プーのこと①

映画「犬部!」を初日から3回観た。
子供の頃から動物が家にいた私にとって
共感できる部分もたくさんあるので
初回は涙が無意識に流れて来たシーンもたくさんある。

父親が動物好きで子供の頃から犬や小鳥が常にいた。
私が小さい頃にいた犬は雑種の白い子で
私が生まれた時から飼っていたらしい。
私が16歳の時に虹の橋を渡った。

当時は「犬は外で飼うもの」という事が当たり前で、
基本拾うか貰うかした雑種犬が多かった。
血統書付きの純血種(要は犬種の名前があるもの)は
お金持ちの人しか飼えないイメージだった。

その犬も外で繋がれていた。
(犬小屋ではなく、自転車置き場のような屋根のある
そこそこ広めのスペースではあったが)
散歩もほとんどしないし
人間が食べているものと同じものを食べ
今では当たり前になった飼い方など
したことがなかったのに16年間元気そのものだった。

しかも陽気で人好きで
大してかまってももらえないのに
私たちが近づくと大喜びでシッポを振って
はしゃいでいた可愛い子だったなぁと思い出す。

それでも老衰で亡くなる直前は
父も出来るだけ付き添っていた。
私が高校生で部活を終えて帰ったら
冷たくなっていた。

その辺りが映画の中のエピソードと被って
寂しくなった気持ちを思い出した。

そこからしばらく犬は飼っていなかったが
私が半ば強引に知り合いの紹介で生まれた雑種犬をもらい受け
家に連れて帰った。

昭和40年代生まれの私が子供の頃は
野良犬なんて普通にそのあたりをウロウロしていて
気のいい子など下校途中の子供の後ろをついてきて
ちゃっかり給食の残りのパンをもらったりして
可愛がられていたこともよくあることだった。

校庭に乱入してきて、授業そっちのけで夢中になったことも
一度や二度ではない。

そんな時代ももう終わりがけの頃
飼い犬が知らない間に野良犬に妊娠させられ
生まれた子犬の内の一匹が「プー」だった。

「どの子がいい?」と言われて
駆け寄って来た子が5~6匹ほどいたか。
元気に一番に駆け寄って来た子、
興味なさげに全然違う方向へ行く子、
私の匂いを嗅ぎまわる子。

いろんな子がいる中で、
最後の方によちよちと駆けて来た子がいた。
生まれつき足が悪かったのか
ほんとうによちよちと走って来て、
私の傍で匂いを嗅ぎだした子を見て、
すぐ、この子にしようと思った。

他の元気な子はきっとすぐに貰い手が見つかるだろう。
でもこの子が足に問題があるとしたら
最後まで残るかもしれない。

そう思うと、この子がいい、と思った。

実際に母犬の飼い主は
「その子、ちょっと足が悪いみたいだけどいいの?」
と心配してくれたが、
「いい、というかこの子がいい」
と言って、連れて帰った。

コロコロして毛がふわふわで。
小さくて可愛くて。

抱っこして帰った時の事は今も覚えている。
あの、颯太と柴崎が子犬を抱いて帰るシーンが
その時の事と被って見えた。

家に連れて帰ると、案の定母親に怒られた。
私も成人していているのに
久しぶりに怒られた。
父親にも文句を言われた。

だけど、そこは「動物好き」な父親だし、
連れ帰ったものを今さら捨てるわけにもいかない。
ということで、無事、うちの家族になったのだ。

名前はいろいろ考えて
茶色の毛並みとムクムクした感じなどから
直感で「プー」と名付けた。

つづく

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