「番外編」 映画『シャイロックの子供たち』ネタバレあらすじ・西木のラストを考察!『ヴェニスの商人』の本当の意味は?

映画『シャイロックの子供たち』ネタバレあらすじ・西木のラストを考察!『ヴェニスの商人』の本当の意味は?

© 2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

『半沢直樹』や『下町ロケット』などの原作者・池井戸潤の小説『シャイロックの子供たち』が映画化!2023年2月17日についに公開されました。 本記事では映画『シャイロックの子供たち』のあらすじをネタバレありで全編解説!相関図も含めて人物関係を整理します。後半には原作小説のラストも紹介しているので、映画とストーリーを比較してみてください!

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映画『シャイロックの子供たち』あらすじ

東京第一銀行・長原支店。ここには、出世街道を外れた課長代理・西木雅博をはじめ、業績のためにはパワハラも辞さない副支店長、真面目な女性行員、いつも成績トップのエースなど、さまざまな行員たちがそれぞれに事情や思いを抱えながら働いています。 ある日、そんな長原支店で100万円の現金紛失事件が発生。女性行員・北川愛理のバッグから当日の日付の入った札束の帯封が発見され、疑いがかかります。北川の上司である西木は、現金紛失事件の真相を追うことに。しかし、西木は突然失踪してしまいます。 やがてある小さな疑問から、現金紛失事件の裏に隠された驚くべき「不正」が明らかになっていき……。 登場人物相関図はこちら

感想・レビュー

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『シャイロックの子供たち』の総合評価

4.5 / 2人のレビュー


30代男性

公式から告知されていたとおり、完全に別物の『シャイロックの子供たち』。オリジナルキャラが根幹に関わるし、ラストも現代らしいアレンジだなと思いました。普段は「原作に忠実に!」派ですが、シーン構成を大きく変えた分、原作の難解な部分がわかりやすくて良かったです。雰囲気は原作とかなり違うので、未読の人はあの重苦しさを体験してほしい!


30代女性

原作は淡々としたコンゲームで、映画は人間ドラマに振り切った印象。章立ての短編集を映画化しただけあってそれぞれちゃんとキャラ立ちしてる!たぬき親父たちの騙し合いが見ていて楽しい。「半沢直樹」でも思ったけど銀行の闇は怖すぎる……。自分はドラマ版キャストが定着してたから、最初だけ誰が誰だか状態になってしまった。

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映画『シャイロックの子供たち』結末までのネタバレ

プロローグ

シャイロック、それは『ヴェニスの商人』に出てくる悪徳な金貸し。検察官の黒田道春は、妻と一緒に観劇に行って改めて考えていました。 ー金は返せば良いと言うものではない。ー 黒田はかつて支店で働いていた頃、不正をある男に見つかって見逃してもらいました。金曜日にATMからお金を抜き土日に競馬に注ぎ込んで、月曜日にお金を返していたのです。

【起】10億円のあやしい融資

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それから何年後か、長原支店では業績を上げるためにパワハラが横行していました。特に新規開拓班へのプレッシャーはきつく、1人は病みかけているほど。そこに異動したての滝野真は、エースとして期待を背負っていました。 ある時副支店長から、早めに融資できそうな所はないのかと焦らされます。そこで滝野は「江島エステート」という会社が10億の融資を望んでいると発表してしまいました。 しかし江島エステートは事実上倒産しており、かつての取引先の社長・石本浩一のペーパーカンパニーと化していたのでした。滝野は石本に弱みを握られていたため、ペーパーカンパニーであるという事実を知りながらも滝野は江島エステートへの融資の稟議を書いたのです。 稟議は不審な視線を受けつつも結局通り、10億円の融資は決行されてしまいました。

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【承】2つの大きな事件

①100万円紛失事件

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10億円の融資を受け取ったにも関わらず石本浩一の金回りは危うく、すぐに利息の支払いが滞りかけていました。滝野は支払いを肩代わりしてくれないかと依頼を受けます。滝野は結局、自分が不正に加担したという事実を隠すため、支店から100万円を盗み利息を払いました。 100万円が消えたことで支店は大騒ぎ。100万円を顧客のもとへ届けるはずだった田端洋司は謝罪し、ひどく落ち込みます。私物の検査まで行われ、北川愛理が疑われることになりました。しかしこれは、北川を妬んだ女性行員の悪戯でした。 上司である西木雅博は北川の味方をします。結局100万円は見つからず、九条支店長と古川副支店長、西木たちが私財で穴埋めしました。 行員には100万円は見つかったと説明しますが、不信感が募ります。根本的に事件は解決していないため、西川と北川は調査を続けました。 そんなある日西川は、ヤクザに誘拐されそうなところを滝野に助けられます。実は西川は、兄の会社が金を借りるとき連帯保証人になっていたため、借金取りに追われていたのでした。

