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陰謀論ではない本物の陰謀

以前、『ストーリーが世界を滅ぼす』に登場する代表的な陰謀論「地球平面説」を紹介したが、同書には本物の陰謀として、ロシアによるアメリカ世論の分断工作が登場する。

その陰謀はロシアのサンクトペテルブルクに拠点を持つIRA(インターネット・リサーチ・エージェンシー)によるもので、同社が作成したフェイスブックグループが世論工作の手段として利用され、下記の事件が引き起こされたとしている。

2016年5月、アメリカ・テキサス州ヒューストンのイスラム教ダアワセンターに二つのデモ隊が終結した。
1つは、テキサスの伝統をたたえ、銃を所有する権利や移民問題に関心を持つ「ハート・オブ・テキサス」というフェイスブックグループのメンバー。
もう1つは、移民の権利保護や銃規制に関心をもつ「ユナイテッド・ムスリムズ・オブ・アメリカ」という同じくフェイスブックグループのメンバー。
二つのデモ隊は警官の頭越しに怒鳴り合っていたが、大きな混乱はなく、終わった。

『スリーリーが世界を滅ぼす』より概要を引用

同書では、こうしたデモがアメリカでは日常風景だとしながらも、それを操っていたのがIRAという海外組織であり、アメリカ人同士を反目させることに実際に成功していることを危険視している。

ロシアによるこの種の分断工作については、例えば下記のメディアでも指摘されている。

これは本物の陰謀だが、それを否定したい勢力からは「陰謀論」として指弾される向きもあるようだ。ネットによる情報流通が過度に発達した現代において、ファクトとフェイクを見極めるのは非常に難しいと言わざるを得ない。

アメリカ世論がいかに分断されてしまっているかについては、前回の大統領選挙時の混乱で世界中の人の印象に残っていることと思う。次回の大統領選挙に向けた動きは連日報道されている通りだが、共和党の予備選挙はトランプ前大統領が制しそうだ。

トランプ前大統領はアメリカ分断の象徴的存在ともされ、この人物を心から毛嫌いする層が一定数いる一方で、それと同じくらい大勢の熱狂的な支持者がいる。
行き過ぎたグローバリズムの反動として、一時的にナショナリズムが強まることは自然であり、また必要な面があると私は思うが、アメリカの国力衰退につながる過度な分断は望まない。
日本の同盟国であるアメリカの存在は、日本の平和維持の基礎であり、次回の大統領選挙については他国民ならがわがことのような関心を持っている。さて、これからどうなることか。

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