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“補助金出すから牛殺せ”政府施策で酪農家自殺

記事:『しんぶん赤旗日曜版』
2023年1月15日号より
インタビュー: 小池晃氏

島根県邑南町(おおなんちょう)。自然豊かな里山で、米作りと和牛飼育の小さな家族農業を営んでいるのが、農民運動全国連合会(農民連) 会長の長谷川敏郎さんです。
真っ白な雪で覆われた水田の間を抜けて長谷川さんの自宅を訪ねると、まずは2頭の雌牛が迎えてくれました。
生後半年の子牛と母牛です。
次に案内された納屋にはウッドボイラーが設置されています。裏山(約7 ヘクタール)の雑木や間伐材を燃やし、その熱で調理以外の自宅の給湯や暖房を賄っています。
敏郎さんが妻、直美さんと続けるのは、繁殖和牛の飼育と棚田の米作り(1.2 ヘクタール)。牛のエサは稲わら・アゼ草など自給です。

田んぼの農薬は除草剤 1回のみで、肥料は牛糞と落ち葉などを発酵させた堆肥(たいきゅうひ)、米ぬか、ウッドボイラーから出た灰を活用します。
殺虫剤を使わないため春にやって来るツバメの数が増えました。納屋には毎年 30 カ所もの巣に130 羽前後が孵化して水田の虫取りをしてくれます。
長谷川さんが取り組む農業は、アグロエコロジー(農業生態学)と呼ばれます。「自然の生態系を守り、生かして循環型の有機的な農業を目指すものです」と長谷川さん。
長谷川「私が生態系の力を借りたアグロエコロジーを始めたのは30年前、お米の産直運動を始めたのがきっかけです。農薬を減らしてほしいと要望され、農薬は除草剤を1回にし、化学肥料はやめました。収量の乱高下がありましたが、やっと目指した循環型システムができました。」

小池「戦後日本の農政は、大規模化・企業化一辺倒です。
化学肥料や農薬をどんどん投入して、生態系を壊してきました。小規模・家族農業に対しては「効率が悪い」「時代遅れ」という攻撃がされて来ました。
でも国際的な流れや日本農業の未来は、長谷川さんがやられているような農業にあると感じます。日本の畜産・酪農はいま本当に危機的な状況に陥っています。」
長谷川「生乳の生産コストは1キロ 117 円なのに農家に支払われる総合乳価は105円。加工原料の乳価は82円です(20 年農水省調べ)。以前から赤字なのに物価高騰で生産コストが更に跳ね上がる。ところが乳価は1円も上がらない。酪農家の間では『朝4時に起きて牛舎へ向かう時、今日も赤字を作りに行くのかと思うと出口が見えない。借金を残さずどうやってやめるんだ』という話ばかりです。

宮崎県や宮城県では酪農家が自殺するという痛ましいことが起きました。この畜産危機の突を掲げて、11月30日には農林水産省前で緊急行動をやりました。」
小池「飼料代が 2 年前の1.5 倍で肥料代、燃料代、電気代も上がる。畜産危機は異常円安と世界的な物価高騰が原因です。餌も肥料も全て外国から買えばいいとの農政のツケが一気に回ってきた。政治が責任をとるべきです。」
長谷川「日本全体でおよそ 760 万トンの生乳が生産され、約半分が加工乳になっています。来年度の加工原料乳生産者補給金は、1 キロたったの49銭の引き上げです。
飼料代が牛乳1キロ 20円上がっているのにです。しかも対象数量を 15万トン減にした。生乳の需給調整を口実に1頭20万円で、全国4万頭殺せと。

補助金 15万円と生産者が積み立てた5万円です。生産者が責任を取れと言うのです。しかし政府は4,5 年前に『増やせ増やせ」と牛を増やしたんです。農民連は個人要望書を出す運動をしてきました。1人ひとりが運動の主人公として立ち上がらない限りは、この事態は切り開けないからです。畜産農家というのは敷居が高いんです。多くは地域の有力者で自民党議員とも関係が深い。でも実際に訪ねたら『待っていました』と。『おれは自民党員だ。何とかしろ』と書かれたものもありました。
小池「畜産は日本の農業生産額の36%を占めています。更に今回の畜産危機の根本には、飼料・肥料の外国頼みという問題があります。日本の食料自給率は38%です。種子や肥料や飼料の大半も海外に依存しており、実質的な自給率は1割と言う人もいます。」

