社畜化への道は「エンゲージメント」で舗装されている
初代「信長の野望」の思い出
中学生の頃に初めてパソコン(三洋製のMSX)に触れ、BASIC言語を学んだのだが、それ以上にゲームもやった。ボコスカウォーズ、ハイドライド、ドラゴンスレイヤーなどと共に最も熱心にやったのが「信長の野望」(初代)である。
今となっては説明書をちゃんと読んでなかっだけだと思うが、この「信長の野望」は途中経過をセーブすることができなかった。クリアまで長時間を要するため、遊ぶのはいつも日曜日。早朝からゲーム開始して、夕方までやり続けた。
それでも普通にプレーしたのでは全国統一は難しかったが、このゲームにはバグがあり、それを利用するとゲーム中盤以降で忠誠心が無限大の軍隊を作ることが可能で、この軍隊が無人の野を行く勢いで敵をなぎ倒した。この裏技を使ってやっと全国制覇したのだが、終盤は作業ゲーで、面白みを感じることはできなかったと思う。
それはともかく、忠誠心が極度に高い兵士を作り上げることができれば、驚異的な戦闘力を発揮するという示唆は興味深かった。
例えば、宮城谷昌光の作品を読むと、始皇帝で有名な秦の軍隊にはそうした面があったように感じるし、現代でも宗教が絡むと少数でやっかいな力を発揮するのは周知のとおりである。
そして、この忠誠心を少し表現を変え、現代企業に当てはめたのが「エンゲージメント」ではないかと思う。
エンゲージメントを高めろ!
私が所属するアンコクメガコーポでも世の中の流行りに漏れず、経営幹部が口を開けば2言目か3言目には
「エンゲージメント! エンゲージメント!! エンゲージメントを高めろ!!!」
とやかましい。エンゲージメントスコアがKPIにもなっている。
しかし、ゲームの世界で兵士の忠誠心を高めるには金か米を与えればよかったが、企業が従業員のエンゲージメントを高めるにはどうすればよいのだろうか?
この点に関して、最近ツイッターで下記のリンク先情報が流れてきた。エンゲージメント向上策として、やれウェルビーングだ、やれマインドフルネスだと様々な手法が取り上げられているが「はっきり言って効果なし(大胆な意訳)」だそうだ。
やっぱ、そうだよねぇ。もちろん、海外での調査例だし、これだけで決定的な結論にならないと思うが、1つの事実として認識しておくべきだろう。ローマは1日にしてならず、千里の道も一歩から、学問に王道なしというように、どんなことでも簡易で即効性のある手段など存在しないと考えておけば間違いない。
「マインドフルネス」の危険性
さて、従業員のエンゲージメント向上策の1つとして「マインドフルネス」がある。人気漫画・アニメ『葬送のフレーレン』がこのマインドフルネスを表現していると一部界隈で評判になっていたこともあり、マインドフルネスとは何か?を私なりに調べてみたところ、どうやら禅でいう「生悟り」のことらしい。「悟り」ではなく「生悟り」だ(大事なことなので2度言いました)
「生悟り」とは真に悟りに達しているわけではないのに、本人は悟った気になっている状態のことで、これが偏狭な人格の人物を生み出す危険があって非常にやっかいらしい。
あ、もちろん、フリーレンほど高齢で様々な人生経験を積んだ人物なら本物の悟りに達している可能性はある。ここでは作品の登場人物の批評をしているのではなく、あくまでも現代で便利に使われているマインドフルネスなる概念のことを取り上げているだけなので誤解なきように。
そもそも悟りというのは厳しい修行の末に高僧が到達できる境地のはずなので、それをマインドフルネスと言い換えるだけでその辺にウジャウジャいる一般人が体得できると考える方がおかしい。だから「生悟り」なのだ。
この生悟りには人格のゆがみを生み出すリスクの他にも、企業が従業員に押し付けることによって生じるリスクがあるとする批判がある。
例えば、『スペクテイター〈51号〉自己啓発のひみつ』に書かれているところをによると、
だそうだ。平たく言い換えると
「マインドフルネスを利用してエンゲージメントを高め、会社に従順でストレス耐性の高い社畜を大量生産する」
になると思うが言い過ぎだろうか。
世間の流行だからとか、エライ人が言ってるからとかで、ほいほいとエンゲージメント施策に乗っかっていると、その道の先に待っているのは社畜化かもしれない。
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