見出し画像

続々「グロースマインドセット」に気をつけろ:山中鹿之助編

一部界隈でもてはやされている「グロースマインドセット」、提唱者キャロル・ドゥエックの原著タイトルは"MINDSET The New Psychology of Success"だが、この方法論で人生での成功(Success)は本当に達成できるのだろうか?

今回も「グロースマインドセット」の持ち主を歴史上の人物から探す

「グロースマインドセット」とは何か?は様々な説明ができるが
「失敗を恐れずに挑戦し、仮に失敗してもそれを糧として次にいかし、あきらめずに成功を目指し続ける姿勢」
と言ってもよいだろう。
このグロースマインドセットに合致する人物として今回取り上げるのは山中鹿之助だ。

山中幸盛(通称:鹿之助)は戦国時代後期の武将で、信長・秀吉・家康といった超一流武将には知名度で劣るが、江戸時代には「主君に忠義なる武士のかがみ」として高い評価を得る人物だった。

月(新月)を信仰していたと言われ、滅亡した主家(尼子家)の再興を誓い「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」と祈った逸話で知られている。この言葉にも見られる通り、どんな困難が待ち構えていようとも恐れない精神力を持ち、人生をかけて行ったその行動は、まさに山中鹿之助がグロースマインドセットの持ち主であったことを示していると思う。

主家である尼子家が滅亡したのは山中鹿之助が22歳のときだとされる。その後、39歳(諸説あり)で死亡(だまし討ちに殺された)するまでの半生はほぼすべてが尼子家再興のために捧げられたと言ってよいだろう。詳しくは前掲のWikipediaなどを参照してほしいが、鹿之助の前に立ちはだかった毛利元就、吉川元春、小早川景隆といった名だたる名将達の前に、その祈願はついに果たされることなく終わった。

この山中鹿之助の生涯について歴史作家・海音寺潮五郎は次のように評している。

その精神の強靱さは、驚嘆すべきものがある。日本歴史上おそらくは類がないであろう。考えねばならないのは、こうした極端なねばり強さは、人生においてはしばしばもっとも恐ろしい不運のもととなるということだ。
尼子家の再興ということが、それほど意義のあるものであっただろうか。ぼくには疑問に思われるのである。(中略) 彼がもし志を転じて、自分自身の運命をひらくために働いたら、五十万石や六十万石の大名になることは易々たるものであったろう。

海音寺潮五郎『武将列伝』「山中鹿之助」より

百折不撓の極端なねばり強さは人生の恐ろしい不運のもとになるという。これはよく味わうべき見解だと思う。
非業に死んだ山中鹿之助の人生が成功だったとは呼べまい。しかし、その百折不撓の精神で主家に尽くしたからこそ、その名は500年後の今日まで伝えられた。

人生の成功とは何か、様々な意見があると思う。今回も読者の判断に任せたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?