ダヴィンチの、「生」を超えたデッサンに震える。

" The Virgin and Child with Saint Anne and the Infant Saint John the Baptist ('The Burlington House Cartoon')"

Leonardo da Vinci
about 1499-1500
National gallery / London

2019年はダヴィンチの没後500年で、NHKなどで「ダヴィンチ特集」をよく見かけた。しかし、この絵が映されることはついに一度も見なかった。同じ部屋にある「岩窟の聖母」よく映されるにも関わらず。

けれども、私はこの絵を語らずにはいられない。それは、この絵を見た瞬間に、生を超えた畏敬が私を襲ってきたからだ。当たり前だが、絵の中のそれは紙に描かれた存在であり、生物として生きていた事は一度もない。しかし、この顔は生きている。いや、生きている以上に、その表情と会話さえできる。左から2番目の女性の、「笑み」とも「企み」とも取れる表情は、あなたの心のうちを見透かしているよ、とでも言うような、不敵なメッセージを鑑賞者に送っている。

多くの作家は、「神」を表現する為に「人」という器を用いて描いた。しかし、ダヴィンチのこの絵は、「人」を描くために畏れ多くも「神」という器を用いたと思えてならない。

【美術館情報】



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