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「グロースマインドセット」に気をつけろ


第5水準のリーダーシップ

『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』で紹介されている調査結果によると、GOODからGREATへと飛躍を遂げた企業は例外なく「第5水準のリーダーシップ」を備えた経営者が率いていたそうだ。これがどのようなリーダーシップなのか短い説明で意を尽くすのは難しいが、

  • どんなに困難な目標であっても必ず達成できるという強い信念を持っている

  • しかし、その目標達成には極めて厳しい道を進まねばならない覚悟を決めている

  • 職業人として上記の不屈の精神を備えている一方で、一個人としてはとても謙遜深く傲慢な点はない

となる。
この第5水準のリーダーシップが以前読んだ下記書籍に出てくることを再発見した。この本では、『ビジョナリー・カンパニー 2』の著者らが発見した第5水準のリーダーシップを簡単に紹介した後に、「それこそがグロースマインドセットなのだ」と我田引水してあり、再読したとき大変気になったので、少しだけ紹介する。

グロースマインドセットとは

グロースマインドセットを簡単に説明すると「人の能力は可変なので、誰でも努力で能力を向上させて成功できる」と考える思考パターンのこと。
逆に「人の能力は生まれつきの才能に左右されるので、努力で能力を伸ばすには限界がある」と考える思考パターンのことで、この本では「硬直マインドセット」と表現している。

この本は突っ込みどころが盛りだくさんで挙げだすときりがないが、例えばグロースマインドセットの持ち主だったから成功した有名アスリートの例として、モハメド・アリ(ボクシング)、マイケル・ジョーダン(バスケットボール)、ベーブ・ルース(野球)などが登場する。おいおい、、、

また、逆に硬直マインドセットの有名アスリートとしては、マイク・タイソン(ボクシング)、ジョン・マッケンロー(テニス)、パトリック・ユーイング(バスケットボール)、ペドロ・マルチネス(野球)などが挙げられている。おいおいおい、、、全員超一流のアスリートですやん!

ただし、著者は逃げ道を用意しており、「誰それはグロースマインドセットの持ち主、誰それは硬直マインドセットの持ち主」とは明言していない。文章の構成上、読者にそう受け取られるように巧妙に記述しているだけである。

グロースマインドセットに対する批判

グロースマインドセットの考え方に魅力的な面はあると思うが、私個人としては危険な側面の方が大きい気がする。考えられる批判としては、

  • 個人の努力次第で能力が向上すると考えることの裏返しとして、「能力が向上しないのは努力が足りないからだ」と、周囲の環境などの制約を無視して、個人への過度な責任転嫁がおきやすい

  • 「努力次第で誰でも成功できる」と考えることが、過剰な競争環境を醸成することにつながってしまう

などが考えられる。例えば、育児や教育の場でこの言葉(グロースマインドセット)が使われる際には、育てる側や教える側の言い訳になっていないか注意が必要だと思う。

また、そもそもグロースマインドセットの研究成果自体が疑わしいとする指摘もあるようで、少し調べたら下記の記事などが見つかった。心理学研究にはつきものだが、実験結果が再現できない結果に統計的な有意差がない、といった指摘があるようだ。

こうした「理論のようで理論ではなく、自己啓発的な何か」は扱いが難しく、私としては迷信と同じ扱いがちょうどよい気がしている。科学的な裏付けなどの根拠はないが、その慣習や慣例を全く無視してしまうのは気分が悪い、そんな感じのものだと思う。こうした距離感や付き合い方が適当なのではないかな。


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