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カンボジアに行っただけなのに。

身元もわからない人たちとバスケをするために電車に乗った。数年前カンボジアに行った際に知り合った人から誘われたのだ。

なんで誘われたん?
コミュニケーションもバスケもどっちも得意じゃない。

知らん人たちと知らん場所でバスケするって何や。
何人おんの?学生?みんなバスケうまいん?趣旨はなに?あまりにもわからんことが多すぎる。もっと聞いとけばよかった。
こんな場に行く人はみんなフランクやろうから
いちいちこんなこと気にしてる人いないやろうなと思い、少しでもその人たちの雰囲気を装うために自分も何にも聞かずにここまで来てもうた。
わかってることは、みんなカンボジアに行ったことがあるってことだけ。私もそれだけの理由で声をかけられた。なんで参加するねん私。大体の誘い断る付き合い悪い人間のくせに、もっと社交的にならなってなんでこんな意味不明なタイミングで思い立つねん。他の機会にしろ。こういう場いっちゃん苦手やろ。

夜に知らん人たちとバスケするて。
そんなストリートなことやったことないって。
ほんでその後飲みにいける?て。
いけるよ。往復2時間以上かけて知らん人とバスケだけして帰るのおかしいやろ。バスケ部でもやらんやろ。さすがに行くわ。てかなんの話すんねん。カンボジアでの思い出か?カンボジアってそんな万能やったん?なんかおもろなってきた。

どういう服装で行ったらいいかすらわからなくて、相方が中学の時バスケ部やったから聞いてみた。知らんうちにバスケ界のマナー違反してたら嫌やからな。

「そんなもんない」

と言われた。よかった。スウェットでいけば間違いないよな。

楽しくやりましょ〜の雰囲気でも
さすがに覚えとかなあかんであろうトラベリングとダブルドリブルだけ頭に入れて向かった。テスト前の限界学生みたい。

私は予定があったので途中参加やった。
途中参加て。圧倒的に不利やん。もう何かと仕上がってるんちゃん。アウェーのミルフィーユ状態。アウェーオンアウェー。
現地についてみると、建物の外観からして今まで入ったことのないほどのイケイケ度でおののいた。私みたいな人間は入り口にある目に見えないバリケードではじかれるんちゃうかって身体震わせながら乗り込んだ。むしろそうであってほしいという願望は叶うはずもなく余裕で突破できてしまった。

いざ入ってみると、
大きいフロアでガチバスケをする集団が4グループ。どのグループや?顔を知らんからどの集団かわからん。まあどれであったとしてもついていけるわけがないと絶望した。それでも私は"変わるんだ"という強い意志で平気なふりをしてズカズカ入っていった。

声をかけてくれた集団を見ると、
スウェットを履いているやつは一人もいない。
みーーんなバスパン。みーーんなスポーツウェアにバスパンや。パーカーとスウェットで来てるやつなんか一人もおらん。しまった。。バスパンは持ってないけどもうちょっとアクティブな格好はできた。くっそ。聞き込みしたのに。

着いた途端、ストレッチしてと言われた。ガチやん。バスケするために集まってるやん。バスケだけをするつもりやん。交流目的じゃないんや。なんで私を呼んでん。私バスケできひんねん。身内に不幸起きて電話かかってこんかな。帰りたくて仕方がなかった。

いざ試合が始まると、顔知らん人の集まりやったから誰が敵で誰が味方かちっともわからんという大問題が発生して、コート上に人間不信の権化が君臨したみたいな描写が生まれた。盲点やった。私はなによりもあの時のグッパに全集中するべきやったんや。グッパの時の行動がその後の全てを決めるって誰か教えといてくれよ。あの瞬間に味方の顔だけでも必死に覚えるべきやった。それだけでよかったのに。同じ人間やのに敵か味方かに二分して攻撃し合うこんな世の中にどうして生まれてきてしまったんや。
すみません、、どなたが味方でしょうか。。
バスケコートがライアーゲームのフィールドと化した。誰も私なんかマークしてくれなかったからたまにしょうがなくパスが回ってきたけど、その度に敵にパスを回してしまって、それはもうひどい空気になってた。家帰ったらう〜んと泣こう〜っと!!!!

ボールがコートからはみでたらその都度響き渡るマイボー!の声。私も浮かないようにマイボ〜!と主張してみた。うまくできたみたいや。安堵で口がほころぶ。私のにやけてる顔見た人は「こいつ、、笑ってやがる、、!!?」って私がわざとできないふりして一気に形勢逆転する秘策をもってるんちゃうかってびびってたやろうな。うん。そんなんないけど。翻弄だけはできた。
隠し技なんてないままに、とにかく味方らしき人がボールを持ったら攻撃の方向に走り、取られたら反対方向に走る。
それだけを必死におこなった。

こうして1人だけバスケする集団に紛れてシャトルランを行い、なんとかやり過ごした。
わかったことは、私以外はみんな知り合いやったということ。なんやそれ。人数調整のために呼ぶ人間間違えすぎやろ。知ってる人かバスケできる人どっちかを呼べ。どちらにもあてはまらん人間呼んでシャトルランさすな。

そのまま飲みに行く流れになって、本当は帰りたくて帰りたくて仕方がなかったけどここで帰ったら正真正銘意味がわからない出来事になってしまう、ふんばれと自分に言い聞かせてなんとか堪えた。

みんなはこのままエアビで泊まるらしい。
エアビ寄って荷物だけ置いていい?って言われたから全然いいよ〜と言って、付いていった。思ったより遠かった。そのあと、これまた思ったより遠い居酒屋に向かった。だから、居酒屋についた時点でかなりの時間だった。

「ごめん終電やから帰るわ〜」

え?


そう。私は帰った。
知らない人たちがバスケしてるコートの中で1人シャトルランをして、泊まりもしないエアビまで付き添って、ようやくたどりついた居酒屋の椅子に座ることなく居酒屋から出る
正真正銘意味がわからない出来事を作り上げた。

一滴も飲まず、ただ走りまわって終電。なんやこれ。不思議〜〜な子。
帰りの電車で私は、変わろうとするのなんてやめようと反省した。バスケも人の集まりも嫌いや。
ふと顔を上げると
「あれ??ここどこ??」
乗り換えを忘れていた。
よくわからない場所で降りるはめになったのだ。とことん。とこっっっとん。とこっっっっっっっっとん。
自分の散々な有り様に呆れて、なんとか見つけたタクシーで帰宅。
交通費などもろもろで6千円弱。
なんのために生きてるかなんかわかってないけど、こんなことするために生きてるわけじゃないことはわかる。
「明日は朝からバイトや。稼がないと。」

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