているのかもしれません。

子宮頸がん年代別罹患数

 がん全体の中では相対的に罹るリスクの少ない子宮頸がんですが、年代別にみるとどのようになるでしょうか。

子宮頸がん罹患者数

このグラフも先の3年平均の罹患数を示したものです。がん保険などでよく保障対象外となる「上皮内がん」については含まれません。

実際に子宮頸がんに罹る女性の数は、14歳までは0人、19歳まで入れても2人となり、10代では悪性の子宮頸がんを発症することはほぼない状況ということになります。そして20歳から大学院を卒業する年齢に該当する24歳でも27人ですから、学生の内は子宮頸がんを患うことはほとんど心配する必要がないということが統計的には言えるのではないでしょうか。

グラフから明らかなように、25歳以降、特に30歳を超える辺りから罹患数が伸びますので、現代社会において女性が母親になることを意識する年齢で増える病気であるということができるかもしれません。ただそれでも乳がんと比較すれば、大部分の女性にとっては罹患リスクが高い病気ではないということは先に見た通りです。参考までに、全ての年代における罹患数を以下に掲載します。

子宮頸がん年齢別罹患数一覧

ちなみに上皮内がんも含めると、以下のような状況となります。厚生労働省の資料によると、上皮内子宮頸がんの5年生存率はほぼ100%であり、悪性腫瘍とは認識されないようですのでここでの検証には数に含めていません。

子宮頸がん罹患者総数

国立がん研究センターの統計を確認する限りでは、大学を卒業する年齢までは、子宮頸がんが発症するリスクは心配する程高くはないということが言えるのではないでしょうか。一般の女子学生にとっては、子宮頸がんを心配し過ぎるよりは、お酒の飲みすぎや寝不足、タバコのふかし過ぎなど生活習慣病のリスクを心配する方が、統計上合理的な態度であるように思います。

子宮頸がん死亡リスク

 ここまでは子宮頸がんの罹患リスクについて確認しましたが、死亡に対するリスクはどのようになっているでしょうか。

部位別死亡数

このグラフから分かることは、子宮頸がんで亡くなる女性の人数も、他のがんと比較すると相対的に多くはないということです。大腸がんで亡くなる方の概ね1/8、肺がんの1/7、胃がんの1/5で膀胱がんで亡くなる方とほぼ同数という状況です。公表されている1958年から2019年までの62年間の統計値では、子宮頸がんで亡くなる未成年女子はほぼ0、24歳まで含めてもほぼ0か0.1%となります。そもそも大学院を卒業する年齢までは、子宮頸がんに罹る可能性が低い以上、亡くなる女性もほとんどないことになります。

学生のHPVワクチンは何のため?

 これまでの統計上の事実から判断するに、大学を卒業する年代までの若い女性にとって、子宮頸がんワクチンを接種することは、現在のリスクを軽減するための手段ではないということです。全国すべての女子小中高生がワクチンを打ったとしても、同時期の罹患数の減少は最大2名にしかなりませんので、統計上はほとんど打つ意味がないということになります。従って、女子学生がワクチンを打つ目的は、将来起こり得る罹患リスクに備えるためということになります。

その場合の素朴な疑問として、25歳以降のリスクの軽減のために、10代からワクチンを打つことに医学的な意味があるのかということです。別の言葉で言い換えると、未成年の内には接種せず、成人を迎えた後に自己責任で接種したのでは遅いのかということです。

この点についての医学的知見はありませんし、にわかに調べても意味がないことは十分承知していますので断定的な結論は避けますが、厚生労働省の資料には、子宮頸がんの発生とヒトパピローマウイルス(HPV)感染について以下のような記述があります。

HPV感染概要_厚生労働省

・ HPV に感染して数年以内に、子宮頸部に軽度の異形成(CIN1)を生じることがある。ただし、このような病変やウイルスは、自然に消失することも多い。
・ 持続的な HPV の感染により、高度な異形成 (CIN2、CIN3) を生じることがあり、数年から数十年経た後、子宮頸がんに発展する可能性がある。
出典:CDC, Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventive-Diseases 12th Edition

つまり、25歳以降に発症する子宮頸がんは、中高生の頃からのHPV感染に起因する可能性があるということだと思います。保護者としては、その将来への予防効果に対し、未成年者のワクチン接種の意味を見出すかどうかという判断ではないかと思います。

予防効果とワクチン副反応

 大学院卒業の年齢までの女性の場合、統計上は、ワクチン接種は現時点での子宮頸がんの発症を予防するためのものではなく、母親となるべき年齢での罹患リスクを下げるために打つべきものであるということになります。

女児をもつ保護者としては、この辺りを念頭に接種の判断をすることになりそうです。子宮頸がんワクチンに関わる副反応などのリスクについてはここでは触れませんが、平成25年2013年以降8年の内に多くの知見が公表されていますので、政府の公式見解を中心に信頼性の高いと考える情報に基づき接種の判断を行うことになります。

残念ながらわが家には娘はいませんが、仮にいる場合には、現段階では「未成年の内は打たず、成人になったら自分で考えて打つか打たないか決めなさい。学生の内に打たないことを徒に怖がる必要はないと思う」と伝えると思います。特に女性の体が形成される小中学生での接種は積極的に避けるでしょう。それが統計的に合理的な判断のように思う一方、医学的見地からの判断ではない点への理解と、積極的勧奨へ舵を切る政府の方針とは異なる点も同時に受け入れなければなりません。

子宮頸がんワクチン接種に対し、今後コロナワクチン同様にマスコミなどでの強力な接種キャンペーンや、学校その他の社会生活の中での同調圧力が強まる可能性は否定できません。その場合、打たないことに対し、自分自身が納得できる確固たる意志を持つことが求められる状況になるかもしれません。ただ幸いにも現在の日本では、どのようなワクチンも、最終的には個人の判断で接種を選択することができる状況にあり、最後は自分次第ということになります。

女子中高生や大学生の皆さんも、政府発表や報道、保護者や学校の勧めに盲目的に従う前に、女性としての将来の在り方を見つめる一つの機会として、子宮頸がんをはじめとする女性特有の疾病について自ら調べ、考えてみてはいかがでしょうか。

ではまた次回。

がん情報センター/子宮頸部情報https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html

がん情報センター/がん統計資料ダウンロード
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#a7


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