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映画「侍」感想 ~武士の時代の終わり~

※映画「侍」のネタバレがありますので、ご注意ください。

1.映画「侍」概要と周辺の話

「侍」は、岡本喜八監督、橋本忍脚本、三船敏郎主演の大作時代劇映画で、現在は「U-NEXT」で配信中だ。(2022年12月現在)

岡本喜八監督は、私の好きな映画監督の一人で、個人的にはまだ全作品を見ているわけないけども、「日本のいちばん長い日」は私が見た日本映画の中でオールタイムベストの1本だと思っている。ほかにも「独立愚連隊」「血と砂」「殺人狂時代」「激動の昭和史 沖縄決戦」「大誘拐 RAINBOW KIDS」など多岐にわたる多彩なフィルモグラフィーのなかで、独特のコミカルさ、間抜けさがあり、個性的でどれも面白い!
最近だと、「シン・ゴジラ」にも監督ご本人のお写真が冒頭に登場して少し話題となった。

また、本作の脚本家の橋本忍は、言わずもがなだが日本でもっとも優れた伝説的な脚本家だ。残した作品名だけでいっても、とにかくすごい。

橋本忍の作品を振り返ると、「信頼できない語り手」を映像的に表現した初めての映像作品と言われる実験的な「羅生門」から始まり、「生きる」「七人の侍」「生きものの記録」「蜘蛛巣城」「悪い奴ほどよく眠る」といった主要な黒澤明作品群を手掛けた。そのなかでも「隠し砦の三悪人」は「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」のストーリーの骨子となった。R2-D2、C3POのモデルが農民の千秋実と藤原釜足だとは。戦争映画では先述の「日本のいちばん長い日」「私は貝になりたい」や、のちの崖っぷちミステリーの原点とでもいうべき「ゼロの焦点」などの松本清張もの、「切腹」「仇討」「侍」「上意討ち 拝領妻始末」といった「組織につぶされる個人」という新しい視点による悲劇的時代劇の数々もある。ここまででも、すでに世界中で誰もかなわぬほどのキャリアの円熟を迎えていたのに、そこから更にダメ押しに後期の傑作「日本沈没」「砂の器」「八甲田山」を連打した。橋本忍の作品を振り返ることは、日本映画の黄金期を振り返るのとイコールであり、唯一無二の脚本家だ。

三船敏郎も、もちろん言わずもがな。

岡本喜八監督、橋本忍脚本、三船敏郎主演。期待が高まる作品である。

2.映画の感想

冒頭のタイトルバックがカッコ良い

まず冒頭のタイトルバックが異常にカッコ良い。現代に生きる私の視点から見ても、最高にスタイリッシュで、そのままCMで使っても、おかしくないほど。もちろんそれは三船敏郎の「顔力」があってのシーンだけれども。

ストーリーは、前半は三船敏郎こと新納のうだつの上がらない日常と周辺の状況の説明なのだが、後半につれてシェイクスピアばりの誤殺・謀殺からの父親殺しへと帰結していく。

すべては彼のひとかどの侍にならんとする気持ちからなのだが、(先々代)松本幸四郎演じる井伊直弼の言う通り、この痛恨の一撃は封建主義の終焉、武士の時代の終焉をもたらすものとなるのである。

つまり、彼は、誰よりも侍になろうとして、侍そのものを終わらせてしまった男ということなる。自分の求めたものを、自分の手で終わらせてしまう、この悲劇。。。ギリシャ悲劇のような凄まじい父親殺し譚となっている。

岡本喜八ファンなら。(★★★★☆)


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