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信じるから壺を買うのではない、信じたいから壺を買うのだ

彼氏はお酒が大好きなのだけど、いい歳をして落ち着いて飲むということができない。 たとえばつい先日のこと、お店の前の路地を偶然に通りかかった友人を呼びとめようと、ビールジョッキを倒さんばかりの勢いで立ち上がり店を飛び出し、タクシーにはねられそうになっていた。「あんなに大きなクラクション鳴らさなくてもねえ」じゃないのよ、まったく。タクシーもいい迷惑だ。 あるいは、その次の日。何人かの友人たちと3軒目のお店へと移動しようとした時のことだ。珍しくおとなしく歩いているなと思っていた

    • 帰ってきた晒し系noter桃子

      憂鬱なのである。 東京では桜の開花予想日から3日間雨が降り続いた。 開花を遅らせたその雨は今朝あがった。 暖かな春の陽ざし。街を彩る春色ファッション。高校球児たちが甲子園の舞台で躍動し、週末にはプロ野球も開幕を迎える。まもなく桜は花を開き、その花びらは穏やかな風に吹かれ、街を歩く子どもたちの柔らかな髪に舞い降りるだろう。 これから楽しいことがたくさん待ち受けている予感にあふれる季節、春。 なのに、私は憂鬱なのである。 桜を口実に乱痴気騒ぎを始める人々を見るのが嫌だという

      • シャンパンをグラス1杯だけ

        小さいころ、誕生日プレゼントをもらうのが好きだった。 「私は特別な存在なんだ」と思える瞬間が好きだった。 物心ついたころからひとつ違いの妹の世話係で、親からの怒られ役で、親は妹に甘くて。 私は大事にされている感に飢えていたのだろう。 気づいたのは、仕事の疲れを大量に背負い込んで帰宅した何年か前の秋。 習慣的に点けたテレビから流れてきた、ヴェルタースオリジナルのCMを見た時のことだ。以来いつもヴェルタースオリジナルを持ち歩くことが私の習慣になった。 私は特別な存在だから。

        • ハムスター監督と浪花の賢者

          幼い頃、大好きだったテレビ番組がある。 TBSでやっていた「ワクワク動物ランド」である。 エリマキトカゲ、ウーパールーパーなど、未知の動物の生態に、文字通りワクワク、ドキドキしながら水曜日はテレビにかじりついた。 ワクワク動物ランドが教えてくれた知識のなかに、「動物の視野の違い」がある。例えば、草食動物は視野角が330度もある。これは後ろから襲ってくる肉食動物にいち早く気づいて逃げる必要があるから。逆に肉食動物は、獲物を立体的に捉えるために、視野は狭いけど前方がしっかり見え

        信じるから壺を買うのではない、信じたいから壺を買うのだ

          庭先の彼の祖父の花と、雨降る街の私

          彼は空を飛べない。 小学生のころ、何度か屋根の上から飛ぼうと試みたらしいが、飛べなかった。何度目かのチャレンジの時だ。いつものように瓦屋根の上をへっぴり腰で歩き、軒先巴に立った。軒先巴とは、屋根が斜めに下った先端のところ。屋根と空の境界線にあたる場所だ。 小学生にもなれば多少の知性はある。彼も飛べる可能性が極めて低いことは理解していた。でも、万が一にも飛ぶことができれば明日から学校でヒーローになれる。もしかしたら授業のひとつもつぶれるかもしれない。飛ぶ彼を見るために。そん

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          桃子さまと呼ばれたい私

          皆さんは、自分の録音した声を聞くのは好きだろうか? 私は嫌いだ。「え?私ってこんな声?!」と恥ずかしくなってしまう。ほとんどの人がそうじゃないだろうか。 ところが、彼氏は自分の声を聞くのが大好きだ。自分で桃鉄を配信して勝利した動画や、MOMOリーグで実況を担当した動画を繰り返し繰り返し観る。「いい声だなあ(俺)」「いいこと言うなあ(俺)」とご満悦だ。自分がボロ負けした試合は一切観ない。そういうところが桃鉄が弱い原因だと思う。 MOMOリーグの詳細とか 彼がMOMOリーグにお

          桃子さまと呼ばれたい私

          雲は晴れた空を見上げている

          今日の東京は雨降りだ。 朝から2月の冷たい雨が降り続いている。 私の心も晴れやかではない。昨日のnoteで率直に彼の悪行を晒し過ぎた気がする。悪いのは彼だ。もちろんそれは分かっている。 しかし彼は悪行をみんなに知られたとてびくともしない。「ほんと、みんなのおかげ、桃子のおかげでいろいろやれているんだよな」と殊勝な言葉をつぶやいたかと思えば自分の言葉に酔い、人の言葉に耳を傾けて自分を正すことのできる僕はなんて素直でいい子なんだという顔をしながらうんうんと頷き、上機嫌で鼻歌など

          雲は晴れた空を見上げている

          彼の悪行を許すな、正義のための暴露

          天狗。調子乗り。思い上がり。桃鉄イキりおじさん。 のっけから汚い言葉を並べて申し訳ないけれど、いまの彼の状態を表すには、こうするしかなかった。 なぜ、彼がこんなに得意満面の天狗野郎になっているのか? それは昨夜、MOMOリーグという桃鉄ワールドの大会、しかも決勝リーグという大舞台で、彼が初出場、そして初勝利を収めたからだ。 予選リーグでは、彼は監督という地位をフルに活用して、「やっぱり選手(彼はクルーと呼ぶ)に、チャンスを与えたいよね」などとのたまい、出場を回避した。

          彼の悪行を許すな、正義のための暴露

          花火とたんこぶ

          視野が狭い彼氏と暮らすと苦労が多い。 ストレス性の苦労だ。 昨夜のことだ。玄関に飾ってある観葉植物を見て彼が言った。「緑を置くようにしたんだね」。上司が目にかけている女性部下に無言で「いいじゃん」と伝えようとしてつくりだす褒め顔みたいなうざったい顔で。 観葉植物は5年以上前からそこにある。 視野が狭いと言っても、現実的に見えていないわけではない。「集中力が高すぎるのも困ったものだよな、どうしても他のことに目が届かなくなっちゃうんだよな」と彼は言うが、彼の場合は集中という言

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          桃子は誰かに謝るために生まれてきたの?

