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〜ここにはないもの〜 #5


小さい時の


" あやめはお父さん子だね "


って言われるのが嫌いだった。
別にお父さんが嫌いなわけではない

お父さんにおんぶされるのが好きで、
お父さんにたかいたかいされるのが大好きだった


でも同じくらいにお母さんも大好き


ただ…

" 〇〇はお母さん子だね "

と言われるのが羨ましくて…

今ではそんなことないってわかるのに、
当時の私は、お母さんはお兄ちゃんのことが好きで私は愛されてないんだ…と私は思っていた


〜ここにはないもの〜 #5


3人が見守る中、
1輪の白い百合は静かに風に揺れていた

それは何かを僕らに主張しているようにも見えた



○○:ここだったんだ…

あやめ:うん、お母さんが倒れてた場所…

さくら: ……

あやめ:朝の散歩中にここで…

○○:行き?

あやめ:うん、そう…

○○:そっか…

さくら:行き…?

○○:あ…うん。親父と母さんはね、行きは別々に出発するんだよ

あやめ:お父さんはお母さんの10分後とかにでるんです、それで見晴らし台で合流して帰りは一緒に歩いて帰るんです。

さくら:そうだったんですか…

あやめ: ……

〇〇:少し冷えてきたし…行こうか…




あやめの肩をポンポンと叩き、車へ促す  


僕はチラッと振り向き
見晴らし台の頂上をみた

そこには…



" あの時 "みたいに母の背中がある気がした





……



《 目的地に到着しました 》

運転を再開してしばらく、
無言になって車内でナビが僕たちを目的地についたことを伝えた

駐車場に車をとめ、荷物をおろす





あやめ:ただいまー

親父:おう、…おかえり。

○○:ただいま…

親父:おかえり。久しぶりだな!

〇〇:少し痩せたね…

親父:はははっ、父さんだってそりゃ歳さ笑

久しぶりにみる父は、
いつの間にか白髪が増えていた


〇〇:いまお付き合いしてる人を連れてきたんだ

親父:後ろの人だね。

〇〇:うん、そう。

さくら:あの…○○さんとお付き合いしています。
   遠藤さくらです、この度は…(お辞儀)

親父:遠藤さん…わざわざすみませんね。
  どうぞ、ゆっくりしていってください。

あやめ:さくらさん、遠慮せず…

さくら:お邪魔します…

親父:〇〇…

〇〇:うん?

親父:母さんに線香あげてやってくれ…


『当たり前でしょうよ』
と言いそうになったが親父の顔を見ると

『うん、わかったよ…』
とこたえるしかできなかった












……



さくら:きれいな人…

あやめ:初めて見た人はみんなそういいます 笑


母の遺影をみてさくらは驚いていた



○○:まぁこれは若い時の写真だけど…

あやめ:死んだらアイドル時代の写真を遺影にしてってよく言ってたもんね 笑

さくら:そうだったんですね…素敵なお母さん…
 (遺影に)はじめまして、遠藤さくらです。

あやめ:母のお墓もあるので時間あったらそちらにもお願いします。母、喜ぶと思うので…

さくら:はい…

〇〇:明日にでも墓参りしようか

さくら:うん。

あやめ:さくらさん、夜ご飯の支度手伝ってくれませんか?

さくら:はい、もちろん。

あやめ:お兄ちゃんのこと色々聞きたいので 笑

さくら:わかりました 笑

〇〇:えっと、自分は?

あやめ:お父さんの後に風呂入ればー?笑

〇〇:あー、わかったよ 笑

あやめ:笑笑 じゃあ、いきましょー!


そういって2人は買い物に出かけていった
親父は風呂に入っている

大きな平屋の家は一気に静かになった


〇〇: ……



ただいま、母さん


その…


でかいこと言ってたけど、夢叶わなかったわ…



えっと、、、






親不孝でごめんね…





僕はしばらくの間、母に謝り続けた



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