②10億円の不良債権

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数ヶ月後、江島エステート宛の郵便物があったため、不在だった担当の滝野の代わりに田端が住所まで直接届けに行くと、そこはボロアパート。とてもオフィスとは思えない場所でした。 さらにその少しあと江島エステートが倒産し、もとから担保がほぼなかった10億円の融資はすべて不良債権と化してしまいました。 あまりの被害額に、黒田たち検査部が検査に入りますが、黒田は過去の不正を九条支店長に見られており、それを引き合いに追い返されてしまいます。

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実は西木は、ゴミ箱を調べた際に滝野から江島エステートに宛てた100万円の振り込み領収書を見つけていました。さらに北川に嫌がらせをした女性行員を問い詰め、帯封が食堂に落ちていたことも知っています。融資で使われた印鑑証明書が偽物だったことも突き止めました。 不審なボロオフィス、滝野による100万円の入金、不審な稟議の承認と突然の不渡り。糸と糸がつながり、3人は滝野を居酒屋に呼び出します。しかし滝野はろくに話を聞かずに、走って去ってしまいました。

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【転】黒幕はまだ奥にいる

西木はそもそも無理な融資が通ったこと自体に疑念を抱き、今度は自店の上層部を調べます。すると予想通り、九条支店長が石本浩一とつながっていました。 出世コースが断たれ、次には子会社へ出向することがほぼ確定している九条支店長はせめて裏金を溜め込もうと、石本浩一と組んで架空融資に加担していたのです。 それを突き止めた西木は、再度滝野を呼び出します。そして滝野も九条と石本に利用されていたのだという真実を伝え、2人がキャバクラから出てくる証拠写真も見せました。 「どうしたら良いんですか」と問う滝野。西木は「それはお前が決めることだ。」と答えます。西木自身は「基本は性善説。やられたら倍返しってな。」と何やら企んでいるようでした。

【結】西木の倍返し

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西木はちょうど相談を聞いていた飲み友達の老人・沢崎肇と組んで九条支店長と石本から金を騙し取ろうと企みます。 沢崎肇はやっかいなビルを所有していました。それも建築士が不正を働き、耐震構造に問題があるビルです。西木はそのビルを、さも何も問題がないかのように見せかけて、2人に売り付けようと考えました。 リスクは2つ、もし2人が建築構造がわかるなら図面を見れば欠陥に気づいてしまうことと、不正を働いた建築士がノイローゼ気味だったため警察に自首しようとしていたことです。 しかし図面の問題には気づかれず、無事売却は完了。建築士は売却直後に自首しました。 大金を手にした沢崎は、西木にお礼のお金を渡します。最初は断る西木でしたが、借金のことを引き合いに出され、受け取ってしまいました。

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エピローグ

滝野は自首して刑務所に入り、3年の刑期を終えて出所していました。刑務所の前で家族が、あたたかく彼を迎えてくれています。 検査部の黒田も過去の不正を自白して、ペットショップで働いていました。銀行員は続けられませんでしたが、その心持ちは清々しそう……? 北川と田端は、2人で『ヴェニスの商人』の観劇に来ていました。エスカレーターを登る途中、北川は西木を見かけます。実は西木は銀行員をやめて、行方がわからなくなっていたのです。慌てて追いかけましたが見当たらず、諦めた2人。西木は高そうなスーツを着て、颯爽と歩き去りました。

登場人物相関図

【考察】西木はその後どうなったのか?

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西木は課長代理として出世コースを外れ、多額の借金まで抱えていました。しかしそれでも「やってない」と言う部下の訴えを信じてくれる、心優しい人物であったように思います。 しかし銀行員というのは大金を扱う仕事。常に誘惑が近くにあるのです。西木もまた誘惑に負け、「シャイロック」となってしまった1人ではないでしょうか。 そう考えると北川が遭遇した彼は、すでに金持ちになっていて、その後に待ち受けるのは九条や石本と同じような、そしてシャイロックと同じような破滅だと考えられます。 ちなみに原作での西木はもっと早い段階から失踪しており、より怪しげなキーパーソンとなっていました。

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