          あれは冬の夜だった。 コロナ禍の自粛期間で在宅ワーカーが多くなり、土曜の夜のオフィス街に人の気配は少なく、無機質なビルのコンクリートとアスファルトが寂しく街灯のオレンジに染まっていた。 彼と私は酒を求め、20時まで営業していたスポーツバーに入った。店内は街と同じように閑散としていた。バーカウンターに仲の悪そうな二人の女性店員が並び、5人組の男女がテーブル席でジェンガを積み上げている他に誰もいなかった。5人組は外国人で、そのぎこちない雰囲気から今日が初対面なのだろうと私は想像

          桃子は誰かに謝るために生まれてきたの?

          夏の終わり、桃子の涙

          彼氏は家電量販店が嫌いだ。 「お得だよー、ご利用ご利用!買わないと損ですよー」というメッセージを四方八方から発信する棚に並ぶ商品やその陳列棚に取り付けられたPOPの圧が苦手なのだ。 彼が好むのは広々とした空間に品よく並べられた「私にはあなたよりいい買い人がいるかもしれませんし、無理して買い人になって下さらなくて結構ですことよ、別に」という高嶺の花ばかりが並ぶお店だ。彼は高嶺の花が好きだし、なんなら高飛車な女性も好きだ。一時期は沢尻エリカが大好きだった。「ちゃんと捨ててよ」と

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          桃子はデパートが大嫌いで大好きです

          彼は甘いものが好きだ。 でもコンビニスイーツには見向きもしない。 ハーゲンダッツを見て、人生には妥協も必要だからねという顔をする。 彼が甘いものを食べたいねという時、 それはデパートに出かけようというお誘いだ。 彼は味だけでなく見た目にもうるさい。おしゃれでかわいらしい見た目でないと納得しない。おじさんのくせにSNS映えも意識する。 彼はデパートで甘いものを買うとき、時間をかけて比較検討するわけでも値段を確認するわけでもなく、直感的に欲しいと思ったものを次々に購入する。自

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          その皿を洗う手間を、人は無駄と呼ぶ

          今日も食卓がざらざらしている。 最近彼はチーズトーストをつくって食べる。ビニールを丁寧に剥がして雪印のこんがり焼けるスライスチーズを取り出し、母親が幼い我が子に布団をかけるように、静かに愛おしそうにトーストにのせる。オーブンレンジのトースト機能を使い、チーズこんがりパンかりかりになるように焼き上げる。その間、オーブンレンジの前を離れることはなく、中でまわるパンとチーズの様子を窓越しにじっと見つめている。彼はこんがり焦げたチーズが大好きなのだ。白く平板だったチーズがところどこ

          その皿を洗う手間を、人は無駄と呼ぶ

          暴走する感情の波をおさえるための独り言。

          学級委員選挙は今でもあるのだろうか。 彼氏が小学生だった20世紀や、私の小学生時代にはあった。学期ごとにクラスの代表的役割を担う生徒を、男女一人ずつ選ぶ選挙だ。ちびまる子ちゃんでは丸尾君が学級委員だが、私の記憶では勉強も運動もできる人気者タイプの生徒が選ばれていた。 彼は小学4年生の時に一度だけ学級委員に選ばれたことがあるらしい。そしてそれを近所の人々にも触れまわった。「おばちゃん、おれ学級委員だから」「明日から学級委員って呼んでくれていいよ」と。 この話には続きがある

          暴走する感情の波をおさえるための独り言。

          がんばれという言葉は美しい。誰がなんと言おうとも

          私は耳を疑った。 今日はMOMOリーグの対戦にしまちゃんが出場する日だ。 冒頭から申し訳ないけど MOMOリーグとか 私の彼氏がそのMOMOリーグにおいてチーム監督をしているとか。 しまちゃんがそのチームの一員(彼はクルーと呼ぶ)であるとか。 そのあたりの詳細は、二度と話題にしたくないので、 大変お手数をかけて申し訳ないのだけど 以下のnoteを読んでもらえると助かります。 しまちゃんは彼が桃鉄界隈で一番お世話になっている女性だ。桃鉄をする彼が生命体だとするとしまちゃん

          がんばれという言葉は美しい。誰がなんと言おうとも

          サバンナの夜、桃子ひとりぼっち

          うきぐもさんは悪い男が好きだ。 彼氏が語る断片的なうきぐもさん情報を私なりに整理しての推察だ。間違えていたら申し訳ない。 彼はこれまでオフ会と称して何回かうきぐもさんと会ってお酒を飲んでいる。うきぐもさんの名誉のために言うが、大人数での飲み会だ。 とはいえ、声がかわいくて悪い男が好きなうきぐもさんに。 ひとまずうきぐもさんの声を晒しておく 彼は本人は隠しているつもりのようだが女性が好きだ。そして悪い一面もある。しかし、私は一抹の不安も抱いていない。たとえ彼が悪い男で

          サバンナの夜、桃子ひとりぼっち