長谷川「ウクライナ危機で、食糧自給率の実態が明らかになりました。実は1980 年頃の国の予算では農林水産業3.7兆円、軍事費 2.5兆円でした。ところが23年度予算案は農業予算 2.3兆円で軍事費 6.8兆円と逆転してしまった。その間に新自由主義の政策に基づいて、輸入農産物がどんどん入り、種も肥料も農薬も外国頼みになった。
1961年に農業基本法を作った時、選択的拡大ということで、畜産・酪農を増やす方向を打ち出しました。しかし、麦などの穀物や大豆、飼料は外国に頼ればいいとされた。
その結果がこの畜産危機です。
気候危機打開の関係でいえば、田んぼに有機物を入れることは、炭素を土壌に貯蔵して大気中に二酸化炭素を出さない役割があります。しかし、この30年で、日本の田んぼに入れる堆肥は4分の1に減りました。堆豚肥を入れないと土壌の力はどんどん衰えます。

酪農家も含めて畜産農家がいなくなったら、肥料に使う家畜の糞尿まで外国から買うのか。農業のやり方も農政も抜本的に変える、二重の意味で歴史的転換点に来ています。」
小池「岸田政権は、今5兆円の軍事費を5年間で倍増しようとしている。農業予算だけでなく、社会保障を含めた暮らしと経済が壊滅します。『安全保障3文書』で集団的自衛権を行使できるようにするのが最大の狙いです。日本を守るどころか、日本中が戦場になってしまいます。
食料自給率が38%、エネルギー自給率は1割程度、海岸線には原発がずらりと並んでいる。こんな国が戦争を始めたら、ひとたまりもありません。国民を守るというなら、農産物の価格保障・所得補償によって、食糧自給率を引き上げることを国の最大の目標にしないといけません。」

小池「3.11東日本大震災やコロナの経験を経て若い世代、子育て世代の中にも「都会暮らしでなく、農山村で農業をして暮らしたい』という思いは広がってきています。しかし、今の農政のもとでは続けていくことができない。政治が変われば、若い世代の農業をやりたい思いを後押しして、大きな可能性を開くことができると思います。」
長谷川「どんどん産地が潰れて、自分たちで作るしかない、と。農作業の手伝いをLINEで呼びかけると、百数+人が集まる。これもアグロエコロジーだから集まるんです。
化学肥料と農薬をまいて下さいなんて言ったら誰も来ません。里山を生かして、燃料は山のモノを使う。牛の飼料も国土をうまく使えば可能性はある。アグロエコロジーの発展の可能性は大きいんです。」

小池「気候変動対策にもなる、食の安全にもなる、雇用も生み出す、地域経済や地域社会と文化を元気にしていく力になる。農業の役割を生かせば一石四鳥、五鳥です。長谷川さんが話されたことが本当の安全保障です。敵基地攻撃とか軍事費 2倍は、安全保障への逆行です。」
長谷川「政府は農業のどの分野でも徹底して予算を削り、支援をやめていく方向です。農業を守る運動を、消費者と一緒に広げることが大事だと思っています。」
小池「日本米価が暴落し畜産酪農の危機と言われながら
MA 米の価格は国産米の1.4 倍相当です。対米従属と大企業本位の政治の歪みが最も表れている分野の一つが農業です。農業を支えていくことは、この国を作り変えるくらいの大きな力を持つという事をつくづく感じています。」

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アグロエコロジーへの挑戦

この記事を最初に読んだとき
一頻り泣いた

なぜ彼等は
自殺しなければならなかったのか

私は
それは
彼等がヴィーガンではなかったから
などとは思わない

国の施策に翻弄された挙句
消費者の為に人生の全てを捧げ
消費者の為に自死を選んだ

ヴィーガンを目指すときには
自分だけ肉食や動物搾取をやめれば
それでよい訳ではなく

畜産なら畜産の
抱える問題の奥深いところまで
入り込んでいかなければ
入り込む勇気がなければ
本当の解決は無いだろうと思う

アグロエコロジー
農業生態学

自然の生態系を守り
自然の力を生かし
循環型の有機農業を目指すなら
その一環として酪農を営むことが
悪いこととは思わない

牛を、食べなければいい
牛を、殺さなければいい
不必要に、乳を搾らなければいい

ヴィーガンだって
牛や動物たちと共存しながら
アグロエコロジーに取り組むことは
可能だろう

共産党の記事ということで
敬遠される方も居られるだろう
それでも私は
このアカウントに
この記事を残したかった

今まで読んで下さっていた方々が
離れていったとしても
それはそれで仕方のないことと思う

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2023.01.14