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シャンパンをグラス1杯だけ

小さいころ、誕生日プレゼントをもらうのが好きだった。
「私は特別な存在なんだ」と思える瞬間が好きだった。

物心ついたころからひとつ違いの妹の世話係で、親からの怒られ役で、親は妹に甘くて。
私は大事にされている感に飢えていたのだろう。
気づいたのは、仕事の疲れを大量に背負い込んで帰宅した何年か前の秋。
習慣的に点けたテレビから流れてきた、ヴェルタースオリジナルのCMを見た時のことだ。以来いつもヴェルタースオリジナルを持ち歩くことが私の習慣になった。

私は特別な存在だから。

大人になっても誕生日プレゼントをもらう喜びは変わらない。
誰かが私のために時間や思考を費やしプレゼントを選んでくれることへの想像力と、その有難さへの理解力の分、喜びは大きくなっている。

さて、ここからは例によって彼氏への苦言である。
文句の多い女だと非難するのは、ちょっと待ってほしい。
昨年秋の私への誕生日プレゼントの顛末を聞けば、皆さんも彼に苦言を呈したくなるはずだ。

昨年の私の誕生日前夜。それは土曜日で、行きつけの立ち飲み居酒屋は閑散としていた。私たち以外いない店内で、マスターと話しながらゆっくり酒を飲んだ。
彼は基本的に私に誕生日プレゼントを用意しない。砂漠の民が豊かな水を期待しないように、私も彼のプレゼントは期待しない。この夜の時間を彼からのささやかなプレゼントだと思えば、酒もおいしかった。

夜も更け、23時半を過ぎたころ、一人の女性客が入店した。初来店の女性客だ。彼はいつものようになれなれしく話しかける。近所でカレー店を営む、なっちゃんというその女性との会話がはじまった。
あと少しで誕生日を迎える私はそろそろ帰りたかったのだが、強引に切り上げるのも気が引けて会話に加わった。

24時の閉店間際、なっちゃんが言った。「まだ飲めるお店があったら一緒に行きましょうよ」。彼がその申し出を断るはずもなく、私たちとなっちゃんは店を移した。

この辺りまでの顛末で、すでに彼に苦言を呈したい人もいると思う。
この先はもっと酷い。

移動したお店はちょうど1週間前にオープン3周年を迎えており、店内には周年祝にと用意されていた、ボトル2万円のシャンパンが置かれていた。
どういう会話の流れかは忘れたが、なっちゃんは私が誕生日を迎えたことを知り、私のためにシャンパンを入れようと提案した。

その店も閑散としていた。カウンターで飲む私たちの会話はマスターに筒抜けだ。断ることはできない。すでにマスターはこの機を逃してなるかとばかりに、シャンパンボトルを持ち上げている。
せめて割り勘にしようと提案する私と、奢りたいというなっちゃんで押し問答が始まった。老獪なテニスプレイヤー同士のラリーのように、どこまで続くかわからない押し問答に彼はすぐにしびれを切らした。早く飲みたいのだ。
「俺が出すよ、桃子への誕生日プレゼントとして。マスターも一緒に飲もう」。なっちゃんは、彼が私への誕生日プレゼントを用意していないという事実に驚き、それなら彼が出すべきだと納得した。

しかし私は納得できない。2万円のシャンパンとはいえ、私が飲むのは1/4だ。そして、酒を飲むために生まれてきたような彼の飲むペースのために、結局私はグラス一杯分しかありつけなかった。
帰り道。「サプライズできて良かった」と言う彼。私は物申すのも面倒で、彼の言葉を無視して歩いた。

これはサプライズとは言わない。プレゼントとさえ言えない。
私は間違っているだろうか。私は彼に苦言を呈してもいいのではないだろうか。反論は受け付けない。

彼は人からプレゼントされるのが得意だ。
ただ道を歩いているだけで、あいさつ程度しか交わしたことのない近所の人からサクランボをもらってきたりする。頼むから誰もこれ以上彼を甘やかさないでほしい。

そんな私の願いは、今日もまた打ち破られるかもしれない。
今夜、MOMOリーグのファイナルステージ最終戦にけりさんが出場する。優勝を賭けた大一番だ。

MOMOリーグの詳細とか 彼がMOMOリーグにおいてチーム監督をすることになった経緯とか、けりさんが彼のチームのメンバー(彼はクルーと呼ぶ)であることとか、その辺の詳細は二度と話題にしたくないというわけではないけど 書き始めると長くなってしまうので 大変お手数をかけて申し訳ないのだけど 以下のnoteを読んでもらえると助かります。

けりさんは、予選リーグの最終戦で勝利をおさめ、奇跡的にチームをファイナルステージへと導いた。今日もその勝負強さにより、チームを優勝に導くはずだ。そして彼氏は、チームに何も貢献しないまま、優勝監督と言う栄誉をプレゼントされるのだ。

理不尽な話だ。彼だけテイク&テイクだ。私は納得できない。
でも彼のような監督というハンデを背負いながら頑張ったチームクルーみんなのために、そしてけりさん自身のためにも、見事勝利を勝ち取ってほしいと心から願っている。
そうだ。彼のことは私が自分で何とかするしかないのだ。

そんなわけで、桃子からのお願いです。
みんなでけりさんの勝利を応援してもらいたい。

応援方法は以下の通りだ。
1,今日(2/25)20時から予定をあける
2,youtubeでMOMOリーグの公式チャンネルにアクセス
3,ライブ配信中の対戦を視聴
4,コメント欄を「きゃー、けり王子、すてきよー(桃子も応援中みたいです)」で埋め尽くす
以上だ。

面倒なお願いをしていること、大変心苦しいですが、ついでなのでチャンネル登録や高評価もしてもらえると、けりさんも喜ぶと思います。 配信はこちらからチェケラいただくのがスムーズです。

今日は来るかなと、彼への苦言や私への激励を記したコメントを、忠犬のように待ち続けている桃子より

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