制作年月日不詳―サルバドール・ダリ=ナルシスの沈没―
《解説》
「生きるべきか、死ぬべきか」(シェークスピア)。見るべきか、見ないべきか(ダリ)。これが問題だ。あるいはもっと正確には、解くべき問題だ。[1]
この作品は、サルバドール・ダリが我々に投げかけた壮大な謎である。
一説ではダリの「遺作」であるとされている。一説では、という表現をしたのは「無題 燕の尾とチェロ」[2](1983)という作品が、長らくダリの絶筆とされてきたからである。「無題」はダリの永遠のミューズ、ガラ・エリュアールが亡くなった1年後に最後の作品と