アルコール依存性の女 西成飲み

大阪には飲屋街がたくさんある。天満や福島は夕方から仕事帰りの人でごった返しているし、京橋は夜勤終わりや、特に働いていなさそうな人たちが朝から立ち飲み屋で一杯やっている。
酒好きはそれぞれ好きな飲屋街があって、そこで飲むことを「○○飲み」などと呼ぶ。
私のお気に入りは西成だった。

西成は昔ほど減ったがホームレスや日雇い労働者が集まる街で、街全体が酒臭い。
ここだと酷い飲み方をしても目立たないし、酒に溺れた自分を受け入れてくれる。そんな理由で西成飲みをするようになった。
また近年、安宿を求めて外国人観光客をよく見かけるようになり、酔うと外国人の友達を作りたがる私には最適な場所だった。

JR新今宮駅周辺には個人経営の安居酒屋や立ち飲み屋がたくさんあり、その辺りでよく飲んだ。コンビニで酒を買って路上で飲むこともあった。立ち飲み屋で隣り合った外国人と仲良くなり一緒に二軒目に行くこともあった。
駅が近いから遅くまで飲んでも終電で必ず帰宅していたが、次第に終電を見送って朝まで西成で飲むようになった。当然夫は怒ったし、もはや呆れていた。

ある日、いつものように西成で泥酔するまで飲みコンビニのトイレを借りた。用を達する間、バッグを扉に付いているフックに掛けていたのだが、そのバッグを忘れてコンビニから出てしまった。数分後バッグがないことに気付き、コンビニのトイレに戻るもバッグはどこにもなく店員さんに尋ねても知らない、とのことだった。盗られたのだ。

バッグには財布もスマホも入っていた。夫に連絡は取れないし、お店に入ることもできない。仕方なくタクシーに乗り、運転手に状況を説明して自宅まで走ってもらった。
事情を知った夫は大激怒したが、冷静に警察署や役所へ行き紛失した物の手続きを取ってくれた。一方の私は泣き腫らして仕事を休み、ベッドに包まっているだけだった。

これ以上夫に迷惑をかけるわけにはいかない。

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